研究課題/領域番号 |
23K22010
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補助金の研究課題番号 |
22H00738 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03060:文化財科学関連
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研究機関 | 国立歴史民俗博物館 |
研究代表者 |
佐野 雅規 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 特任准教授 (60584901)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2022年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
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キーワード | 年輪セルロース / 酸素同位体比 / 水素同位体比 / 年層内分析 / 季節変動 / 樹木年輪 / 年代決定 / 気候復元 |
研究開始時の研究の概要 |
年輪年代法は、木材の暦年代を1年のズレもなく正確に決定できるため、他の年代測定法よりも精度の点で優れている。しかし、木材の年輪数が少ない場合、年代が定まらないという問題がある。遺跡から出土する多数の木材は年輪数が50年に満たないため、これらの年輪年代を決定できれば飛躍的に分析対象が広がる。本研究では、1)年輪数の少ない考古材の年代決定のための年層内同位体比データの収集、および、2)現生木を用いた年層内変動メカニズムの基礎的研究を行い、3)以上の成果を統合して年層内分析による年代決定法を確立する。以上のデータを用いて、気温と降水量の同時復元にも挑戦する。
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研究実績の概要 |
年層内データを用いた年代決定力の向上化を検討するため、年代既知の現生木を分析対象とし、1枚の年層を多分割して酸素同位体比を測定した。ケヤキは、成長初期の道管から成る孔圏部で酸素同位体比が低く、成長中盤の部位で極大値を取ったのち、成長の終盤に向かって減少する傾向を示した。一方、スギは、成長の初期で極大値を示し、それ以降は減少する傾向を示した。ケヤキのような環孔材は、前年の光合成産物を利用して道管が形成されるため、スギとは異なった年層内の変動特性を示した。次に、年層内の各部位と月別の気象要素を比較したところ、相対湿度や降水量と有意な相関を示す時期が、成長の初期では5月、それ以降では、6、7、8月と順に後ろの月にずれていくことを確認した。この応答解析の結果から、年層内の各部位の形成時期が特定できるとともに、月単位での気候復元も可能であることが分かった。次に、年層内を2分割して両者の差分を算出する方法を試してみたところ、この差分法は、従来の1年輪単位で得た酸素同位体比と独立しており、年代決定の新しい指標として有望であることが示唆された。年代決定力を検証したところ、従来法と差分法を併用することで、これまで以上に候補年代の絞り込みが可能になることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年代決定の基盤となる、過去4354年間にわたる標準年輪曲線を論文として公表できたほか、各地で新たに収集した考古材の年代を決定できた。また、年層内同位体比差分法が年代決定に有効であることを示せた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、年層内データの収集と分析を進め、より少ない年輪数での年代決定にむけた分析手法の開発に取り組む。特に、年層内同位体比差分法の改良や、樹種別に年層内のどの部位を抽出すれば樹種間でのパターンマッチングに効果的に働くか検討する。
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