研究課題/領域番号 |
23K22063
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補助金の研究課題番号 |
22H00791 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05050:刑事法学関連
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研究機関 | 早稲田大学 (2024) 東京大学 (2022-2023) |
研究代表者 |
大澤 裕 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (60194130)
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研究分担者 |
笹倉 宏紀 慶應義塾大学, 法務研究科(三田), 教授 (00313057)
井上 和治 東北大学, 法学研究科, 教授 (20345250)
井上 正仁 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 名誉教授 (30009831)
佐藤 隆之 慶應義塾大学, 法務研究科(三田), 教授 (30242069)
稲谷 龍彦 京都大学, 法学研究科, 教授 (40511986)
酒巻 匡 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (50143350)
神田 雅憲 成蹊大学, 法学部, 准教授 (50802675)
池田 公博 京都大学, 法学研究科, 教授 (70302643)
川出 敏裕 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (80214592)
大谷 祐毅 東北大学, 法学研究科, 准教授 (80707498)
成瀬 剛 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 准教授 (90466730)
川島 享祐 立教大学, 法学部, 准教授 (90734674)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
2022年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
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キーワード | 訴追裁量権 / 協議・合意制度 / 刑事免責制度 / DPA / 再犯防止措置 |
研究開始時の研究の概要 |
近時は、組織犯罪の真相解明、企業犯罪への効果的対応、一般犯罪の再犯防止という要請の高まりにより、検察官の訴追裁量権行使によって実現すべき刑事政策目的が多元化し、そのために検察官が取る措置も多様化・複雑化している。 本研究は、協議・合意制度及び刑事免責制度、企業犯罪に対するDPA、起訴猶予に伴う再犯防止措置の3つを検討対象とし、日本における運用実態の解明と諸外国における類似制度の調査を踏まえて、訴追裁量権による正当化の可否について原理的に考察するとともに、検察官の権限行使に対する規制方法を明らかにすることにより、検察官の訴追裁量権の現代的役割とその限界に関する基礎理論を提示することを目的とする。
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研究実績の概要 |
今年度は、【A】協議・合意制度及び刑事免責制度、【B】企業犯罪に対するDPA、【C】起訴猶予に伴う再犯防止措置という3つの個別テーマに応じて、3つの研究班を構成し、日本における運用実態を解明するとともに、アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・韓国における類似の制度の運用状況を網羅的に調査した。各テーマの研究実績の概要は、下記のとおりである。 【A】協議・合意制度及び刑事免責制度については、下級審裁判例や刑事確定記録の調査により、それぞれの制度の運用実態を明らかにした上で、諸外国の類似制度の運用との比較を行い、訴追裁量権の合理的な行使を担保するための法的規制及び内部的規制の在り方について考察した。 【B】企業犯罪に対するDPAについては、諸外国のDPAの制度内容と運用実態を調査し、それが各国の検察官の地位・役割とどのような形で結びついているかについて考察した上で、日本の検察官の地位・役割を踏まえて、我が国の検察官の訴追裁量権によってDPAを正当化することができるかという原理的問題について考察した。 【C】起訴猶予に伴う再犯防止措置については、検察官及び検察事務官へのインタビュー等により、現在、検察庁で行われている入口支援の運用実態を明らかにした上で、諸外国の類似制度の運用と比較し、日本の現在の運用を訴追裁量権によって正当化できるかという原理的問題について考察した。 このように、今年度は、各班による個別的な研究が中心となったが、年度末にメンバー全員が参加する全体研究会をオンラインで開催し、各班の問題意識をメンバー全員で共有した。その上で、3つの個別テーマから浮かび上がる検察官の訴追裁量権の現代的役割と限界について、現段階での概括的な検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、以下の2つである。第1に、【A】協議・合意制度及び刑事免責制度、【B】企業犯罪に対するDPA、【C】起訴猶予に伴う再犯防止措置という3つの個別テーマについて、日本における運用実態を解明するとともに、アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・韓国における類似の制度の運用状況を網羅的に調査した上で、実践的な解釈論と新たな法制度の導入に向けた立法論を提示する。第2に、各テーマの横断的検討を進めて、検察官の訴追裁量権の現代的役割とその限界に関する基礎理論を構築する。 今年度の研究実績は、上記2つの研究目的にとって、以下のような意義を有する。 まず、第1の目的との関係では、3つの研究班による精力的な調査により、【A】【B】【C】の3つの個別テーマについて、日本における運用実態と、諸外国における類似の制度の運用状況の双方を相当程度明らかにすることができた。もちろん、今年度行った諸外国の運用調査は専ら文献によるものであるため、次年度に実施する予定の現地調査によって修正・補充する必要があるが、そのような限界があるとしても、今後、実践的な解釈論と新たな法制度の導入に向けた立法論を展開する上で必要となる前提作業を1年目に概ね終えることができたことは大きな成果と言える。 次に、第2の目的との関係では、年度末に全体研究会を開催し、3つの個別テーマから浮かび上がる検察官の訴追裁量権の現代的役割と限界について、現段階での概括的な検討を行ったことが、今後の研究の方向性を具体化する上で一定の意義を有するものと言える。 以上のとおり、今年度の研究実績は、本研究の2つの目的を達成する上で大きな意義を認めることができるので、現在までの進捗状況について「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、昨年度に引き続き、【A】【B】【C】の3つの個別テーマに応じて、3つの研究班を構成して調査研究を進める。各班が研究する具体的内容及び方法は、以下のとおりである。 【A】協議・合意、刑事免責班は、昨年度と同様の文献調査を継続するとともに、現在、フランスにおいて在外研究中である班員の大谷を中心として、フランス・イギリス・ドイツの現地調査を行う。その上で、訴追裁量権の合理的な行使を担保するための法的規制・内部的規制の在り方について、より立ち入った考察を行う。 【B】企業犯罪DPA班は、昨年度と同様の文献調査を継続するとともに、現在、アメリカにおいて在外研究中である班員の笹倉を中心として、アメリカの現地調査を行う。その上で、我が国にDPAを導入する場合のありうる制度案について、検察官の権限を規制するための方策等を含めて検討する。 【C】再犯防止措置班は、昨年度と同様に入口支援に積極的に取り組んでいる地方検察庁を訪問して、検察官・検察事務官に対するヒアリングを行い、入口支援の運用実態と課題を明らかにするとともに、2023年夏からアメリカにおいて在外研究を開始する予定である班員の川島を中心として、アメリカの現地調査を行う。その上で、入口支援のありうる制度案について、法制審議会の少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会等で示された反対論を踏まえて検討する。 2024年度は、前2年間の各班の研究成果を持ち寄り、基礎理論構築のための全体検討を行う。具体的な検討課題として、対象者に課しうる義務・負担の限界(課題1)、検察官の権限行使に対する規制の在り方(課題2)を設定し、この2つの課題について横断的検討を行うことにより、最終的に、検察官の訴追裁量権の現代的役割とその限界に関する基礎理論を提示したい。
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