研究課題/領域番号 |
23K22348
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補助金の研究課題番号 |
22H01077 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10010:社会心理学関連
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
大江 朋子 帝京大学, 文学部, 教授 (30422372)
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研究分担者 |
高田 剛志 帝京大学, 先端総合研究機構, 助教 (00908858)
小川 充洋 帝京大学, 理工学部, 教授 (30322085)
古徳 純一 帝京大学, 医療技術学部, 教授 (70450195)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2025年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
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キーワード | 体温調節システム / 社会的反応 / 生理的反応 / VR(virtual reality) / 深部温 / 皮膚表面温 / 攻撃 / 親和 / バーチャルリアリティ |
研究開始時の研究の概要 |
人は自らの身体と環境の状態を監視し,その時々で処理した情報を瞬時に統合させている。この情報統合において身体や環境の温度が社会的反応を導く可能性や,それに体温調節システムが関与している可能性はすでに論じられてきたものの,体温調節システムが社会的反応に影響するかは直接検討されないままであった。本研究では,身体の深部温や皮膚表面温の測定によりこれを可能にするとともに,温度情報が統合される過程で情報処理モード(攻撃と親和)の切り替えが生じるとするモデルを提案し,唾液中ホルモン(テストステロン,オキシトシン)などの生理的反応の測定とVR技術を用いた実験を通してモデルの実証を試みる。
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研究実績の概要 |
本研究では,体温調節システムが社会的反応に影響する過程を,生理的反応の測定を通して検討する。2022年度には,バーチャルリアリティ(以下VRとする)空間での実験課題を用いて,異なる環境温での生理的反応と社会的反応との関係を調べた。実験では,温度制御された2つの実験ブース(低温と高温)が用意され,参加者は先ず片方のブースに入ってVR課題を行った。最初のブースで課題を終えた参加者は,ブースの外で休憩した後,環境温の異なる別のブースに入って同様の課題を行った。課題実行中には,VR空間での参加者の行動に加え,深部温や皮膚表面温などの生理的反応が記録された(COVID-19の感染状況を考慮し,唾液採取を取りやめた)。 深部温への影響を分析した結果,男性より女性で,高温より低温のブースで深部温が高く,予測通りの安定した結果が得られた。また,ブース内で課題の練習を始めてから本番をするまでの深部温変化を分析した結果,先に入った高温ブースでは,他の温度環境(低温ブース,及び,後に入った高温ブース)に比べて深部温が上昇していた。VR課題で攻撃を求められるシーンでの攻撃回数は,本番までに深部温が高くなるほど多かった。ただし,この効果はブース温と性別の組み合わせによる効果(交互作用効果)を上回るものではなかった。体温調節においては深部温の維持が重要であり,それに関連する身体反応の制御は皮膚表面温に反映される可能性が高いと考えられるため,皮膚表面温との関係をあわせて分析する必要がある。 皮膚表面温の記録にはサーモグラフィーで撮影した熱画像を用いているが,2022年度には,VR機材を装着して動く参加者の顔面皮膚温を熱画像から自動抽出するために,機械学習方式のアルゴリズムを用いた抽出方法の開発を進めた。並行して,参加者の親和的反応を引き出すことのできるVR課題を企画し,その視聴覚空間の構築を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
VR課題実行中の参加者の行動,深部温,皮膚表面温などを適切に記録することができ,また,参加者の行動に環境温や深部温が影響する可能性を含め,次年度の学会発表につながる成果を得ることができた。COVID-19の感染状況を考慮して唾液採取の手続きを割愛したこと,また,顔面皮膚温などの生理反応の分析用データセットの作成に時間がかかることは,研究開始当初から予想されていたことである。唾液採取の手続きについては,データを収集することはできなかったものの,測定するための準備は2022年度に整っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は次のように研究を推進する予定である。 (a)研究成果の発信:実験課題実行中の実験参加者の身体深部温,皮膚表面温,光電容積脈波,社会的な判断や行動を測定したデータの分析結果をまとめ,その成果を学会で発表する。また,分析結果の総合的な解釈を進めるとともに論文投稿を目指す。 (b)親和の情報処理モードに焦点を当てた実験の実施:本研究課題では,攻撃と親和の情報処理モードを引き出すと考えられる状況を構築するために,VR技術を用いた実験課題を作成している。2023年度には,親和の情報処理モードを引き出すと考えられる課題を用いた実験を実施し,課題実行中の実験参加者の身体深部温,皮膚表面温,社会的な判断や行動,生理的反応を測定する。生理的反応として測定するのはコルチゾールやオキシトシンの濃度である。この実験で一定の成果が得られた場合には,結果の安定性を確認するための実験を行い,一定の成果が得られなかった場合には,開発中の他の課題を用いて実験を行う。 (c)VR実験課題の企画と実装:本研究課題では,その時々の状況に応じた情報処理モード(攻撃と親和)の切り替えが個人内で生じる過程をとらえるため,各情報処理モードを引き出しやすい社会的状況をできるだけ多く用意する必要がある。本年度も引き続き,各情報処理モードを 引き出しやすい社会的状況を組み込んだVR実験課題の企画と実装を進めていく。
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