研究課題/領域番号 |
23K22040
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補助金の研究課題番号 |
22H00768 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
土佐 桂子 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (90283853)
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研究分担者 |
藏本 龍介 東京大学, 東洋文化研究所, 准教授 (60735091)
飯國 有佳子 大東文化大学, 国際関係学部, 准教授 (90462209)
高谷 紀夫 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 名誉教授 (70154789)
生駒 美樹 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 講師 (70838797)
斎藤 紋子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 研究員 (20512411)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2025年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | 贈与 / 民主主義 / ネットワーク / 贈与ネットワーク / 草の根 / アセンブリッジ |
研究開始時の研究の概要 |
国軍によるクーデター以降、政治経済的には混迷を続けているが、他方で活性化しているのが、SNSを媒介とした国内外をつなぐ「贈与のネットワーク」である。本研究ではこれを「実践としての民主主義」の一例、つまりミャンマーの民主化を促す可能性の一つとして位置づけ、人類学的調査を通じてその実態を明らかにすることを目指す。それにより混迷極まるミャンマー社会の行方を考察すると同時に、ネグリやグレーバーによる民主主義論とアクターネットワーク論を架橋することで、危機的状況下での民主主義に関する学際的な議論を喚起する。また贈与の倫理、SNSと公共性の関係等の人類学的諸議論に貢献することを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は2021年の軍事クーデター以降続く危機的状況において、既存の社会的境界を再編しながら展開している「贈与のネットワーク」を、「実践としての民主主義」の一例として位置づけ、人類学的調査を通じてその可能性を追求することを目的としてきた。二年目(2023年度)の目標としては、クーデター以降の状況をSNSを中心に探りつつ、贈与・支援がどのように広がっているのかに関わる調査を続け、中間的な成果に関しては国際学会の発表を念頭に置いてきた。 1. SNS調査:クーデター以降のFacebook(FB)を中心に、現地情報のほか、情報のやりとりについて、分析を続けた。とくに①民主化に関わる諸ニュースを巡る議論、②オンライン上の諸グループによる活動、③支援の必要性や方法についての情報交換を中心にコメント群を含めて収集した。ただし現地ではFBでのニュース報道や情報交換は監視され弾圧も続いており、FB上では海外に拠点を置いたミャンマーメディアがニュースを発信しているが、市民の情報交換の手段としては他のSNSを利用する傾向が増えている。 2.現地調査:今年度は地方で支援を行う在ミャンマー日本人の活動のほか、日本における支援活動などの把握を行った。加えて支援に関しては海外との連携が重要であるという認識から、タイでの調査(メーソート、チェンマイなど)を本格的に行い、移民、難民、亡命ミャンマー人をめぐる贈与のネットワークに関する調査を開始した。 また、研究会としては、4回(対面2回、オンライン2回)を開催した。メンバー内の研究会では関連する理論にかかわる議論や調査成果の共有を行い、外部者がかかわる研究会としては、ミャンマー国内の少数民族地域で長く生活支援に従事されてきたNGO関係者の報告を得た。また、二つの国際学会で、4名が報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時は一定程度のミャンマーでの現地調査を予定していたが、国内の内戦状態が拡大し、都市部などでの調査は不可能ではないがインタビューが難しいことが明らかになりつつある。他方で、そうした国内状況を反映し、海外とをつなぐ贈与、支援ネットワークの重要性は増していることを確認し、初年度はタイ(メーソート)、シンガポールなどでの調査を開始し、本年度は、とくにタイにおけるミャンマーからの避難民、亡命者、移民労働者の多い地域を中心に調査を行い、成果を得ている。また、4名が国際学会での報告を行い、質疑応答を経て多くの知見を得た。したがって計画はおおむね順調に進展しているととらえている。
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今後の研究の推進方策 |
軍によるクーデター後3年が経過し、抵抗側の国民統一政府(NUG)のもとで、国民防衛隊(PDF)や少数民族武装勢力などによる抵抗運動は当初考えられた以上に根強く続き、国内の一部地域では内戦状態にある。また、軍側に対する欧米の経済制裁や政府の失策も重なり、全土で国民は疲弊し、困窮状態が指摘されている。こうした状況下で、ますます海外ミャンマー人コミュニティを中心とする支援活動が盛んになっており、贈与ネットワークを追う本研究の視点は重要性を増していると考えられる。 ただミャンマー国内の状況を鑑みると国内での本テーマの調査は極めて難しく、本科研プロジェクト継続中はその状況が続くと思われる。部分的に、ミャンマー国内での調査を試みる予定もあるが、全体的には上記の通り、贈与・支援の拠点ともなっているタイでの調査を本格化せざるをえない。 2024年度はSNSを介した情報収集に加えて、国際支援状況やミャンマーの現状に関わる報告書のほか、民主主義や贈与に関わる人類学上の理論的動向を含め、研究動向の総合的な把握に努めつつ、現地調査を継続する。また、ちょうど4年計画の2年が経過したことから、年度当初に各分担者による従来の調査進捗状況と成果を振り返り、動向を勘案しつつ、今後の調査の深化を図る予定である
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