研究課題/領域番号 |
23K22240
|
補助金の研究課題番号 |
22H00969 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
|
研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
佐藤 学 学習院大学, 文学部, 客員所員 (70135424)
|
研究分担者 |
秋田 喜代美 学習院大学, 文学部, 教授 (00242107)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
15,080千円 (直接経費: 11,600千円、間接経費: 3,480千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2022年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
|
キーワード | 学校改革 / 学びのイノベーション / 授業改革 / 教職専門性の開発 / 国際教育開発 / 学びの共同体 / 授業研究 / 教職開発 / 国際ネットワーク / アクション・リサーチ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、新型コロナパンデミックのもとで国際的な研究交流が大きく制約される中で行われた。l本研究課題との関連で、初年次と2年次において、最も重視したのは、各国における新型コロナによる学びの損失(learning loss)の実態調査であり、それぞれの国における学校のダメージ、子どもと教師の直面した困難の分析とその克服の道筋を探究する課題であった。この2年間本研究とそれに基づく学校改革と授業研究と教職専門性の開発は、どの国においても強く要請され、所期の目的以上の成果を達成することができた。本研究の目的である学びの共同体の学校改革研究のグローバルネットワークは、2年間で飛躍的に拡大した。
|
研究実績の概要 |
本研究は、アジア地域を中心に展開してきた「学びの共同体」の学校改革グローバル・ネットワークを対象とする調査研究を目的としている。日本、中国、韓国、台湾、インドネシア、ベトナム、タイ、シンガポール、香港などの国・地域は、グローバリゼーションを背景として、学校改革と授業革新が最もドラスティックに展開されている地域である。なかでも、申請者が提唱してきた「学びの共同体」の学校改革は、多くの国で国家政策もしくは準国家政策となり、アジア地域における学校改革の最も大きな推進力の一つになっている。新型コロナ・パンデミックと第4次産業革命のもとでも、この改革はいっそう拡大し、近年はアジア地域を越えたグローバル・ネットワークを形成している。本研究は、この改革における学びのイノベーション、教師の専門家共同体の形成、学校改革の政策について各国の研究者たちとの協同研究を推進し、学校教育の改革モデルを研究してきた。 「学びの共同体」を標榜する学校改革は、(a)「21世紀型の学校」を追求する改革であり、(b)新自由主義に対抗する民主主義教育を模索する改革である。その特徴は、(a)質と平等の同時追求、 (b)学習者主体の協同的探究の授業、(c)教科の本質に即した「真正の学び」、 (d)「教える専門家」から「学びの専門家」への教師像の転換にある。ヴィジョンとしては、学校の公共的使命である一人残らず子どもの学ぶ権利を保障すること、すべての教師の専門家として成長を実現することを掲げてきた。その哲学としては(a)公共性の哲学、(b)民主主義の哲学、(c)卓越性の哲学の三つを掲げ、活動システムとして(a)対話的コミュニケーション(聴き合う関係)による協同的学びの創造、(b)授業研究による教師間の同僚性の構築、(c)学校改革への親と市民の参加と協力を提示している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、アジア諸国を中心に普及している日本発信の「学びの共同体の学校改革」の研究と実践の国際交流を目的としている。本プロジェクトは、2014年以来、研究代表者が提唱し継続してきた「学びの共同体の学校改革」の国際交流を行い、その改革の研究と実践の達成度を実証的に評価することを目標として実施してきた。 2023年度は海外渡航と対面式の国際会議が可能になったことから、7か国の海外渡航で研究を持続し、対面とオンラインのハイブリッドで2024年3月に第11回国際会議を日本で開催した。国際会議は対面を基本にしたため昨年度の第10回会議と比べてオンライン参加者は減少したが、24か国地域から600名(教育研究者・教師・教育行政担当者)に達した(日本人参加者は150名)。今年の特徴として、インド、マレーシア、カンボジア、パレスティナなど、グローバルサウスからの参加者が増加した。 本研究は「21世紀型の授業と学び=探究と協同の学び」を各国の事情に対応して推進しているが、研究対象とした諸国において期待以上の前進を達成することができた。本研究に協力した中国では、今年度3月に北京市の拠点学校を中心に国際会議を開催したが、オンライン参加者は25,000人にも達した。そのほか、韓国、台湾、インドネシア、タイ、イギリス、メキシコにおいてシンポジウムと教師研修ワークショップを開催し、「21世紀型の授業と学び=探究と協同の学び」へのイノベーションを推進した。さらに11月にはオランダで開催された世界授業研究学会大会において本研究テーマを主題とする特別シンポジウムが企画され、研究代表者を中心に講演も行っている。また、各国の教育研究者相互のネットワーク、および国際間のネットワークも緊密化し、本研究の成果としての海外図書も多数出版された。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度の研究実施計画は、以下の通りである。① 2024年4月から12月にかけて、中国、韓国、台湾、インドネシア、タイ王国などのアジア諸国を訪問して学校改革の実施状況を調査し、学校改革の拠点校、拠点大学の支援を行う。特に2020年から2023年までのパンデミックによる学びの損失(learning loss)からの回復がどのように進展してきたかの研究が焦点となる。 ② 11月にメキシコを訪問し、本研究が築いたアジア地域の学校改革の中南米諸国へのインパクトを調査する。メキシコでは昨年度に引き続き、イベロアメリカーナ大学で開始した「学びの共同体改革プロジェクト」の研究者と共同研究を行う。 ③ 昨年度に引き続き、本研究が推進している学びの共同体の学校改革の国際ネットワークに参加している各国の若手研究者の研究交流と研究支援を行う。彼らのほとんどはすでに博士学位を取得し、各国の教育研究をリードする仕事を行っている。本年度中に彼らと協同で英語書籍の出版を準備する。 ④ 2025年3月に、第12回学びの共同体国際会議を学習院大学を会場にして開催する。対面中心でオンライン併設の方式で開催する予定である。本年度は最終年度なので、この国際会議は総括的な会議となり、3年間の成果は上記の英語書籍で出版する予定である。
|