研究課題/領域番号 |
23K22346
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補助金の研究課題番号 |
22H01075 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10010:社会心理学関連
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研究機関 | 京都大学 (2024) 名古屋大学 (2022-2023) |
研究代表者 |
上出 寛子 京都大学, 法学研究科, 特定准教授 (90585960)
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研究分担者 |
坂田 信裕 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任教授 (50362132)
笠木 雅史 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (60713576)
小山 虎 山口大学, 時間学研究所, 准教授 (80600519)
新井 健生 電気通信大学, 脳・医工学研究センター, 客員教授 (90301275)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2022年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
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キーワード | プライバシー / 高度情報化社会 / ロボット / 個人情報 / 自己存在の意義 / 擬人化 / 人間の尊厳 / ヒューマン・ロボット・インタラクション |
研究開始時の研究の概要 |
プライバシー概念について、心理学、工学、科学哲学の視点から問題点を精査し、その上で一般ユーザの視点に立った調査から、プライバシー懸念の要素を明らかにする。調査で明らかとなったプライバシーの要素について、ロボットを用いたインタラクション実験を行い、プライバシー懸念のあり方について実証的に検討する。調査、実験の結果を総合的に考察し、先進的な技術とプライバシーの関係を理解するための学際的な理論構築を行う。
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研究実績の概要 |
これまでの調査で明らかとなった、ロボットとのインタラクションで懸念される①個人データ保護への脅威レベルの高低と、②自己の存在価値への脅威レベルの高低の2つの要因を実験的に操作し、これらの評価に影響するかを探索的に検討した。79名が実験に参加し、そのうちロボットが故障した4名を除く75名(男性37名, 平均年齢27.52, SD=6.78,range=20-39)を分析対象とした。本実験ではSoftbank社のPepperを用いた。実験条件は条件①個人データ保護への脅威レベルの高低と、条件②自己の存在価値への脅威レベルの高低の2×2の4条件であり、参加者間要因とした。 データ脅威条件①の操作は、脅威が高い条件ではデータ漏洩の可能性があるロボットであることを伝え、脅威が低い条件ではデータ漏洩の可能性がないロボットであることを伝えた。存在脅威条件②の操作では、脅威が高い条件では、参加者の意見に対してロボットが論理的な反対意見をのべ、自分の考えや立場がロボットにより脅かされる状況を作った。一方、脅威が低い条件では、参加者の意見に対してロボットが同意しロボットが脅威とならない状況とした。インタラクションの前後にアンケート調査を実施した。 実験の結果、データ漏洩の脅威が高い条件の方が低い条件よりも、データ保護への脅威の程度を高く感じていた。存在脅威条件の主効果と、交互作用は非有意であった。また、自己の存在価値への脅威の程度については、いずれの条件の主効果も、交互作用も非優位であったが、擬人化の程度に違いがあることが明らかとなった。 以上のことから、実際のインタラクション実験においても、①個人データ保護への脅威レベルについて異なる評価をすることが確認された。②自己の存在価値への脅威レベルについては、有意に存在への脅威を感じることは示されなかったが、人間らしさの評価に影響していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りロボットを用いたインタラクション実験を実施できた。ロボットの準備と参加者の募集も計画通りに実施することができ、予定していたデータの収集を終えることができた。また、実験で得られたデータの整理と結果のまとめも順調に進捗しており、来年度に向けて成果発表をする準備ができている。研究分担者との研究会と成果に関するディスカッションも予定の頻度で実施しており、概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
ロボットとの関わりの中で感じるプライバシーの要因のうち、①個人データ保護への脅威レベルの高低は実験的に操作することで、実際にその評価に影響があることが確認できた。一方で、②自己の存在価値への脅威レベルについては、意見に対する同意・反論では再現できないことが明らかとなったと言える。ただし、人間らしさの評価に対しては影響を与えることが示されたことから、この結果に基づきながら、自己の存在価値への脅威となるロボットの振る舞いや認知的インタラクションとはどのような内容になるのかについて、研究者間で議論し理論的に考察する。
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