研究課題/領域番号 |
23K22416
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補助金の研究課題番号 |
22H01145 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
波多野 恭弘 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (20360414)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
12,740千円 (直接経費: 9,800千円、間接経費: 2,940千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
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キーワード | 地震 / 潮汐 / スロー地震 / 地震活動 / 動的誘発 / 粉体 |
研究開始時の研究の概要 |
潮汐などによる10kPa以下の微弱な応力変動が地震発生頻度と相関しうることが最近の高精度観測により分かってきた。本研究では、断層すべり過程を力学的にモデル化し、地震発生頻度が応力摂動に対して鋭敏になる条件を定量的に調べる。この際、通常の地震だけでなく、スロー地震に注目したモデル化を行うことが本課題の特色である。なぜならスロー地震は変位と応力を通じて地震発生を促進したり抑制したりでき、しかも潮汐にしばしば応答することが知られているからである。このようなモデルに関する解析計算とシミュレーションにより、地震が潮汐に応答することはありうるのか、その条件は何か、などを定量的に解明する。
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研究実績の概要 |
断層ガウジを模した粉体層に動的な応力摂動を与えた際の応答について、離散要素シミュレーションを用いた研究を行っている。2022年度においては研究の準備として、粉体モデルが不安定すべり挙動を示すパラメタの設定を確認した。適度な法線応力のもとで系の剛性を下げていくと、固着とすべりを不規則に繰り返す挙動がシミュレーションで再現された。 次に、粉体系の境界をなす壁を微小振幅で振動させることで動的な応力摂動を加えた。まずは振幅と周波数依存性に注目し、もっとも効率的にすべりを誘発する周波数を調べた。その結果、すべりを誘発しやすい周波数は粉体層の共振周波数になっていることを確かめた。ただし、入射地震波の周波数が共振周波数と数倍程度違っていてもすべり誘発能力にはさほど差がないことも分かった。従ってこのような共振による不安定すべりの誘発はある程度ロバストに発生しうることになる。すべりの共振周波数は粉体層全体の弾性定数と質量密度、および層厚から決まり、粉体粒径には依存しないことも発見した。この結論自体は入射する地震波が横波でも縦波でもほぼ変わらないことを確かめた。これらのことから、粉体層が厚いほど共振周波数は低くなることが結論される。 不安定すべりを誘発する共振周波数が地震波程度の周波数(数Hz程度)になるためには、法線方向圧力が非常に低い、あるいは流体が豊富に存在しなければならないことも推定される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動的応力摂動が共振周波数の時に不安定すべりを誘発しやすいことは物理的にはもっともらしいが、共振周波数ぴったりでそれが起こるのではなく、かなり広い周波数帯で粉体層が鋭敏に反応することが分かった。これは当初の予想を覆す意外な結果であり、その物理的な機構の解明が必要である。周波数について合わせ込みが不要ということは、実際の地震断層でも同様の現象が期待できるため、この結果は重要である。
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今後の研究の推進方策 |
以下の4点の研究項目を残り研究期間の2年間で実施する。 1。粉体層の不安定すべりを誘発しやすい周波数が非常に幅広い理由について考察を深めるため、周波数についてより細かい刻み幅を設定して誘発能力を調べる。 2。粉体層内部の振動を可視化して、共振が実際にどのように起きているのかを解明する。 3。実際の断層における地震誘発の可能性を考えるためにスケーリング議論を行う。このために、粉体層の大きさ(粒子数)について系統的に変化させて、周波数と閾値振幅の変化を調べる。 4。より信頼性の高い結論を得るため、粒子配置についてアンサンブル平均をとる。 以上の実施項目についてはいずれも多数回のシミュレーションが必要なため、計算サーバを増強する。
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