研究課題/領域番号 |
23K22410
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補助金の研究課題番号 |
22H01139 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 東京大学 (2023-2024) 九州大学 (2022) |
研究代表者 |
増田 弘毅 東京大学, 大学院数理科学研究科, 教授 (10380669)
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研究分担者 |
廣瀬 慧 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (40609806)
小池 祐太 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (80745290)
江口 翔一 大阪工業大学, 情報科学部, 講師 (50814018)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2025年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2024年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | 確率過程の統計学 / レヴィノイズ / 極限定理 / 統計的漸近理論 / 非正規分布 |
研究開始時の研究の概要 |
現代のさまざまな場面で顕在化している大規模な個体群経時データに潜む多様な特性量を定量的に推定し、推定、モデル評価、予測といった基礎的な統計解析ツールを提供するための数理基盤を創出する。モデルの確率構造を適切に捉えつつ、非正規レヴィ駆動モデルに対するエルゴード的統計および非エルゴード的統計を効果的に融することで、従来にない推測理論体系を構築する。従属性統計モデリング手法としての正規型および非正規型の擬似尤度解析を相乗的に深化させ、理論と計算のバランスがとれた統計手法を具現化する。
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研究実績の概要 |
非正規ノイズに基づく統計モデリングに関する複数の内容に取り組んだ。(1)スチューデント・レヴィ過程で駆動される回帰モデルにおいて、回帰係数・スケール・自由度の段階的な推定式を考案し、その理論性質を導出した。とくに、パラメータによってサンプリングデザインを調節する必要があることを理論的に示した。段階的推測方式を考案し、推定量のモーメントの収束を導出した。(2) 安定分布ノイズをもつ回帰モデリングにおけるコーシー型擬似尤度解析とそれに基づく簡易推定量の性質を導出した。(3) 分散不均一回帰モデルにおける反復型適合的リッジ推定法の漸近挙動を導出し、数値実験と実データ解析をつうじてその有用性を示した。これら3篇は欧文誌へ投稿済みである (arXiv ID: 2306.16790, 2404.10448, 2402.13642)。 多次元拡散過程のドリフト係数を深層ニューラルネットワークでノンパラメトリック推定する際の汎化誤差について研究した。一般的な非線形最小二乗推定量 (LSE) の汎化誤差に対する評価を導出し、さらにミニマックス最適性のための条件を示した。本結果はレヴィノイズの場合の正規型擬似尤度推測への拡張を示唆する。 欠測を含む時系列データ系列に対して、状態空間モデルの枠組みで欠測確率をモデリングすることでバイアスを小さくするパラメータ推定法と欠測補完手法を提案し、数値計算アルゴリズムを定式化した。提案手法の非正規ノイズ駆動型モデルへの適用は今後の課題である。また、状態空間の特別な場合である、一見無関係な時系列方程式モデルを用いた高次元時系列データの予測問題について、観測ベクトルの各次元を独立に扱うことでカルマンフィルターを高速化するアルゴリズムを提案した。 年度内にメンバーで国際会議・国際研究集会での招待講演を計13件行い、研究成果の広報に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非正規ノイズ過程・系列に基づく統計モデリングの基礎研究について、複数の視点・切り口で研究を進めている。前年度想定していたよりも進展が遅れている内容がある一方で、当初想定していなかった複数の展開方向性を具現化し着手した。前年度より改良を重ねつつ投稿準備中の内容を以下に示す。 Maud Delattre (INRAE) と進めている個体群ダイナミクスの統計モデリング・漸近推測について進展があった。正規分散平均混合分布族に基づく陽な非正規型同時擬似尤度の考案・解析と並行して、新たにランダム効果変数列をプロファイル・アウトすることで、より計算容易な推定方式を定式化できた。数値実験をつうじて、その有用性を確認できている。 突発的変動で汚染された非エルゴード的連続セミマルチンゲール回帰モデルのロバスト推測について、根本的なモデル設定を改訂し、より見通しのよい漸近論の枠組みを構築した。とくに、共変量の異常値混入についても自動的にロバストであることを理論的・数値的に確認できた。これは連続時間確率過程モデルにおける高頻度観測の設定のもとで自然に導出される性質であり、通常の回帰モデルでは表現され得ない現象であると考えている。国内外の複数の会議・研究集会で発表した。 一般の非正規レヴィ過程で駆動される積分型オルンシュタイン・ウーレンベック過程をシステムノイズとする混合効果モデルについて、低頻度・アンバランス観測の場合の同時および段階的正規型擬似最尤推定量の二次確率展開を導出しそれらの差異を示した。本結果は条件付き情報量規準の導出、ならびにランダム効果変数列の従属性モデリングのための基礎となると見込んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
前項で述べた項目を含め進行中の内容の投稿準備を進める。うちいくつかの項目について以下で具体的に触れる。 研究実績の概要で述べた arXiv:2306.16790 の拡張・改良を進める。(1)の結果は、一般の非線形局所安定型確率微分方程式モデルの段階的漸近有効推測法の考案の足掛かりとなると考えている。本内容については、パラメータのランダム化、ひいては従属系列化(時系列化)をつうじて、個体群動態・相互作用動動態モデリングへの展開も合わせて進める。局所安定型擬似尤度の一様裾確率評価についても引き続き研究する。 Alexei Kulikと共同で進めている非線形局所安定型確率微分方程式モデルのトレンド項の絶対偏差推定方式について、駆動局所安定レヴィ過程の確率構造に起因するボトルネックの解消に取り組んでいる。現在ノイズのコンペンセーションに工夫を施すことで陽なコントラスト関数を導くことを検討中であり、この完成を目指す。 研究実績の概要で述べた arXiv:2404.10448 は、非対称レヴィノイズで駆動されるオルンシュタイン・ウーレンベック過程の全パラメータの段階的推測法を定式化するための基盤になる。非エルゴード的な枠組みにおいて、漸近混合正規性をもつ計算容易な推定量の考案およびその理論性質の導出を目指す。
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