研究課題/領域番号 |
23K22185
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補助金の研究課題番号 |
22H00914 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
太田 美帆 玉川大学, リベラルアーツ学部, 教授 (40431803)
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研究分担者 |
狐崎 知己 専修大学, 経済学部, 教授 (70234747)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
11,700千円 (直接経費: 9,000千円、間接経費: 2,700千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 生活改善アプローチ / 因果推論 / 主体醸成 / エルサルバドル / コスタリカ / 沖縄県 / 長野県 / 生活改善普及事業 |
研究開始時の研究の概要 |
経済成長に先立ち公衆衛生と健康水準の急激な改善を達成した戦後日本の経験は、感染症や栄養不良が深刻な途上国の公共政策に有用である。本研究は、社会学・経済学・開発学による学際的アプローチを試み、まず日本の生活改善普及事業を参照点とし、住民の「主体醸成」を軸とする「生活改善アプローチ」として学術的に体系化する。次に、応用的実践が進むコスタリカとエルサルバドルを対象として、本アプローチが住民の感染症対策や栄養改善に及ぼした効果を検証する。保健医療体制が脆弱で、恒常的貧困にある中南米地域への導入効果を、国際共同研究により質的調査と因果推論モデルを組み合わせて実証する点に本研究の独創性がある。
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研究実績の概要 |
本研究は日本を端緒とする生活改善アプローチ(EMV)が、エルサルバドル、コスタリカにて応用され、住民の感染症対策や栄養改善に及ぼした効果を検証するものである。保健医療体制が脆弱で、恒常的貧困にある中米地域への導入効果を、国際共同研究により質的調査と因果推論モデルを組み合わせて実証する計画である。 2023年度はエルサルバドル調査にて、狐崎、藤城、セサル・カベージョの3名が、FISDL(地方開発社会投資基金)が実施したEMVを用いた地方開発パイロット事業の一次資料を体系的に収集し、現場視察、インタビュー調査を行った。同事業の設計・実施におけるコア人材に対し、因果推論分析モデルを説明し、解析に必要なデータと資料整理の手法をコーチングした。以降6月から毎月、日本とエルサルバドル、パラグアイをつなぎ、因果推論分析に必要な資料整理作業を続けた。 コスタリカ国立大学大学院コミュニティ開発コースの教員・大学院生に対し、狐崎がオンラインにてEMVを用いたコミュニティ開発の実証実験に関わる理論面の指導他に携わった。このうちシルビア・ゴンサレスは狐崎の指導の下、EMV実証実験研究にて最優秀論文賞を獲得した。同修士論文をもとにEMVガイドラインを作成、印刷(400部)し、同国における研究成果普及を図ったところ、保健省メンタル・ヘルス・プログラムのガイドラインとして正式に採用されるに至った。2024年5月から12地区にて開始されるパイロット事業では狐崎と藤城が主任とアドバイザーを依頼され、参加する。 太田・藤城は、沖縄県石垣市にて、元生活改善普及員と生活改善グループ参加者との聞き取り調査を通して信頼関係の構築に至り、農業改良普及所から過去70年分の大量の写真・報告書等の譲渡を受け、貴重な研究資料として保存した。長野県松川町の現地調査では、元生活改良普及員のライフヒストリーのインタビュー調査を継続した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.国内調査 沖縄県石垣市にて、元生活改善普及員と生活改善グループ参加者との数度の聞き取り調査から信頼関係の構築に至り、農業改良普及所から過去70年分の生活改善活動の大量の写真・報告書等の譲渡を受け、貴重な研究資料として保存した。また、長野県松川町の現地調査を2回行い、元生活改良普及員のライフヒストリーについてのインタビュー調査を継続し、生活改善の実践の歴史の回顧記録を作成している。 2.エルサルバドル調査 因果推論モデルを用いた生活改善アプローチ(EMV)の効果分析に必要な資料収集をほぼ終えることができた。政策担当者及びEMVプロモーター及び生活改善サークルの参加者に関するインタビューについても、オンラインでほぼ毎月1時間半、定期的に行うとともに、10日間の現地調査で新たな証言を得ることができた。その成果を国際開発学会全国大会にて発表した。また、トロラ市における270人のEMV参加者のデータ整理もほぼ終了したが、因果推論モデルに必要なデータ整理にはまだ相当作業が残されている。 3.コスタリカ調査 コスタリカ国立大学(UNA)大学院にて狐崎が指導したサラピキ地区のEMV活動の実証調査の成果が同国保健省のメンタルヘルスガイドラインとして採用されるに至った。この成果にもとづき、UNAが新たに2か所でのEMV実証実験を実施しており、狐崎の助言のもと大学院教員と大学院生のチームが意欲的に活動を続けている。また、保健省自主財源にて新たにEMVを用いたメンタルヘルス・健康増進プログラムの実施を決定し、2024年5月から2年間12地区で60人の省庁間チームが担うパイロットプログラムがスタートする。これが国際機関米州保健機構(PAHO)の関心を惹き、すべての活動がビデオ教材として作成され、PAHOプラットフォームに掲示される目途が立った。実現すればEMVが中南米全域で幅広く活用される快挙となる。
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今後の研究の推進方策 |
【2024年度】1.日本:沖縄及び長野における生活改善アプローチ(EMV)の理論と政策、活動手法と事例、成果につき調査を継続する。昨年度調査にて発見した沖縄県八重山・北部の農業改良普及所保存の1960年代以降の貴重資料が譲渡される予定。これらを研究資料として保存・整理・解析し、中南米における活動教材として編集する。さらに生活改善普及員やグループ員の証言を映像資料として記録に残す。そのため太田(代表者)・狐崎(分担者)・藤城(協力者)による資料収集調査(沖縄)、太田・藤城による証言収集(長野)を計画。 2.エルサルバドル:トロラ市の生活改善活動成果を中央政府・自治体・FISDL(社会投資・地方開発基金)・生活改善グループの4レベルにおける因果推論モデルを用いた分析を目的に、証言記録及び統計データの収集を続ける。オンライン月例研究会に加え、狐崎、藤城、Cesar Caballo(協力者)が出張し(8月)、現地協力者と共に因果推論モデルの作成ワークショップ他を予定。 3.コスタリカ:狐崎は遠隔指導にてコスタリカ国立大学(UNA)大学院の教員・大学院生とともに2か所にてEMV実証調査を進める。同国保健省が「EMVによるメンタル・ヘルス強化プログラム」を国内12か所での実証実験を決定、本科研グループに全面的な協力を要請。狐崎は5~2月にかけて研究協力を行い、太田は2月に現地にてフォローアップと成果の評価手法に関する研究協力を行う。本実証実験にはJICAのEMV研修を受けた24名の参加が見込まれ、本科研目的に資する極めて有益かつ発展的な研究活動である。 【2025年度】1.日本:研究成果を西語版のEMVマニュアル及び映像資料として完成させる。2.エルサルバドル:EMV因果推論モデルを完成させ、3.コスタリカ:UNAのEMV実証実験の成果を体系化し、それぞれ国際セミナーを開催して発表する。
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