研究課題/領域番号 |
23K22045
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補助金の研究課題番号 |
22H00773 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 宮城学院女子大学 |
研究代表者 |
市野澤 潤平 宮城学院女子大学, 現代ビジネス学部, 教授 (10582661)
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研究分担者 |
碇 陽子 明治大学, 政治経済学部, 専任講師 (10791866)
土井 清美 二松學舍大學, 文学部, 准教授 (30782544)
東 賢太朗 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (40438320)
田中 孝枝 多摩大学, グローバルスタディーズ学部, 准教授 (50751319)
渡部 瑞希 帝京大学, 外国語学部, 講師 (60782589)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
14,560千円 (直接経費: 11,200千円、間接経費: 3,360千円)
2025年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 観光 / ホスト/ゲスト関係 / ウィズコロナ / 不確実性 / リスク / 人類学 / 新型コロナウイルス感染症 / 防疫意識・行動 / 人流の制限 / タイ / 不確実性/リスク / ホスト/ゲスト / 観光が生み出す不安と分断 / 観光人類学 |
研究開始時の研究の概要 |
2020年から継続するコロナ禍は、観光客を激減させたのみならず、人々に大きな不安をもたらし、観光のホストがゲストを拒絶する、観光旅行をしない者がする者を〈社会の敵〉として非難する、といった社会的分断を生んだ。人々のつながりを引き裂いた不安の源泉となったのは、観光の場で出会う他者が保菌者かも知れない不確実性と、観光によって感染が拡がるリスクである。本研究は、不確実性とリスクを観光を阻害する「問題」として捉えるのではなく、不確実性/リスクと共存共栄する観光の形を模索すると共に、観光が生み出す社会的分断の軽減に向けた実践的示唆を得ることを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の1年目となる2022年度は、各自の関心分野のすり合わせや共同テーマの洗い出しを行い、理論研究の分担範囲を決定した。新型コロナウイルス感染症の影響がまだ残っており、特に海外への研究調査旅行には制限があったため、タイなど渡航へのハードルが低い一部の国を除いては、調査出張は見送って、文献調査や新型コロナウイルス感染症関連の情報収集(特に人の移動やツーリズム、観光関連産業・ビジネスに与えた影響、国や自治体、各企業などアクター毎に異なるコロナ対応、またそれに対する賛否両論など)に注力した。 研究代表者の市野澤などが実施した海外調査においては、各国における新型コロナウイルスへの捉え方や対応状況の違いについて、興味深い知見が得られた。例えばタイでは、特に都市部中間階層の人々が、COVID-19に対して強い忌避感を持ち、マスクの着用の徹底(欧米とは異なり/日本と同様に、屋外においても大多数の市民がマスクを着用、鉄道駅などの公共スペースでは警備員などによりマスク着用の個別要請もある)、三密を避けるなどの高度の防疫行動をとっていることを確認した。一方で、社会活動は制限せず、観光や複数人が集まるイベントなども、参加時の抗体検査などを行いながら、実施されている。日本と比べて、抗体検査キットが市中で容易に入手可能であることから、自己責任・対応の意識が強く、結果として基本的に医療体制が貧弱であるにも関わらず、破綻に至っていない。この点については、日本の医療体制や政府方針が学ぶことは大きいと考える。 この期間中に、各自が従前より継続して行ってきた研究調査について、新型コロナウイルス感染症がもたらした社会経済変化への観察から、あらたに示唆的な知見が得られた。それを論文・著書などに生かして発表することで、フィールド調査の実施に制限がありながらも、一定の成果を出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画においては、1年目となる2022年度は、新型コロナウイルス感染症の影響が払拭できていないことから特に海外への調査出張に制限が掛かることが見込まれたこともあり、主な活動としては、研究の土台となる理論的視座を固めること、文献サーベイを通じて研究視角を明確にし、可能であれば観光と不確実性に関する新たな切り口を開く糸口を見いだすことを、重視した。加えて、年度を通じて3回のオンラインミーティングを実施して、各自の関心分野のすり合わせや共同テーマの洗い出しに関わる議論を行い、理論研究の分担範囲を決定するよう努力をした。特に2023年3月には、明治大学駿河台キャンパスにて、共同科研メンバーの全員が集まって、各自が進めている研究の進捗状況、新たな理論的テーマへの気づきやこれまでに考察を積み重ねてきた理論的テーマに関する知見の共有などを行った。 共同研究代表の市野澤は、タイを始めとする東南アジアでの現地調査を実施でき、とくに各国における日本とは異なる面もある新型コロナウイルス感染症への防疫意識や行動に関わる観察が行えたことは、大きな成果であった。また土井清美は、人類学における民族誌的研究の再検討から、COVID-19後のツーリズムへの新たな示唆を得た。渡部瑞希は、新型コロナウイルスにより人流が制限されたことへの観光業界の対応として取り組まれたオンラインツーリズムに関して調査研究を進めた。オンラインツーリズムについては、田中孝枝も実際に参加するなど人類学的な参与観察を行い、一定の知見を得た。東賢太朗と碇陽子は、それぞれコロナ禍の影響で渡航が困難であった調査地のフィリピンとアメリカにおける、新型コロナウイルスの状況とツーリズムへの影響についての情報収集を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度からは、新型コロナウイルスによる海外などにおけるフィールド調査の実施制限が弱まると期待されるので、研究計画にてメンバー各自に割り振った現地調査を鋭意進めていく予定である。 市野澤:タイと日本の観光における接客サービス業務、危険を伴う観光や冒険ツーリズムなど。主にタイを始めとする東南アジアを対象に現地調査を行うが、東北地方を始めとする国内各地における調査も並行して行う。渡部瑞希:ネパール観光における歓待とホスピタリティ、インフォーマルな市場における取引。加えて、2022年度まで調査を継続してきて一定の成果を得たオンライン・ツーリズムについて、理論的考察をさらに深める予定である。東賢太朗:フィリピン・ボラカイ島のビーチリゾートにおけるホスト/ゲスト関係、オーバーツーリズムによる環境破壊。新型コロナウイルスの影響により長らく現地調査ができていなかったため、コロナ以前と以後のフィリピンの観光地の状況の変化についての比較考察も、重要なテーマとして含める。土井清美:スペイン北部の徒歩巡礼と日本におけるホスト/ゲスト関係、自然や未知との対峙、およびCOVID-19の影響。ヨーロッパについては、渡航費用の高騰などもあり長期の現地調査は難しいと考えられるので、新型コロナウイルスの影響、コロナ禍の前後の状況比較などに焦点を絞った短期的な調査を実施したい。田中孝枝:四川大地震と東日本大震災に被災した観光地、自然の脅威への対峙、中国人観光におけるCOVID-19の影響など。「コロナ明け」により、日本を訪れる中国人のインバウンド観光客が増加すると想定されるので、その調査についても合わせて実施する。碇陽子:アメリカの観光におけるCOVID-19の影響について、主に調査研究を進める。
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