研究課題/領域番号 |
23K22065
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補助金の研究課題番号 |
22H00793 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05050:刑事法学関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
若林 宏輔 立命館大学, 総合心理学部, 准教授 (40707783)
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研究分担者 |
大角 洋平 愛知学院大学, 法学部, 講師 (10923542)
緑 大輔 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (50389053)
清水 拓磨 立命館大学, 法学部, 准教授 (50961926)
指宿 信 成城大学, 法学部, 教授 (70211753)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,770千円 (直接経費: 12,900千円、間接経費: 3,870千円)
2026年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2025年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
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キーワード | 司法取引 / 他者負罪型 / 自己負罪型 / 虚偽自白 / 他者負罪 / 自己負罪 / 冤罪 / 捜査・公判協力型協議・合意制度 / 捜査・公判協力型 / 法と心理学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、日本版の「捜査協力型(他者負罪型)」司法取引制度について、比較法学の観点から、主として欧米圏で主流な自己負罪型司法取引との比較により、同制度の法理論・実務の問題点を明らかにする。その結果を受けて、心理学実験手法を用いて主に「虚偽の取引受諾」の生起条件を明らかにする。とくに残りの補助事業期間中においては、これまでビネット研究を中心に行ってきた心理学研究に加えて、実験室実験による生態学的妥当性の高いデータ取得を行う。また司法取引で得られた証言についての第三者評価の研究も複数実施する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、当初計画通り、欧州・司法取引制度の理論・実務調査や各国研究者らへのヒアリング等を行いながら、世界の司法取引の制度手続きや運用実態について情報を収集・整理した。同時に日本国内での実施例も継続的に収集し、比較法学的検討を行った。 また捜査協力型(他者負罪型)司法取引の心理学実験・調査も継続して実施した。基本的な実験パラダイムとして、質問紙調査を用いて、1)実験参加者の罪の状況(有罪・無罪)、2)罰の程度(仮に否認を通して裁判で有罪と判断された場合に予測される刑罰の重さ)、3)誘引の程度(司法取引を受諾した場合の減刑程度)の操作を基本とした。加えて今年度は4)他者負罪型司法取引で証言するターゲット人物(被証言者)との関係(親密度が高い・低い、または組織内の関係:上司・部下・同僚)を系統的に操作して、各条件における取引受諾(拒否)率を測定した。さらに、日本版司法取引(他者負罪)で得られた証言について、裁判員等の第三者が同証言の信用性・任意性等をどのように評価するかについても、欧米で実施されている自己負 罪型証言と比較を行いながら検討した。 研究実績としては、まず法学分野の学術誌『季刊刑事弁護』に、欧米圏で行われた自己負罪型司法取引に関する心理学研究のレビュー論文、また日本版司法取引(他者負罪)に関する本申請研究の成果に関する論文を掲載した。同雑誌は弁護人だけに限定されず、広く司法関係者に読者がいる雑誌であり、司法取引の問題点について本申請研究の成果を踏まえ広く周知できた。また前年度に行った共同研究者らとの学会発表報告を雑誌「法と心理学」に寄稿した。また今年度も研究協力者である法学者らと共に国内学会にてワークショップを企画し、本申請研究の成果発信に努めた。そのうち心理学実験の報告が学会発表賞を受賞した。また国際学会(EAPL)でも研究成果を報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先述したように捜査協力型(他者負罪型)司法取引の心理学実験・調査を今年度も継続して実施できた。とくに今年度までの研究により、質問紙法による心理学研究パラダイム‐‐1)実験参加者の罪の状況(有罪・無罪)、2)罰の程度(仮に否認を通して裁判で有罪と判断された場合に予測される刑罰の重さ)、3)誘引の程度(司法取引を受諾した場合の減刑程度)を構築することができた。今後の調査においては同手続きに追加の実験刺激・条件を加えることで司法取引の受諾率を比較・検討することができるため、これは十分な進展であると評価できる。加えて今年度より日本版司法取引(他者負罪)で得られた証言について、裁判員等を想定したの第三者による証言評価についても検討を開始しており、これは当初の計画以上の展開であることから、申請研究は順調に進展していると評価できる。ただし今年度より開始予定であった実験室実験による検討は、実験準備に時間を要したため年度内に実施に至らず、次年度実施を予定していることから、上記評価と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本申請研究の基金化に伴い、より柔軟な研究計画の推進方策を採る予定である。とくに補助事業期間中の研究実施計画としては、アジア各国の司法取引制度の理論・実務調査や研究者らへのヒアリング等を法学系共同研究者等が行う予定である。また他者負罪型・司法取引場面の各種要因操作に基づくデータ取得も継続して行う。加えて、実験室実験による心理学調査は23年度後半から準備段階に入っており、これを2024年度中に実施予定である。これに加えてビネット研究(質問紙調 査・場面想定法)も並行して複数行う。具体的には、これまで扱ってきた変数(有罪・無罪、罰の重さ、減刑程度(誘引)、有罪確率に加え、 認知スタイルや証言を行うターゲット人物との関係性(他人・知人・組織内関係) について検討する。また過年度より新たな調査として司法取 引証言の第三者(裁判官・裁判員)による評価の研究の社会的ニーズが明らかになり、この点について過年度より継続してデータ取得を行う。 特に欧米圏で主流の自己負罪型司法取引証言に対する評価との比較により、国際的な研究との差異を明らかにする。 これらの研究成果を国内(法と心理学会、日本心理学会)・国外(European Association of Psychology and Law, American Peychology an d Law Society,東アジア法と心理学会等)学会で研究報告を行う予定である。また各種成果を適宜論文にまとめて社会発信を行う。
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