研究課題/領域番号 |
23K22037
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補助金の研究課題番号 |
22H00765 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04020:人文地理学関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
荒木 一視 立命館大学, 食マネジメント学部, 教授 (80254663)
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研究分担者 |
菅野 拓 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (10736193)
田中 耕市 青山学院大学, 経済学部, 教授 (20372716)
保井 智香子 立命館大学, 食マネジメント学部, 教授 (40632998)
熊谷 美香 大阪公立大学, 健康科学イノベーションセンター, 特任講師 (60527779)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 広域災害 / 救援活動 / 避難所 / 地理学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は災害発生時,特に南海トラフ地震のような大規模で広域の災害が発生した場合の救援活動・被災者支援に取り組もうとするものである 。具体的には,(A)効果的な避難所や救援活動拠点の立地と(B)それらをつなぐ救援システムの運営について,地理学の立場から検討し,あるべ き避難所と救援活動拠点の配置を描き出すとともに,それを運営する救援システムの構築を目指す。それを通じて日本の避難所の生活環境の向上や効果的な被災者支援に貢献することができる。
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研究実績の概要 |
当該年度は初年度であり,次年度以降の本格的な調査に先立つ準備期間とした。年度開始後ほどない6月に京都でメンバーを集めた会合を開き,研究プロジェクトの意図や大枠の研究計画を共有し,おのおのの研究に着手した。研究代表者の荒木が全体の取りまとめを担うものの,研究は大きく(A)GISを用いて効果的な避難所や救援活動拠点の立地やその連結を検討する熊谷や田中らと,(B)それらをつなぐ救援システムの運営に関して被災者支援や避難所の運営の観点から取り組む菅野と栄養学の観点から取り組む保井らの2側面からアプローチした。 (A)に関しては被災しなかった地域と被災地をつなぐノードとリンク(救援活動拠点や避難所被災世帯とそれを連絡する道路など)をGISを用いて,地図上に示すことに取り組んだ。具体的には和歌山県広域受援計画をはじめとする行政資料に記された救援物資等の供給に係る計画,被災想定やハザードマップ等の公開情報,平時の人口分布および人口特性,地形(標高,傾斜度)などの自然条件,交通や施設立地などの人文条件に関する情報をGIS データに統合するとともに,避難所ごとの収容人数と周辺人口(潜在的な避難者数)の受給バランスなどを定量的に解明することにつとめた。特に,熊谷と荒木は和歌山県を中心としたデータの収集と分析に取り掛かり,田中は洪水を例とした避難アクセシビリティに着目した。また,(B)に関しては,与えられた地理的条件の中でどのような支援が可能かなどの検討を行なった。具体的には菅野が「災害ケースマネジメント」のブラッシュアップに努めるとともに保井は災害を想定して欠食時の栄養摂取や精神的な健康についての実態把握に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた初年度の目標、すなわち次年度の具体的な事例研究の本格化に先立つデータの収集やフレームワークの検討には一定の目処が立ったため,おおむね順調に進展していると判断した。 個別の取り組みと成果は以下の通りである。まず,GIS分析に必要なデータの収集は概ねの目処が立ち,これに基づいて熊谷は和歌山県を対象として,行政資料に記された救援活動拠点および避難所の配置と,人口分布に関する情報を統合し,災害発生時の特定条件下でのシミュレーション結果と平時の状況を比較検討した。その成果は2022年3月に日本地理学会で報告し,和歌山県を対象にした一つの研究の基本構造を示した。菅野は自身のモデル化した在宅被災者を中心とした被災者の生活再建上の問題解決につながる支援モデル=「災害ケースマネジメント」について、より洗練させたうえで、内閣府から「手引き」が公開されるなど社会実装につなげるとともに,それらを複数の論文として公刊した。田中は洪水を事例として、浸水状況によって最適な避難所が変化することを考慮して、避難所アクセシビリティの変化を明らかにし、日本地理学会をはじめとする数次の学会報告を行なった。保井は被災時には欠食になる可能性も想定しなければならないため、大学生の食事の実態意識について検討を行った。また、朝食欠食時の精神的健康についても検討を行い,こちらも日本健康体力栄養学会を始め数次の学会報告を行なっている。最後に、荒木は研究の大きな枠組みと課題を年度はじめの経済地理学会で学会報告するとともに,和歌山県日高郡内の美浜町とみなべ町で予察的な検討を行い,その成果についておのおの学会報告を行なった。これらを踏まえて,当初計画通り次年度以降には現地調査の実施にのぞみたい。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度以降は当該年度の成果を踏まえて,具体的な事例地を選定した現地調査に本格的に取り組む方針である。 引き続き上記の(A)の避難所や救援拠点の立地に関するGISを用いた検討と(B)それらをつなぐ救援システムの運営の検討の二つの側面から,住民の避難への意識および予定行動の変化についても明らかにするとともに,人口の分布や特性に対して避難所や救援活動拠点がどのように配置されているのかを描き出し,立地-配分モデルを援用して,避難所,救援活動拠点の適地についてシミュレートする。また,平時の自然・人文条件を前提とした場合と,有事で幾つかの制約条件を加味した場合の両方で複数の条件設定のもと適地選定を行う。これらのシミュレーション結果を実際の配置と照らし合わせて,行政の救援活動計画の実行性について検討する。そのうえで,より効果的な救援活動につなげることを目指して,地域特性を反映させた災害対応の処方箋を提示したい。 (A)の立場からは,熊谷が立地-配分モデルを援用して,避難所,救援活動拠点の適地についてシミュレートし,民間施設の立地や自然条件も含めた地域特性を踏まえ,より効果的な救援システムの提示に取り組む予定である。また,田中は避難所の避難者収容可能人数も考慮した避難所の需給バランスの地域的差異を検証する予定である。次に(B)の立場からは,菅野が在宅被災者を中心とした被災者の生活再建上の問題解決につながる支援モデルの精緻化に努めるとともに,保井は引き続き栄養学の観点から被災時の欠食状況を想定して,朝食摂取頻度や摂取内容と精神的健康に関する検討を進めていく予定である。最後に荒木は,前年度までのデータの分析を踏まえて,南海トラフ地震において大きな被害の想定される和歌山県南部での効果的な避難所や救援拠点に関する事例研究を実施する予定である。
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