研究課題/領域番号 |
23K22278
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補助金の研究課題番号 |
22H01007 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
赤木 里香子 岡山大学, 教育学域, 教授 (40211693)
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研究分担者 |
金子 一夫 茨城大学, 教育学部, 名誉教授 (70114014)
角田 拓朗 神奈川県立歴史博物館, 学芸部, 主任学芸員 (80435825)
山口 健二 岡山大学, 教育学域, 教授 (90273424)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | 図画手工教科書 / 画像データベース / 美術教育史 / 図画 / 描画 / 図画科 / 手工科 / 教科書データベース / 臨画 / 鉛筆画 / 毛筆画 / 写生 / 描画技術 / 国吉康雄 / 図画教育 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、画像データベースによって多様性に富む日本の近代図画手工教科書を一覧できるようにし、研究者のみならず児童生徒から社会人まで、より多くの人々がその幅広い世界に気軽に触れ、イメージソースとして活用し、「見る」「描く」という体験に踏み込めるようにすることを目指すものである。これまで構築したデータベースに未収録のデータを加え、検索システムを拡充して、様々な研究分野のニーズに応えるものにするとともに、本データベース独自の機能を活用して、社会教育においては博物館・美術館でのワークショップ開催や教科書資料等の展示公開を行い、学校教育においても美術教育および教科横断的な学習プログラムの開発に取り組む。
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研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、これまでの成果に未収録のデータを加え、美術教育のみならず多くの研究分野に貢献するツールとしてデータベースを改良することと、その活用推進のために社会教育施設と連携した教育プログラムを開発することの二つに取り組んだ。 1.データベース拡充について 今年度は主に研究分担者金子一夫の所蔵資料を対象に、画像撮影およびExcelファイルによるデータ化処理を、研究分担者角田拓朗が中心となって進めた。システムへの導入は次年度となるが、明治初期から明治10年代の鉛筆画教科書、明治20年代の毛筆画教科書、明治後期から戦前期にかけての中等教育用図画手工教科書について、データを充実させることができた。本データベースの活用により、児童生徒の臨画作品について、手本となった図画教科書を特定することが容易となる。その事例として、岡山県郷土文化財団が所蔵する小説家内田百閒(1889-1971)の遺品に含まれる臨画作品に着目し、高等小学校時代の毛筆画教科書、旧制中学校時代の鉛筆画教科書を明らかにした。 2.教育プログラム開発について 上記を踏まえて、研究代表者赤木里香子が兼担する岡山大学「国吉康雄記念・美術教育研究と地域創生寄付講座」の企画協力により、茨城県近代美術館にて開催された「国吉康雄展―安眠を妨げる夢―」(令和5年10月24日~12月24日)において、百閒と同時期に同じ高等小学校に学んだ国吉康雄が使用したと思われる毛筆画教科書等の資料を展示した。また、関連イベントとして講演「明治の美術教育は国吉の画業にどう影響したか」(令和5年11月25日)を行い、ワークショップ「墨で模写する:国吉も受けた明治期の美術教育を再現する」(同年11月26日)を実施し、約30名(中学校美術部生徒15名を含む)の参加を得た。 以上の研究実績について、令和6年3月末の第46回美術科教育学会弘前大会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は、画像データベースによって近代日本の図画手工教科書を一覧できるようにし、児童生徒から社会人まで、より多くの人々がその豊かな世界に気軽に触れ、イメージソースとして活用するとともに、「見る」「描く」という体験に踏み込めるようにすることを目指している。昨年度までに、美術館等の社会教育施設における展示やワークショップを実現してきた。その一方で、学校教育に関連付けた活動にはまだ取り組めていない。 実施できたワークショップ等においても、教科書群が提示する森羅万象の図像を「見る」ことと、それらを見て「描く」こと(臨画)を試みるにとどまっており、手本の図像ではなくモチーフとなった対象の実物を直接見て描く(写生)という視覚体験の提供には至っていない。 また、明治期の図画科の内容は主に自在画と用器画とに分類されるが、新規データの追加に関しては、博物図や絵画的表現に近い図像からなる自在画教科書が中心となっており、用器画や図学を扱った教科書に関しては収集が遅れている。同様に手工教科書関係についても、絶対数が少ないにもかかわらず収録データ数が伸びていない。 進捗が遅れた最も大きな理由は、研究分担者山口健二が急病で逝去したことにより、活動を中断した期間があったことである。故人の遺志を継いで、本データベースを活用した教育プログラムの企画立案を研究代表者が分担し、本研究を続けることを決定した。
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今後の研究の推進方策 |
1.データベースの拡充について 現在公開中の近代日本図画手工教科書データベースは、6月以降にOSの更新と新規データの導入を予定している。これにあわせて既存データについてもExcelファイルの確認・修正作業を行うことで、キーワード検索に際して見られる不具合が解消できると考えられる。また、初等・中等・高等教育のいずれに向けた教科書なのかをデータに盛り込み、初等・中等教育における図画科・手工科の内容が、高等教育における各科の学習や教養主義とどのように関連するかに注目し、一般教育としての美術教育が美術概念の受容や定着において果たした役割について考察する。
2.教育プログラム開発について 社会教育と学校教育の二部門のうち、後者の取り組みに力を入れ、特に教員養成課程での実践を試みる。現在の図工・美術科教育においては、大正期の自由画教育運動以前の図画手工教科書は手本の模写(臨画)・模作のみを意図したものと捉えられがちである。しかし、「凡例」や「序言」、指導書等を確認すると、臨画で学んだ図像を組み合わせることや、実物を見て描くこと(写生)による新たな作品の生成を奨励する事例も少なくない。これらを詳しく分析し、図像や実物を「見る」ことと「描く」ことの関係について再検討する。これにより本データベースを活用した教育プログラムの目的を明確にするとともに、当時の美術教育が担っていた意義を捉え直せるようなプログラムを開発する。
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