研究課題/領域番号 |
23K22280
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補助金の研究課題番号 |
22H01009 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
森田 愛子 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (20403909)
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研究分担者 |
間瀬 茂夫 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (90274274)
草原 和博 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (40294269)
木下 博義 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (20556469)
影山 和也 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (60432283)
松宮 奈賀子 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (70342326)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
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キーワード | 教科書 / 視線計測 / 教科 / マルチメディア学習 / 専門性 / 中学生 / 専門家 / 教師 |
研究開始時の研究の概要 |
「学習者が教科書をどのように見ているか」については,実は十分なエビデンスがない。申請者らは,大学生の学習者でも,教科書を見ているときに注意を向けているエリアが専門家と異なることを実証してきた。本研究では,① 各教科の教科書において,中学生が教科書を見る際の視線計測を行い,専門家とのクリティカルなギャップを特定する。② 心理学的な読解理論・デザイン原則に基づいた「ギャップを埋める視線誘導デザイン」の有効性を検証する。それらの理論・原則は,デジタル教科書の柔軟性を最大限活用することで実現可能なものであり,デジタルの強みを生かした教科書開発の強力なエビデンスとなることが見込まれる。
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研究実績の概要 |
本研究のテーマは,「学習者が教科書をどのように見ているか」を測定し,「どこに専門家とのギャップがあるか」を特定することである。本研究の大きな目的は次の2つである:① 各教科の教科書において,学習者が教科書を見る際の視線計測を行い,専門家とのクリティカルなギャップを特定する。② 心理学的な読解理論・デザイン原則に基づいた「ギャップを埋める視線誘導デザイン」の有効性を検証する。 2年目にあたる2023年度に実施した実験は,主に数学教科書を用いた実験であった。数学教科書の場合,他教科と異なり,各ページに問題が配置され,関連する図表が配置されるとともに,Decorative pictureが配置されることが多いという特徴がある。それらを,数学または数学教育に関する専門性の高い大学生と低い大学生がどのように参照しているかを比較した。実験刺激として,中学校1年生と2年生の数学の教科書から,関数の単元の見開き1ページの刺激を4枚使用した。実験参加者は,呈示されたページを読んだ後,関連する問題に解答した。読解中,解答中の眼球運動を測定した。教科書内の文章,グラフなどの図表,Decorative Pictureにどの程度注意を配分するかを,専門性高低群で比較したところ,文章や図表については群間に差がみられなかった。しかし,専門性の低い参加者は,高い参加者に比べ,内容理解に関係のないDecorative Pictureにより長く視線を停留させていることがわかった。マルチメディア教材におけるDecorative Pictureの功罪については議論が一貫しておらず,本研究は,その位置づけが専門性によって異なることを実証する結果となった。 興味深いことに,この結果は,図表や文章への注意配分が専門性によって異なるという,地理・公民教科書を用いた結果とも異なっていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究チームでは,これまで,社会や理科,国語教科書を用い,専門性による見方の違いを実証してきた。本研究の3年計画のうち1年目である2022年度に,各教科の教科書の特徴と眼球運動の関連について,より精密なデータが必要であることが明らかになったことを踏まえ,各ページに問題が配置され,関連する図表が配置されるとともに,問題に関してはDecorative pictureが配置されることが多い数学教科書を用いた実験を実施し,他教科と比較を行う計画であった。 進捗している点は,次の3点である。第1に,数学の教科書刺激の実験の実施,分析を行った。第2に,さらに厳密に専門性の影響を検証するため,既有知識を実験的に操作する実験計画立案,刺激作成を実施した。第3に,教科書のどのパーツへの注意配分に専門性の影響が出やすいかをより厳密に統制する実験計画立案を実施した。 一方で,遅れている点は,次の2点である。第1に,全教科での教科書刺激検討には至らなかった。第2に,中学生を対象とした実験が困難であり,教師を対象とした実験の参加者も少数にとどまった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究チームのこれまでの研究成果により,特に社会・数学の教科書で,専門家と学習者の見方に特徴が現れることが明らかになってきた。そこで,本年度は,社会・数学の教科書を用いて,さらに厳密に,専門性の影響を比較検討する。社会科教科書には,フォーマットが共通しているという大きな特徴がある。そして数学教科書には,各ページに問題が配置され,関連する図表が配置されるとともに,問題に関してはDecorative pictureが配置されることが多いという特徴がある。具体的には,既有知識を実験的に操作した実験,図表やDecorative pictureの配置をより厳密に統制した刺激を用いた実験のデータも取得することで,専門性の影響が教科書のどのパーツへの注意配分に現れやすいかを検討する。これまでの実験から,フォーマットの決まっている社会では,全般的に図表とテキストへの注意配分が専門性によって異なっており,数学では,Decorative Pictureへの注意配分が専門性によって異なることが予測される。学習者であっても,既有知識がある内容であれば専門家の見方に近づくのか,を弁別できる。後半では,社会や数学教科書を主とした実験結果に基づき,国語・英語・理科・社会・数学のそれぞれの観点から,専門性の影響について分析を行う。
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