研究課題/領域番号 |
23K22415
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補助金の研究課題番号 |
22H01144 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐々 真一 京都大学, 理学研究科, 教授 (30235238)
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研究分担者 |
中川 尚子 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (60311586)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2025年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | ミクロとマクロ / 相共存 / ゆらぎ / 非平衡 / カオス / 非平衡統計力学 / スケール分離 / 結晶成長 |
研究開始時の研究の概要 |
メソスケールの記述がミクロな詳細に依存する。あるいは、マクロスエールの法則をメソスケールの記述の概念を通して再定式化する。このように、異なるスケールの記述が干渉することによって生じる現象を積極的に取り上げ、それらに対して新しい理論を構築する。具体的に、「流れる高分子電解質溶液中の結晶成長」に関する課題と「確率的化学反応系におけるカオス的振る舞い」に関する課題を掲げているが、これらの現象に限定することなく、関係する様々な現象を探索しつつ、スケールの分離ができない状況を理解するための新しい定式化を確立する。
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研究実績の概要 |
非平衡性によって加速する結晶成長の実験結果を理解するために、まずは平衡条件下における相成長におけるゆらぎの影響を系統的に調べた。具体的には、相成長を駆動する力のうちゆらぎに起源をもつエントロピー力がある。このエントロピー力をメソスケールモデルで与える一般的な公式が知られていなかった。そこで、この公式を導出することから始めた。その結果、メソスケールモデルのうちもっとも簡単なモデルAの場合について、場の確率発展方程式から相境界にある界面の発展方程式を導出することにより、エントロピー力を求めることに成功した。空間1次元系の場合には、従来から知られている公式に一致するが、2次元以上の場合については新しい知見である。この公式によると、空間次元が2以上の場合には、エントロピー力が紫外発散することがわかった。つまり、メソスケールモデルが定義されている微視的長さがモデルのカットオフ長として存在するが、マクロな観測量がこのカットオフ長に依存することを示している。実際に、メソスケールモデルの数値計算を行うと、公式どおりに、数値計算の差分メッシュに依存することが確かめられた。このことはエントロピー力をマクロに測定することにより、ミクロとメソの境界長が分かることになる。本研究課題のテーマである「ミクロとマクロが不可分な現象」が早々に発見されたことになる。この成果については、論文としてまとめ、arXivに公開した。 決定論的力学系が示すカオスをメソスケールの確率過程から特徴づける研究については、基礎的な知見を蓄積してきた。当面の目標として、コルモゴロフシナイエントロピーを確率過程で定義することを試みているが、現時点では、特定のモデルについての特定の結果が得られているだけで、一般化する段階で試行錯誤が続いている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で記したように、エントロピー力が関わる課題については、想像以上に進展しているが、確率的化学反応系におけるカオスついてはやや停滞している。二つの平均でかんがえれば、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
エントロピー力については、本来の計画されていたとおりに、非平衡性による影響を調べる。これについて、二つの課題がある。第一の課題では、非平衡条件下でゆらぎが抑制されると期待されることから、修正をうけるエントロピー力を定式化する。具体的に、エントロピー力と相関長の関係において、相関長が非平衡駆動力によって変化することになる。この課題では、既にしられていることを組み合わせるだけであり、具体的な計算は技術的に難しくはない。ただし、その計算を一般化して、ゆらぎの抑制によるエントロピー力変化の公式を見出すことも試行錯誤する。第2の課題では、非平衡条件による、非熱力学的力を創発を理解する。これは界面の運動を一般的に書き下したとき、時間反転対称性が破れたとき、各バルクの差としてあらわせない寄与があることがわかったことに由来する。この寄与が存在することは昨年度に見いだされたが、その具体的な形については何もわかっていない。具体的な例題で計算することから始める。この寄与は大域熱力学の形式における熱力学関数の非相加的寄与と関係すると予想される。その予想についても調べる。 確率的化学反応系におけるカオスについては、昨年度に行った検討を引き続きすすめる。とくに、ミクロからマクロへの情報の流れを定式化する方向は直感的ではあるものの、量が複雑になっていて、実際的な計算可能性・測定可能性が十分ではなかった。その弱点を克服するのが課題になる。問題の核心は、符号化の仕方による情報の流れの違いを捉えることにある。昨年度の研究で、非カオスについては、情報論的に独立な量を選べることが分かったが、カオスの場合にはその性質が成り立たないだろう。そこで、まず、非カオスからカオスへの転移を捉えることができる符号化を自動生成するような方法の開発を行う。この方法と昨年度おこなったミクロからマクロへの情報の流れを統合する。
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