研究課題/領域番号 |
23K22176
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補助金の研究課題番号 |
22H00905 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
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研究分担者 |
中村 江里 上智大学, 文学部, 准教授 (20773451)
四條 知恵 広島市立大学, 平和研究所, 准教授 (80730556)
山口 響 長崎大学, 核兵器廃絶研究センター, 客員研究員 (80828707)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
13,260千円 (直接経費: 10,200千円、間接経費: 3,060千円)
2024年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2022年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
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キーワード | 女性 / 復興 / 原爆・被爆 / 占領 / 戦争・紛争 / 戦争 / 言説 / ジェンダー / 被爆 / 当事者 / 表象 / 性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、第二次世界大戦後の占領下の被爆地とその周辺地域の女性たちが、SCAP/GHQとの交流において、直接的・間接的接点に、どのような役割を担ったのか、そしてどのような職業の選択肢の中から、生業を獲得し、社会の再構築と復興に参画したのかを明らかにし、被爆地の復興言説における女性の存在を可視化するものである。得られた知見から、紛争・戦争後の社会再構築の過程で、女性の生業の選択的制限と可能性を考察し、復興期の女性の就業支援の課題を提示し、経験知の事例データ分析を援用して、課題克服への示唆を提供する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、第二次世界大戦後の占領下の日本で、特に被爆地とその周辺地域における女性が、SCAP/GHQとの直接的・間接的接点において、どのような役割を担ったのか、そして、その役割を介してどのように社会・地域の「復興」に関わったのかを明らかにするものである。
日本の戦中戦後の女性の生き方は、学術的および社会的潮流として、これまで「母性」と「犠牲」の観点に絞った表象が代表的であった。女性の多様性と自主性を表現した記録は少なく、特に「自らの意思で復興期の混乱を生き延びた行動的な主体」としては、一般的に記憶化されてこなかった。昨今の「復興への市民の貢献」言説のブームで「女性の被爆後の復興プロセスへの関与」が国際社会で注目を浴びているが、学術的な知見と先行研究は数えるほどしかなく、一次資料が散逸または紛失しており、早急な学術的対処が求められる。そこに注目した本研究は、実証的アプローチにより、復興期における女性の生き方の多様性と主体性を実証的アプローチにより、明らかにしていくものである。具体的な手順として、①調査と資料収集、②資料整理、③データベース構築、④定性・定量分析、同時に、⑤関連分野(社会科学、ジェンダー、記憶学、精神医学など)の理論整理と援用による調査結果の説明などを含む。
初年度は採択から正味半年間で、上記のうち、①と②に注力する計画に沿って研究を遂行した。多様な学術的背景を持つ研究班メンバーの各分野において一次資料を収集し、吟味したところ、特に「復興言説における女性の不在」について確認し、その背景説明にも着手した為、順調な進展があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、占領期の被爆地における女性の生業に焦点を当て、社会環境変化をもたらしたGHQ/SCAPとの直接的・間接的関係を通じた女性の復興への関与を明らかにすることを大目的とする。初年度は直接的関係として、具体的には以下4点を軸に研究を展開した。 1)占領期の性産業に従事する女性に関する言説を整理する。2)戦争・被曝の記憶を抱える女性が、占領軍による性売買および性病対策にどう向き合ったのか、史実を整理する。3)占領期の性産業に従事した女性への社会のまなざしと精神医学的対策を明らかにする。4)上記の資料群、海外の公文書やメディアにおいて、占領期の日本の女性の特徴づけと、その変化、および変化の背景と条件を分析する。
センシティブなテーマであるため、総じて一次資料収集は非常に困難であったが、紛失直前の貴重な資料を見出し、譲渡を受ける、または複写を許可されるなど、当初の予想を超える展開があった。一次資料は直ちに目録化・データ化を行っている。現地調査や専門家の講演を交えた7回の研究会を重ねて、新たな資料の説明、信憑性評価と用途などを異なる専門分野の視点から意見交換を行っている。収集資料のデータベース化に伴って、次年度の分析を見据えたデータ成形も継続中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、実証的アプローチを継続する。エビデンス・ベースで一次資料を中心に収集整理を継続しながら、メンバーの役割分担により、同時進行でデータベースの構築に注力し、応用言語学理論とテキスト分析の手法を援用して都度、資料から得られた言説の傾向を記録していく。
特に、次年度計画として、「復興言説における女性の不在」に加えて、「母性」と「犠牲」を中心に展開する、女性の社会的役割の表象プロセスを継時的に考察する。対照的に、女性の主体性と多様性の表象プロセスを観察する。特に「意思を持った行動主体」としての、占領期の女性の表象を調査し、その概念形成に寄与する表現を同定し、それらの社会的、文化的位置付けを明らかにする。
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