研究課題/領域番号 |
23K22066
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補助金の研究課題番号 |
22H00794 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤田 友敬 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (80209064)
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研究分担者 |
笹岡 愛美 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (50557634)
後藤 元 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (60361458)
増田 史子 岡山大学, 社会文化科学学域, 教授 (60362547)
南 健悟 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (70556844)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2025年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
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キーワード | 海事法 / 電子船荷証券 / 自動運航船 / 自律的運航船 / 電子的船荷証券 / 人工知能 / 分散台帳技術 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、第4次産業革命のもとで生じつつある海事産業のデジタル化が海事法にもたらす革新のうち、①自動運航船を用いた運航により生じる責任と②ブロックチェーン技術を用いた運送書類の電子化のもたらす法律問題について検討し、立法論・解釈論的な提言を行うものである。海上航行のリスクを船舶の遠隔操作者や自動運航プログラム供給者等を含む関係者間でいかに分配することが望ましいか、有価証券という法技術に依拠して構築されてきた法体系を有価証券のない世界でいかにして実現するかという、実践的であると同時にで高度に理論的でもある学問的研究である。
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研究実績の概要 |
①自動運航船にかかる責任 本年度は、自動運航船の事故に伴う造船業者・自動運航プログラム提供者の責任の検討を行うと同時に、事故と補償の経済分析に関する文献調査・分析を行い、どのような自動運航船の事故の抑止や自動運航にかかるプログラムの開発等に対してどのようなインセンティブ効果を与えるかを検討した。基本的には、現在の過失責任を基礎とする船舶所有者の責任法制を維持しつつ、学習効果やアップデートの位置付けAIを利用したプログラムに関する製造物責任の基本的な考え方を整理する必要性があることが分かった。 ②運送書類の電子化運送書類の電子化 運送書類の電子化にかかる基本的な方向性を検討し、UNCITRALモデル法等の依拠する、紙の有価証券との機能的等価物というアプローチの望ましさが明らかにされた。ただ検討中に、UNIDROITによる「デジタル資産と私法に関する原則」が公表されたため、その考え方との整合性を検討する必要が生じたほか、法制審議会商法(船荷証券等関係)部会の検討過程で明らかになった諸問題(強制執行等)が新たな検討課題として浮かび上がった。貿易書類の電子化のための種々のプラットフォームの運用実態と規約内容は調査が進んだが、一時有力視されたTradeLensが撤退するという事態が生じたため、その原因の検討が新たな調査課題として追加された。 3.万国海法会・国際海事機関の活動への参加 2023年6月に、モントリオール(カナダ)において開催された万国海法会コロキアムに参加し、研究分担者の一人が自動運航船に関するセッションに参加し、本研究課題にかかわる国際的な最新動向について情報収集を行う。また研究分担者の二人が国際海事機関における自動運航船のルール作りのため、法律委員会あるいは共同作業部会等の活動に参加し、研究のための最新情報を得るとともに、研究成果の実践的な活用も試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自動運航船を用いた運航により生じる責任とブロックチェーン技術を用いた運送書類の電子化のもたらす法律問題のいずれについても、精力的な検討を続けると同時に、その成果の一部を公表できており、本研究課題は順調に進捗している。 ただし、研究実績においても触れたとおり、船荷証券の電子化については、一旦順調に進むかに見えた日本の国内立法の動きが中断状態にあり、その原因と対処を検討する必要に迫られているほか、UNIDROITにより新たな文書が公表され、こちらの検討も必要になる。このような予定外の状況の発生を考慮し、「おおむね」順調と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策について、自動運航船にかかる責任と運送書類の電子化に分け説明し、あわせて国際的な活動について触れる。 自動運航船を用いた運航により生じる責任については、自動運航船の事故に伴う遠隔操作者の責任の検討についてより立ち入って検討する。本年度の検討により、自動運航船の事故に伴う遠隔操作者に対する公法的規律との協働関係が重要であることが分かったため、遠隔操作者に対する規制に関する諸論点の洗い出しを行い、規制のアプローチ(船長の規律に乗せるか、独自の法的地位を考えるか)と基本的な論点の調査も行う。あわせて、自動運航船の事故に伴う船級協会の責任の検討、自動運航船の傭船者・船舶賃借人等の法的地位・責任の検討、自動運航船の事故への責任制限制度の適用、自動運航船の事故への責任集中制度の適用といった応用問題の検討に進みたい。 船荷証券の電子化については、日本の国内立法の動きが一時的に中断状態にあり、その要因となっているいくつかの難題(たとえば強制執行)について検討を進める。またUNIDROITの「デジタル資産と私法に関する原則」との関連についても立ち入った検討を行う。さらに電子的船荷証券に関する準拠法ルールの検討や国際条約による規律の統一の可能性(ロッテルダム・ルールズの発効に関する最新動向)についても、可能な範囲で調査・検討を行うこととする。 国際的活動としては、2024年5月に万国海法会コロキアムがヨーテボリ(スウェーデン)において開催予定であり、研究分担者のうち3名が自動運航船に関するセッション及び海上物品運送に関するセッションに参加し、本研究課題にかかわる国際的な最新動向について情報収集を行う。また国際海事機関における自動運航船のルール作りのため、法律委員会あるいは共同作業部会等の活動に参加し、研究のための最新情報を得るとともに、研究成果の実践的な活用も試みる。
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