研究課題/領域番号 |
23K22406
|
補助金の研究課題番号 |
22H01135 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
水藤 寛 東北大学, 材料科学高等研究所, 教授 (10302530)
|
研究分担者 |
國川 慶太 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 講師 (10813165)
冨永 循哉 東北大学, 医学系研究科, 講師 (20375067)
宇田 智紀 富山大学, 学術研究部理学系, 特命講師 (90812272)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2024年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2023年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2022年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
|
キーワード | 平均曲率流 / 呼吸器疾患 / 最適輸送 / パーシステントホモロジー / グラフマッチング / 医用画像 / グラフ構造 / グラフ間距離 / 数理モデル / 曲率流 / 離散幾何 |
研究開始時の研究の概要 |
呼吸器系の疾患については高精細CT画像によって多様な情報を得ることができるようになってきており、現代の呼吸器疾患診断では肺機能検査等からの情報と合わせて重要なものとなっている。しかし断層画像の集合から3次元的な情報を把握するには経験の蓄積が必要であり、臨床現場で診断にあたる医師には大きな負担がかかることになっている。このような状況に対処し、有効な数理科学的ツール群を提供することが、本研究の目的である。
|
研究実績の概要 |
呼吸器系に発生する疾患については、近年進歩を続けてきたCT画像によって多様な情報を得られ、その中でも特に気管支の拡張や蛇行などを特徴とする病態の診断では肺CT画像から得られる幾何情報が重要となっているが、その解析と評価は専門医の人手と経験に依存しているものが多い。本研究では曲率流、離散幾何、グラフ理論、最適輸送理論、流体解析、パーシステントホモロジーなど様々な数理科学の方法論を結集し、CT画像からの幾何情報やトポロジカルな情報の抽出と評価に至るまで、呼吸器系疾患に対する数理的ツールの総合構築とそれに触発された数理科学自身の深化を目指している。 2022年度は研究開始初年度にあたり、まずは対象とする気管支形状に関する臨床データの処理を進めた。具体的には、研究分担者富永からデータの提供を受け、個々の症例の吟味を通して、本研究の中で今後取り扱ってゆくべき課題を明確にすることから始めた。本研究課題では、[A] 超高解像度CT 画像からの高精度気管支セグメンテーション:曲率流、[B] CT 画像フィルタリング:パーシステントホモロジー、[C] 気管支の走向を評価する幾何学的指標の設定:離散幾何、[D] 異なる病期の気管支構造を比較する木構造マッピング:最適輸送理論、[E] マルチスケール気流解析:流体数値解析、の5つのサブテーマを設定している。その中でも特に中心的な課題となるサブテーマ[A]高精度気管支セグメンテーションのための曲率流の定式化を進め、その数学的基盤を明確にすると共に、実装につながる基礎的研究を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
[A] 超高解像度CT 画像からの高精度気管支セグメンテーション:気管中央部に設定した初期領域を、医用画像CT値の3次元分布を背景データとする曲率流によって時間発展させるための数理モデルを構築し、その実装を開始した。その際、気管支の表面形状の再現度合いを表現するエネルギーと、そのなめらかさを保証するエネルギーの比率を適切に設定し、複雑な形状を再現するための手法の検討を進めた。 [B] CT 画像フィルタリング:パーシステントホモロジーの技術を利用して、肺野画像を病態によって分別し、気管支領域抽出の前処理とする手法の調査を開始した。 [C] 気管支の走向を評価する幾何学的指標の設定:本サブテーマでは、気管支走向の病態学的な相違を正しく表現する幾何学的指標の構築を目指して、先行研究において提案されているroughness, curvinessを適用して病態判別への有効性検討開始した。 [D] 異なる病期の気管支構造を比較する木構造マッピング:異なる病期において解剖学的に同一の分枝を対応付けるアルゴリズムをグラフのトポロジーと最適輸送の両方の観点から再検討し、生体の気管支構造のトポロジーの違いをより現実に即した形で識別するグラフ間距離概念の整備を開始した。 [E] マルチスケール気流解析:本サブテーマは、他のサブテーマの成果を活用することになるため、2023年度以降に開始することとしている。 これらの状況を総合し、当初の計画に沿っておおむね順調に進捗していると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は、先に挙げた5つのサブテーマに沿って進める。 [A] 超高解像度CT画像からの高精度気管支セグメンテーション:2022年度の成果に基づき、具体的に曲率流の数値計算を通して効率よく気管支内腔全域にわたる分布領域を得ることを目指す。数学的理論の精密化は幾何学を専門とする研究分担者國川(徳島大学)が担当し、具体的な数値計算は研究代表者水藤(東北大学)が行う。解析に用いるデータとしては、東北大学病院から提供される超高解像度CTのデータを使用する。 [B] CT画像前処理:本サブテーマは、この領域の数理技術に精通する分担者宇田と協力者鍛冶が担当し、症例処理と他のサブテーマとの結合については代表者水藤が担当する。 [C] 気管支の走向を評価する幾何学的指標の設定:気管支走向の病態学的な相違を正しく表現する幾何学的指標の構築を進める。本サブテーマには、幅広い数学概念が必要になることが予想されるため、代表者、分担者、協力者全員の議論が必要となる。 [D] 異なる病期の気管支構造を比較する木構造マッピング:同一患者のデータであっても異なる病期においてはCT画像に描出される気管支は変化する。これら異なる病期において解剖学的に同一の分枝を対応付けるアルゴリズムの構築のため、グラフのトポロジーと最適輸送の両方の観点から再検討し、生体の気管支構造のトポロジーの違いをより現実に即した形で識別するグラフ間距離を理論的に整備する。 [E] マルチスケール気流解析:本サブテーマは2023年度から開始する。3次元モデル、1次元モデル、0次元(lumped parameter)モデルを組合せたマルチスケールモデルを用いて呼吸気流の数値シミュレーションを行う。本サブテーマは代表者水藤が担当する。
|