研究課題/領域番号 |
23K22411
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補助金の研究課題番号 |
22H01140 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小布施 秀明 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (50415121)
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研究分担者 |
岡本 亮 京都大学, 工学研究科, 准教授 (10435951)
羽田野 直道 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (70251402)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2025年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2022年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
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キーワード | 開放系 / トポロジカル相 / 非エルミート系 / 不規則系 / アンダーソン転移 / 局在・非局在転移 / 量子ウォーク / Lindblad方程式 / 開放量子系 / 非エルミート・トポロジカル相 / 表皮効果 / 非エルミート / アンダーソン局在 / 臨界現象 |
研究開始時の研究の概要 |
近年,開放量子系を現象論的に記述する非エルミート系の物理が急速に発展している.特に,非エルミート・ハミルトニアンに対する対称性とトポロジカル相に関する研究発展により,開放量子系を系統的に研究する土台が整った.以上より,開放不規則系の物理を一層発展させる段階にある.本研究は,上記背景を基に,不純物などの不規則性のある非エルミートな開放量子系における新奇普遍現象および非エルミート系トポロジカル相について理論・実験研究を行うことを目的とする.実験研究では,開放量子系における実験系として現時点で最も優れた系である量子光学系を対象とし,実験研究者と共に実証実験を同時進行で行う.
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研究実績の概要 |
周期境界を課した非エルミート系特有のポイント・ギャップが非自明なトポロジカル相を持つ場合、その系に固定端を課すと全状態が固定端近傍に局在するというバルク・エッジ対応原理が知られています。しかし、接合系に関するバルク・エッジ対応が議論されていなかったため、ポイント・ギャップのトポロジカル数が異なる2つのサブシステムからなる拡張されたHatano-Nelsonモデルを用い、固定端を課した系に対して適用されるNon-Bloch定理を拡張することにより、このスペクトルや固有状態を求めました。その結果、2つのサブシステムのポイント・ギャップ・トポロジカル数の差が非ゼロとなるスペクトル領域に接合系のスペクトルが現れることが分かり、これが接合系のバルク・エッジ対応であることを示しました。以上の結果をPhys. Rev. B誌Letterとして発表しました。 電子相関のある不規則系において生じる絶縁体-超伝導体転移に関する理論と実験の共同研究を行い、新奇スケーリング則を明らかにし、これを研究結果をScientific Report誌で成果発表しました。 2022度に行ったGKLS方程式の緩和スペクトルに対するトポロジカル相についての発展研究としてPT対象なKitaevチェーンに対する研究成果をJPS Conference Proceedingsで報告しました。 時間対称性のある非ユニタリー量子ウォークについての理論研究および実験セットアップ提案や、非ユニタリー量子ウォークにおける局在・非局在状態の実現に向けた実験を行いました。 2023年8月に、開放系に関する国際会議「Physics of Open Systems & Beyond(POS&BYD)」を北海道大学で主催しました。参加者は140名以上(現地約90名、オンライン約50名)、招待講演14件、一般講演28件、ポスター発表26件でした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ポイント・ギャップ・トポロジカル相に対する接合系のバルク・エッジ対応は、一般的な性質であり、多くの系に適用可能な重要な結果を得ました。さらに、サブシステムの分割数を増加させると、極限でHatano-Nelsonモデルになるため、局在・非局在転移をバルク・エッジ対応の観点から理解する展望が開けました。Hatano-Nelsonモデルの局在・非局在転移については、局在状態の証明は可能ですが、非局在状態や臨界点の存在を明確に証明する手法はまだありません。そこで、ポイント・ギャップ・トポロジカル相に対する接合系のバルク・エッジ対応により、非局在状態や臨界点の存在を示すことができれば、非エルミート系における重要なモデルであるHatano-Nelsonモデルの重要な性質を明らかにすることができます。 また、実験グループとの共同研究により、不規則系における絶縁体-超伝導体転移に関する新奇スケーリング則を明らかにし、電子相関のある不規則系に対する新たなアプローチが可能になりました。 さらに、2023年8月には、開放系に関する国際会議「Physics of Open Systems & Beyond(POS&BYD)」を小布施と羽田野を共同主催者として北海道大学で開催し、自身の研究成果を発表するとともに、本分野を国際的に先導する活動を行いました。参加者は140名以上(現地約90名、オンライン約50名)、招待講演14件、一般講演28件、ポスター発表26件です。学生・ポスドクも積極的に質疑応答に参加し、活発な会議となりました。また、この会議の招待講演者のうち数名を講師とするサマースクールを開催し、本分野の入門的な講義を提供することで、研究分野の裾野を広げました。 以上のことより、研究成果、および研究分野の活性化、若手の国際経験の促進という観点から、本研究は当初の計画以上に進展しています。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度までの研究により明らかとなった接合系におけるポイント・ギャップ・トポロジカル相の結果を多分割系に拡張します。多分割の極限がHatano-Nelsonモデルに対応することから、分割数を増加させることにより、Hatano-Nelsonモデルの複素スペクトルと非局在化の原因を非エルミート・トポロジカル相の観点から理解することが可能になると期待できます。分割数が少ない場合は、2分割したときと同様に、Non-Bloch理論を拡張する形で解析的に解を導出します。さらにこの結果を元に、実空間繰り込み群を適用することにより、無限系における振舞いを明らかにします。また、このHatano-Nelsonモデルの臨界点におけるマルチフラクタル性を調べます。 また、古典的なドリフト拡散現象を表すマスター方程式の遷移行列がHatano-Nelsonモデルと類似した構造を有することから、Hatano-Nelsonモデル、および非エルミートトポロジカル相の観点から古典的なドリフト拡散現象について研究を行ないます。とくに、古典的なドリフト拡散現象の定常状態に、Hatano-Nelsonモデルの臨界現象が生じるのかについて明らかにします。 さらに、Hatano-Nelsoモデルと同様な非局在転移を示す非ユニタリー量子ウォークについての実証実験を進めます。 また、Z2の非エルミート・ポイント・ギャップ・トポロジカル相に関する研究を発展させます。特に、エルミート系では、Z2トポロジカル数は、偶数の積層系においてトポロジカルに自明となると考えていますが、非エルミート系ではその判例があることが最近の我々の研究により分かりました。この結果から、エルミート系でも同様の現象が起こりうることが期待されるため、この点を明らかにし、エルミート系自体のZ2トポロジカル相の性質の理解を深めます。
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