研究課題/領域番号 |
23K22041
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補助金の研究課題番号 |
22H00769 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
椎野 若菜 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (20431968)
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研究分担者 |
大門 碧 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特任助教 (30713755)
花渕 馨也 北海道医療大学, 看護福祉学部, 教授 (50323910)
Karusigarira Ian 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 研究員 (50910452)
白石 壮一郎 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (80512243)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2025年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
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キーワード | 結婚 / シングル女性 / セクシュアリティ / 若者 / ライフコース / シングル / 性教育 / 性観念 / 高学歴化 / 女性 / 宗教 / 移動 / セクシュアリティ観 / 一夫多妻 |
研究開始時の研究の概要 |
近年の東部アフリカでは、高学歴化とともに女性のセクシュアリティの変化とシングルマザー化の傾向が顕著である。セクシュアリティの変化は農村出身シングル女性のさらなる都市流出をまねき、農村部の伝統的父系制社会の構造の根幹をゆるがしている。また、この状況は結果的にシングル女性の子の嫡出性を不安定にし、再生産の脆弱性を引き起こす深刻な問題となる。シングル女性を中心にした母系的女性中心家族が増加していることが、父系アフリカ社会の変化の一局面として注目される。本研究は、これらのセクシュアリティと結婚についての重要な変化の複合を紐解いていき、現代アフリカにおける女性たちの直面する状況との格闘を描き出す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、アフリカ父系社会存続のために機能してきたセクシュアリティ観念と結婚観の根底的な変化を、シングル女性たちの生活戦略・再生産に関する戦略を中心に据えて記述することである。 本目的のために、各分担者は長期調査経験のある東部アフリカにおけるフィールド、すなわちウガンダ・ケニア・コモロ諸島における家族、友人らをベースに、とりわけ女性に注目し彼女らのライフコース選択やセクシュアリティ・結婚観と、彼女たちの生活実践に関する聞き取り調査を行った。 たとえばケニア・ウガンダを調査したメンバーらの調査からは、都市部における'年頃'の女性のシングルマザー化が珍しくなくなっている現在、都会に暮らす若者たちが、ここ数年でキリスト教の新たな宗派の活動に加わる者も増えており、その保守的な教えによって結婚観、セクシュアリティ観にも影響がみられることが明らかになっている。現代アフリカ社会の若者のライフコース選択をみる際にも、キリスト教の新しい影響については考慮せねばならないことを示唆している。 また本課題について国外の研究者と議論するため、①5月末にドイツで開催された欧州アフリカ学会(ECAS)にて'Single women and the future of African patrilineal societies' と題し発表を行い、議論を挑んだ。②代表者の所属先にて11月に国際シンポジウムを開催した際にウガンダの協力者、Constance氏を日本に招へいし、氏はウガンダ・首都カンパラにて調査した若い女性たちの生計戦略についての発表を行った。調査地であるアフリカにおける研究者とのコラボレーションも並行して行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍でフィールド調査が中断したものの、メンバーである各調査者がこの2年で再開し、キャッチアップしつつある。今年度もメンバー全員がそれぞれのフィールドにて調査を行うことができ、性観念の変化、学校や家庭における性教育の実態、ライフコース選択の変化なども少しずつ明らかになっている。年度の前半には代表者がドイツ・ケルン大学で開催された欧州アフリカ学会(ECAS)にて、本課題について'Single women and the future of African patrilineal societies' と題し発表を行い、欧州におけるアフリカニストと議論を行った。「民族」社会単位でアフリカ社会を見ない傾向が色濃くあり、父系イデオロギーがいかに人々の家族観に影響するか、という議論をする人は殆どいなかった。アフリカ社会の現場と学界のトレンドに乖離を感じた。 フィールド調査では、代表の椎野は村落と都市において調査を実施、村落においては性観念や性に関する儀礼の変化について聞き取り調査を行った。メンバーの白石は2023年8月、9月にウガンダ共和国首都Kampalaにて、大学生および大卒者を対象にした大学生活や就職活動、および交際や配偶者選択についてのインタビュー調査を実施。大門は2023年8月および2024年2月に1週間ずつウガンダ共和国の首都カンパラに滞在して調査を実施した。主に2006-2007年ごろから調査対象として、当時パフォーマンス活動を参与観察していた若者(当時10代半ばから20代半ば)に再会し、これまでの半生を聞き取るとともに、現在の生活、家族、仕事関係についてインタビューした。またカルシガリラは海外経験のある人、ない人たちによる結婚式のセレモニーの実施の仕方について調査を行った。花渕は、コモロ諸島から密航してフランス領へ移り出産する女性たちのその後の人生について調査を継続している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は3年目となり、折り返し時点となった。これまでの2年間のフィールド調査の蓄積を成果へ形作るため、具体的な成果の出し方を念頭におきながら、分担者間による情報の共有と議論を重ねながら、フィールド調査を行っていく。多くのメンバーが夏季にフィールド調査を行う予定である。主に女性たちが、生きていくために自らのライフイベントやキャリアアップ/生計維持のためにどのようなライフコース選択を行っているのか、継続的なデプスインタビューを行っていく。 また、ウェブ新聞において、セクシュアリティ、結婚、「シングル」に関する記事がどのように扱われているかも調査する。 今年度の秋より、ウガンダの協力者の指導教員であったPeter Atekyereza教授(家族社会学専門)を半年間日本に招へいすることになっているため、科研研究会等には教授にも参加いただき、議論の深化を進めたい。 研究会開催による情報共有と議論の積み重ねとフィールドワークの両輪ですすめる相乗効果をはかりたい。
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