研究課題/領域番号 |
23K22323
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補助金の研究課題番号 |
22H01052 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09070:教育工学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
松本 顕 順天堂大学, 医学部, 教授 (40229539)
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研究分担者 |
石原 量 順天堂大学, 医学部, 准教授 (30633507)
和田 麻理 順天堂大学, 医学部, 准教授 (60420080)
矢田 雅哉 順天堂大学, 医学部, 助教 (60725406)
枝松 裕紀 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (70335438)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2022年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
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キーワード | 自然科学系実習科目 / デジタルトランスフォーメーション / インタラクティブ / ゲーミフィケーション / ブレンド型教育 / 自然科学系実験実習 / デジタルトランスフォーメション |
研究開始時の研究の概要 |
教育分野のデジタルトランスフォーメーションは、教育の質向上の面だけでなく、諸事情により登校困難あるいは機器操作に困難を伴う障がいをもつ学生の理系実習(インクルーシブ教育)への活用の面からも喫緊の課題である。しかし、実験機器、実験動物、試薬の使用が必須の理系高等教育の実験実習科目では効果的なデジタル教材の作成/利用ノウハウはいまだ確立されていない。そこで、本研究では学習要素の異なる3つの実験実習を題材にそのデジタル化ノウハウを探求する。また自発的な学習意欲の向上に資するゲーミフィケーション活用の可能性を探る。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は次世代型3D-CG教材の作成/利用ノウハウを体系化することである。このために、学習する要素やデジタル化の難易度が異なると予想される「顕微鏡観察」「カエルの解剖」「化学の定性分析」の3つの実習内容を選定した。これらのデジタル化過程で、実習を構成する個々の学習要素のデジタル化の適・不適を分類し、対面実習で重点教育すべきものを選別して、デジタル教材の作成/利用ノウハウの体系化を行うことをめざす。また、ゲーム性の組み込みが、取り組み意欲や学習効率に与える影響も調査することとした。 本年度は以下の3つの理由から「顕微鏡観察」コンテンツの作成に注力した。まず、本研究の実施以前から「顕微鏡観察」の3D-CGプロトタイプアプリの作成に着手しており、初年度の着手として取り組み易かったことが挙げられる。2つめの理由は、顕微鏡操作はメカニカルな機器操作が主体で、他の2つの実習内容と比較すると、インタラクティブな3D-CGの作成が容易と予測されたことである。3つ目として、操作の正確性や迅速性、標本同定などが、比較的ゲーミフィケーションに向くことがあった。 まずはプロトタイプコンテンツの完成をめざし、ついで、学生被験者を募って試用アンケートに基づく改良を行った。学生被験者は8名で、視覚的なリアルさを求める意見と、コントローラーによる操作性の向上を求める意見が多かった。特に前者においては、顕微鏡だけではなく、背景(実習室や実験机)のリアルさを求める意見も多く、強い没入感が学習効果を高める可能性が示唆された。これは当初予想していなかった結果であった。 アンケート結果を反映しつつ段階的に3種類のコンテンツを作成し、ゲーム要素を組み込んだ新規コンテンツの作成にも着手した。これとは別に残る2つの実習についても、コンテンツシナリオの作成、および、一部の機器や実験対象のCG化に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標は、理系実習のデジタルコンテンツ化の技術的な基盤作りと、学生被験者からの試用アンケート調査の体制作りであった。「顕微鏡観察」コンテンツにおいては、試用アンケートに基づき段階的に改訂した3種類を作成できた。また、他の2つの実習についても、コンテンツシナリオの作成、および、一部の機器や実験対象のCG化に着手し、ほぼ計画通りの進行と評価できる。 ただし、当初の見込みとは異なる状況が生じ、次年度以降の研究計画の一部は変更せざるを得なくなった。それは、学生被験者への応募がほとんどなかったことである。さまざまな方法で周知と被験者募集を行ったが、被験者は8名のみに留まった。当初の計画では、初年度は顕微鏡観察コンテンツの作成に注力するものの、次年度からはゲーム要素を組み込んだコンテンツを作成し、3D-CGによる学習効果だけでなく、ゲーミフィケーションの有無による学習効果も同時に測定する予定であった。ところが、VRコンテンツへの学生の関心は予想外に低く、学習条件を細分化してランダム化比較試験を実施可能なほどの被験者数確保は困難と判明した。一方で、被験者からは詳細で信頼性が高い試用アンケートが得られ、コンテンツ改良には有益であった。視覚的なリアルさ以外に、機器操作に関する触覚的なリアルさを求める意見が多かった。次年度以降に取り組む予定のゲーミフィケーション化に関しても前向きで詳細な意見を収集することが出来た。 予想外の結果として、個人体験型のVRコンテンツであっても、学生は友人同士で隣り合って体験することを好み、学習意欲や学習効率に上昇がみられることを示唆すると思われる結果を得ている。VR教材による個別最適化学習と協働学習を比較する上で非常に興味深い。
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今後の研究の推進方策 |
「顕微鏡観察」に関しては、2年度目以降も引き続きゲーミフィケーションの充実に注力する。被験者からの提案に基づき、課題達成のタイムトライアルや顕微鏡操作の正確性などを競ってランキング形式で順位表示する機能を実装予定である。また、初年度の被験者学生に加えて、新入生から新たな被験者を募集し、作成済の各種バーチャルコンテンツによる顕微鏡操作技能に対する学習効果を測定予定である。 ただし、VRコンテンツに対する学生の関心は非常に低いと予想される。これは、VRコンテンツを用いた教育の普及や発展に対して不安を投げかけ、本研究の実施意義にも影響を与える。そこで、当初の計画に加えて、「学生がVRコンテンツに関心をもたない理由」についてアンケート調査を行い、現状の把握と対応策の検討も行うことを新たに計画している。 以上と並行して、2年度目は「カエルの解剖」コンテンツの構築・改訂作業に主に取り組む。すでにカエルの外形および内部構造の3Dモデリングに着手しており、これらを組み合わせた実習コンテンツの作成が主要作業となる。顕微鏡実習とは異なり、いかに生き物らしさを3D-CGで表現し、解剖器を使っての解剖手技をリアルに再現できるかが重要と予想している。上記のように被験者の増員を予定しており、試用コメントを参考にしながら、ゲーミフィケーション・コンテンツも作成予定である。まずは、カエルの解剖手技や臓器名称などをクイズ形式で答えるコンテンツを実装予定である。また、3年度目への準備として「化学の定量分析」コンテンツ用の機器器具、試薬、反応アニメーションなどのCG化も行う予定である
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