研究課題/領域番号 |
23K22047
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補助金の研究課題番号 |
22H00775 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 芦屋大学 |
研究代表者 |
窪田 幸子 芦屋大学, 臨床教育学部, 教授 (80268507)
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研究分担者 |
栗本 英世 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構本部, 大学共同利用機関等の部局等, 理事 (10192569)
井野瀬 久美惠 甲南大学, 文学部, 教授 (70203271)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2025年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
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キーワード | ネオエンライトメント / 少数者 / 謝罪 / 和解 / ディ・コロナイゼーション / 先住民 / 歴史 / 記憶 / 返還 / 少数者認知 / ポストコロニアル |
研究開始時の研究の概要 |
2007年の先住民族の権利に関する国際連合宣言に象徴されるように、20世紀末から21世紀初頭にかけて、各国で先住民、少数者の権利は拡大さ れ、歴史的な暴力や不正義について主流社会側が認め、謝罪し、和解しようとする動きが顕著になった。少数者の記憶や語りを重視する場面も 増加し、返還、補償などもキーワードとなっている。ポストコロニアル状況において、歴史や政治的公正性を求める動きはどのように広がり、 受け入れられているのか。本研究は、少数者の語りの具体的な諸場面に注目し、ネオ・エンライトメント(新啓蒙主義)という概念を手がかり として考察し、現代世界の人権、自由をめぐるモラルの諸相の見取り図を描く。
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研究実績の概要 |
2~3ヵ月に1回の研究会を継続し、研究協力者を含め全員が、議論を共有し、この研究の目指すところを理解している。 9月~10月にイギリスで行った共同調査では、大英博物館、ピットリーバー博物館などでの展示の変化と各大学などの専門研究者へのインタビューから、大きく変化しつつある、大英帝国旧植民地との和解、謝罪、返還の動きがあきらかになった。この調査結果を踏まえて、それぞれが研究を展開してきた。 窪田は、1月にオーストラリアの調査を行い、調査地での人々の経験の変化を聞き取るともに、クィーンズランド博物館を中心として、先住民と主流社会の関係性がさらに大きく変化している実態を詳細に知ることができた。また、調査地のアーネムランドにおいても新しいプロジェクトも進行しており、遠隔地でも変化の影響を知ることができた。先住民との和解を目指した動きはオーストラリアではごく当たり前のこととなってきている現状があった。そしてオーストラリア国立大学では、研究成果についての研究者との議論をかさねた。 井野瀬は、イギリスでの調査によって入手した重要であると判断した資料を精査し、比較の視点からの研究を展開している。 栗本もアフリカにおける動向を追い続けており、これらを大きな世界的な視点からとらえることの重要性を共有した。各々の調査の成果は、3月に開催した研究会で報告し、研究協力者を含めて議論を重ねることで、次年度以降の研究の道筋が明確なものになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの調査と共同研究によって、研究計画の段階で想定していた、旧大英帝国植民地と先住民の間の関係性の変化というだけでなく、奴隷であった人々も含めた旧植民地の人々全体と主流社会の関係性の大きな変化がおきていることがわかった。具体的な返還、謝罪の動きが各国でうごいており、植民地時代の問い直しもさらに加速していることが見えてきた。博物館、大学はその中心地となっており、イギリスを知ることで、その動き全体が垣間見えてき、今後他のヨーロッパ地域での動きを追うことで、この研究の目的である少数者と主流社会の関係性の在り方の変化の実像を明らかにできると考えている。当初の計画以上に、この研究のパースペクティブが広く世界的に共有されていることが分かり、このテーマでの研究もかなりの広がりがあることがわかってきた。 イギリス調査を受けて行った研究会では、3名の問題意識が共有され、今後の展開の方向性も見えてきた。まず次年度はドイツ、オランダ、フランスについての情報を集めるため、専門家を招聘しての研究会を重ねる。その上でヨーロッパでの現地調査を計画したい。 また、それぞれの専門領域での研究は、この研究にかかわってさらに活発になっており、例えば窪田は、アボリジニのオーストラリア国内での地位の高まり、経済的な状況の改善がみられることを確認する一方で、大きな社会問題は解決していないことを確認した。これらについてはさらに調査を継続する。
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今後の研究の推進方策 |
イギリスでの調査を踏まえ、研究代表者と分担者は、それぞれの専門領域での調査をおこない、比較の視点から各地の少数者と主流社会の関係性の変化について、さらに研究をつづけ、その結果を共有し、議論する。ヨーロッパの変化を知ることでイギリスを相対化するため、専門家を招いての研究会をドイツ、フランス、オランダをテーマに行う予定である。3名での共同調査、その間の密な議論の積み重ねという方法の有効性は、イギリス調査においてさらに確かなものとなった。そこで本年度は代表者と分担者の3名共同でドイツ、フランス、オランダでの変化について調査を行う。研究者、学芸員へのインタビューそして展示視察をし、研究を展開させる。窪田のオーストラリアでの調査、井野瀬のイギリスでの調査、栗本のアフリカでの研究も継続し、研究発表につなげる。そして、それらにもとづき、次年度以降に研究協力者とともに国際シンポジウムの形で、成果発表につなげたいと考えている。海外での調査、そして国内での研究会をへて、同じ研究関心をもつ研究者の広がりも見えてきている。これらの人々にも次年度以降の国際シンポジウムに加わってもらう予定である。
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