研究課題/領域番号 |
23K22180
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補助金の研究課題番号 |
22H00909 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
丹野 清人 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (90347253)
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研究分担者 |
林 真人 金城学院大学, 国際情報学部, 教授 (30601900)
吉田 舞 北九州市立大学, 法学部, 准教授 (50601902)
高田 圭 法政大学, 国際日本学研究所, 准教授 (60837889)
林 浩一郎 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 准教授 (80736645)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,770千円 (直接経費: 12,900千円、間接経費: 3,870千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
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キーワード | 顔の見えない定住化 / 顔の見える関係 / 地域間比較 / 実践知 / 帰還移民ネットワーク / 都市間比較 / Intercultural cities / 上からの顔の見える化 / インターカルチャルシティ / 比較都市間分析 / 経路依存性 / グローバル化 / 外国人労働者 / 労働運動 / 住民組織 / 比較都市研究 |
研究開始時の研究の概要 |
外国人が隣に存在しているのに、顔と名前を認識した存在になっていないことを、「顔の見えない定住化」と申請者はかつて命名した。しかし、これは、日本人住民を含む社会の側が外国人の顔を見ようとしないからだ、とも言われる。だが、そのような批判のレベルを超えて、いまだに日本における外国人の存在は多くの場合顔の見えない定住化になっていると考えられるし、そのように受け止められてもいる。だが、他方で顔の見え方は地域によっても見え方が異なることもわかっている。本研究では、各区地域に取り組みの違いが見え方を変えていると考え、いかなる取り組みがどのような帰結と結びつくのかを都市間比較から考えようとするものである。
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研究実績の概要 |
今年度は、川崎市、浜松市、広島市を中心に、外国人労働者とその家族の受け入れについて基礎自治体が何をおこなっているのかの比較研究を行政プログラムの比較研究としておこなった。在日韓国・朝鮮人の問題をニューカマーの来日以前から抱えていた点では、広島市や川崎市は共通しているのであるが、基礎自治体の住民政策という点では、大きく異なるものであった。この差がどこから来るのかまではまだ説明要因を完全には詰めきれていない。しかし、ニューカマーの前に在日韓国・超新人の問題を抱えていた二つでは共通して「人権」問題を重視し、外国人住民へのアプローチもここがキーになるとこが分かってきた。 他方、地域の中での在日韓国・朝鮮人のプレゼンスが低く、取り立てて外国人住民政策を持っていなかった浜松では、1990年入管法改正後に、ラテンアメリカから来るニューカマーの日系人が、外国人住民政策の端緒となった。90年代に始まったこともあり、既に、国際人権規約、子どもの権利条約、女性差別撤廃条約等の国際人権法に日本が批准した後に外国人受入れが始まった浜松では、人権はことさら意識されることなく(意識していないというよりは、それは既に当然のものと受け止められている。)、ダイバーシティを強調する多文化共生に政策目標が置かれて今日まで進められてきている。 基礎自治体のコミュニティ政策の上記のような違いは、外国人の受入れ政策として行なっている各地の実際のプログラムの違い、そのプログラムを実施していく地域のボランティア団体、NPO組織、町内会との連携のあり方の違いとなっていると仮説を立てて研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎自治体のコミュニティ政策の上記のような違いは、外国人の受入れ政策として行なっている各地の実際のプログラムの違い、そのプログラムを実施していく地域のボランティア団体、NPO組織、町内会との連携のあり方の違いとなっていることが判明した。しかし、同時に、ほぼ同じような性質、在日韓国・朝鮮人が集住しているところに、1990年代にニューカマー外国人が積み重なるという共通の前提条件を持ちつつも、川崎市と広島市では、外国人プログラムが大きく異なっていた。前者、広島では多文化共生の問題が、被曝都市広島としての平和行政と一体化して行なっており、外国人のための政策はニューカマー外国人に特化する形になっている。反対に、川崎市では、在日韓国・朝鮮人問題の人権問題として、教育・福祉の面をメインに捉えられており、その上にニューカマーの外国人の問題が乗る形になっている。 これらとは対照的に、初期の外国人人口として在日韓国・朝鮮人が少なく、地域の外国人の多くが1990年入管法改正以後のニューカマー外国人の多い浜松では、平和学であったり、人権であったりという観点からのアプローチがほとんど見られず、人権についてはあえて言及せずともそれが満たされることを当然の前提とした上での、入ってきた外国人の文化的違い・差異を承認し、その差異を尊重する受け入れを強調する外国人プログラムを実施している。このような対応を根拠づけることとして浜松市はアジアでただ一つ欧州評議会の中にあるIntercultural Citiesに加盟し、ヨーロッパ基準の人と受け入れをとっている。この協約に入ったからといって、EUに加盟しているわけでもないので、それを守れなかったからといって罰則が浜松市に課せられることはない。しかし、浜松はこれに加盟していることをもって、ヨーロッパ型の外国人受け入れに向かうことを正当化しつつ、行政を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
外国人行政の都市間比較は一定程度、これまでの研究で概観することができた。この地方政府の行政的態度・姿勢が、地域で実際の外国人支援を行う活動にいかなる影響を与えているのか、この部分を検証するのが今後の研究課題となってくる。 外国人労働者として健康に働いている時は、住居と仕事場の往復が外国人労働者の生活の大部分となり、職場で一緒でもない限り、多くの日本人住民からは子彼・彼女たちの姿は見えない。単に日本人住民から見えないだけではなく、行政からも見えにくくなっている。しかし、子供や高齢者は、体力的にも弱く、病気になりがちなこともあって、住居と職場だけの生活だけではなく、学校や病院、そしてさまざまな福祉制度と関連を持つことから、この部分は把握しやすいし、実際の外国人の住民支援もこの部分に対応するものがほとんどだ。そこで、対象地域における外国人支援活動を細かく調査していくことが今後の研究課題である。 2024年度の上期は、川崎市、浜松市でのこの活動を調査することに重点を置き、下期は愛知県豊田市および広島市での調査活動を中心に行う。また、海外調査を含めた海外の都市研究については、一年を継続して、文献調査やオンラインによるヒアリングを行いつつ、夏休み期間等の長期休暇の時期を活用してフィールドワークも実施する。 これらの民間組織の研究を進めながら、行政と民間機関の接続・連携のあり方について、一定のモデルを組み上げていく。
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