研究課題/領域番号 |
23K22353
|
補助金の研究課題番号 |
22H01082 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10020:教育心理学関連
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中島 健一郎 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (20587480)
|
研究分担者 |
木下 博義 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (20556469)
山中 真悟 福山市立大学, 教育学部, 准教授 (10845465)
難波 修史 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (20845961)
神原 広平 同志社大学, 心理学部, 助教 (70881259)
清水 陽香 西九州大学短期大学部, その他部局等, 講師(移行) (30851414)
重松 潤 富山大学, 学術研究部人文科学系, 講師 (20910227)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
16,250千円 (直接経費: 12,500千円、間接経費: 3,750千円)
2025年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
|
キーワード | 生徒理解 / 批判的思考 / 対人関係 / 授業研究 |
研究開始時の研究の概要 |
本事業の研究知見を重ねる中で、申請当初の研究計画から変更が生じている。より意義のある研究成果を社会に還元するためにも、この変更は必要である。 直近の解決すべき問いは「批判的思考の能力が高い個人はなぜ他者理解の正確なのか」「対集団の他者理解の正確さをどのように測定するべきか」である。この問いに答えるための第一歩として、2つの研究を優先して実施する。ひとつは、まなざしから心を読むテストを題材に半構造化面接法による質的研究とテスト実施時の視線計測を組み合わせた研究である。もうひとつは授業時を模したプレゼンテーションを題材に、話者による聞き手の理解度推測に着目した集団実験である。
|
研究実績の概要 |
教師は生徒一人ひとりを理解することが求められる。それを反映するように個としての生徒理解に着目した研究は多い。しかし実際の学校教育現場では、授業や行事などの集団活動が多く、複数の生徒を同時に理解する「対集団」の生徒理解が求められる。では、このような生徒理解は何によってどのように促されるのだろうか。そして、それは生徒にいかなる恩恵をもたらすのだろうか。昨年度までは批判的思考の能力に着目し、まずはひとつめの問いに答えることを目指して集団実験と調査・シミュレーション研究を進めてきた。 本年度の研究実績は主に次の4点である。1点目は昨年度までの研究結果を踏まえ、日本心理学会大会で発表を行った(難波他,2023)。ここではOverrapping(Pastore & Calcagni, 2019)が積率・順位相関係数よりも「対集団」の生徒理解の正確さの指標として有用な可能性を報告した。2点目はOverrappingに代わる別指標の提案である。Overrappingには、特定のデータパターンの時にその正確さを過小推定するという限界点がある。集団実験データとシミュレーションを用いた解析により、別指標にはこの限界点があてはまらないだけではなく、Overrappingと同様に積率・順位相関係数よりも理解度推測の正確さの指標として有用なことが示された。この成果について論文化し、現在国際誌で審査中である。3点目はこの別指標の妥当化を目的とした集団実験の準備である。授業時を模したプレゼンテーションを題材に、話し手による聞き手の理解度推測に着目した予備実験を実施し、実験手続きの大幅な修正は必要ないことを確認した。4点目は批判的思考の能力とまなざしから心を読むテストの成績との関連についての追加研究である。二次データ解析と面接研究を行い、両者の関連を考察するための追加情報を収集した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本事業の研究知見を重ねる中で、申請当初の研究計画から変更が生じている。たとえば、本年度当初は高校教員を対象に、大学入学共通テストの受験者の回答パターンを理解度推測の対象にした調査研究を行う計画を立てていた。しかし、「対集団」の理解度推測の指標として何を用いるべきか、という問いは本事業の根幹を成すものであり、そのための研究展開を優先した。より意義のある研究成果を社会に還元するためにも、この変更は必要だったと考えているが、現時点で「当初の計画以上に進展している」と評価することはできない。 しかし、研究実績の概要で述べたように、理解度推測の指標についての研究と成果発表は着実に進んでおり、その妥当化のための集団実験の準備も進んでいる。さらに、批判的思考の能力とまなざしから心を読むテストの成績との関連について、二次データ解析と面接研究を行っている。面接研究については関連する別プロジェクトのシンポジウムで途中経過が報告されるにとどまるものの、二次データ解析の成果については国際学会大会で発表されており(Komasu et al., 2024)、国内誌に英語論文として投稿する準備も進んでいる。これらのことから、当初の計画から変更があったとはいえ「おおおむね順調に進展している」と評価している。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度までの研究成果を踏まえ、直近の解決すべき問いは「対集団の他者理解の正確さをどのように測定するべきか」「批判的思考の能力が高い個人はなぜ他者理解が正確なのか」である。これらの問いに答えるための第一歩として、2024年度は次の3点に取り組む計画である。 1点目は「対集団」の理解度推測の正確さに関する指標の妥当化を目的とした実験研究である。2023年度の予備実験の手続きを用いて、より大きなサンプルサイズでの追加検討を予定している。2点目は、批判的思考の能力とまなざしから心を読むテストの成績との関連についての実験・面接研究である。批判的思考が高い個人ほど、このテスト成績が良いという関連は対象者やデータ収集方法を変更しても頑健に認められる。教職志望学生を含む大学生を対象とした半構造化面接法による質的研究と、推測時の視線計測実験を組み合わせた研究を行い、この関連がなぜ認められるのか、その説明のための追加データを収集する。3点目は、まなざしから心を読むテストの成績と授業スキルの関連に関する、現職教員を対象にした調査研究である。教師は「対集団」と「対個人」の生徒理解の両方が求められることから、上述のテストを用いた「対個人」の生徒理解に関する研究も同時に進めることで、より意義のある研究成果を社会に還元していくことを目指す。
|