研究課題/領域番号 |
23K22378
|
補助金の研究課題番号 |
22H01107 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10040:実験心理学関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
玉置 應子 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 理研白眉研究チームリーダー (20586276)
|
研究分担者 |
有竹 清夏 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (50415577)
上野 賢一 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 技師 (90332337)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
|
キーワード | 睡眠 / 学習 / 記憶 / 学習の転移 / 脳の可塑性 / 転移 |
研究開始時の研究の概要 |
ある課題における学習が、異なる課題の学習を促進するという現象が学習の転移として知られている。学習の転移は、ヒトが新しい場面や状況に対して適応的に生きていく上で必要不可欠な機能である。それにも関わらずそのメカニズムは全く分かっていない。学習の転移には、睡眠中のプロセスが関与する可能性が高い。研究代表者は、ノンレム睡眠時の脳の可塑性(変化のしやすさ)とレム睡眠時の結合性(機能的な結びつき)が学習に変化をもたらすという仮説を提案した。本研究では、学習の転移における睡眠時の神経基盤を明らかにし、この仮説を検証することを目的とする。
|
研究実績の概要 |
睡眠後に、運動技能や見え方が向上することが報告され、単一の学習における睡眠の役割については代表者の研究を含めて顕著な成果が挙げられている(Tamaki et al., 2019, J. Vis)。一方で、ある課題における学習が異なる課題の学習を促進する学習の転移という現象が知られている。例えば、運動技能の学習が、単語の順序に関する記憶を促進することが報告されている(Mosha et al., 2016)。学習の転移は私たちが新しい場面・状況に対して適応的に生きていく上で必要不可欠な機能であるにも関わらず、そのメカニズムは全く分かっていない。学習の転移において睡眠時の脳活動が重要な役割を果たす可能性がある。代表者は、ノンレム睡眠時に脳の可塑性(変化のしやすさ)が上がり、レム睡眠時に複数の脳領域間の結合性(機能的な結びつき)が高まることを提案した(Tamaki et al., 2020, Nat. Neurosci.; Tamaki et al., 2020, PNAS)。睡眠中に特有のこれらのプロセスが学習の転移において役割を果たす可能性がある。本提案研究では、ヒトの睡眠中の脳の可塑性変動を詳細に捉えることで、学習の転移における睡眠の役割とその神経基盤を解明することを目的とする。 今年度は主に睡眠ポリグラフと行動実験を実施し、学習の転移においてノンレム・レム睡眠の両方が必要であるかを検討した。学習課題としては、視覚記憶課題(視覚課題)と運動学習課題(運動課題)を用いた。視覚課題と運動課題の訓練の間に、高次の共通ルールを設け、睡眠後のパフォーマンスの変化を検討した。その結果、異なる課題間で高次の共通のルールが存在している際に、ノンレム睡眠とレム睡眠の両方が睡眠に含まれている場合にのみ、運動技能課題は飛躍的に向上することがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学習の転移には、睡眠が必要不可欠である可能性が高い。昨年度は第一歩として、主として行動実験を中心に実施し、学習の転移において睡眠の期間が必要であるかを検討した。今年度は次のとおり、多チャンネル脳波計を用いた睡眠ポリグラフと行動実験を組み合わせ、ノンレム・レム睡眠の役割を検討するとともに、脳波データに対してソース推定・コヒーレンス解析を適用し、ノンレム・レム睡眠中の脳ネットワークの変容と学習転移の関係を検討した。本実験では、2種類の課題を用いた。1つは運動課題、もう1つは視覚課題とした。まず課題のトレーニングを行い、90分の仮眠をはさんで、仮眠後に課題の再テストを実施した。運動課題におけるパフォーマンスの変化を検討した。その結果、異なる課題間で高次の共通のルールが存在する群において、かつレム睡眠が生じていた場合にのみ、運動課題は飛躍的に向上することがわかった。さらに高次の共通ルールが存在する場合には、存在しない場合と比較し、ノンレム睡眠中には脳ネットワークのセグレゲーションが生じ、レム睡眠中にはインテグレーションが生じ、これらが睡眠後のパフォーマンス向上に関連することがわかった。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までに実施した複数の実験からは、睡眠中に異なる学習が相互作用すること、ノンレム・レム睡眠中の脳ネットワークの関与、そしてレム睡眠が必要不可欠であることが示唆された。今後は学習の転移のメカニズムを明らかにするために、申請者が開発したMRSと睡眠ポリグラフの同時計測実験を立ち上げ、睡眠中の神経伝達物質の濃度を計測することにより、学習関連脳領域における興奮抑制バランスの変化を検討する。
|