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高フィネス光共振器を用いた極低温分子研究の新展開

研究課題

研究課題/領域番号 23K22419
補助金の研究課題番号 22H01148 (2022-2023)
研究種目

基盤研究(B)

配分区分基金 (2024)
補助金 (2022-2023)
応募区分一般
審査区分 小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
研究機関北海道大学

研究代表者

小林 淳  北海道大学, 工学研究院, 准教授 (50579753)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2024年度)
配分額 *注記
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
キーワードレーザー冷却 / 極低温分子 / 光共振器 / Rydberg状態 / 精密分光 / 極低温原子・分子
研究開始時の研究の概要

近年、極低温分子を用いた研究が盛んである。分子は原子にはない特殊な性質を持つことから、その性質を生かした多様な研究が提案されている。他方で分子は構造が複雑であるため、実験上の様々な困難があり、それらを回避した新しい実験技術の開発が重要となっている。本研究では、高フィネスの光共振器と極低温分子を組み合わせた新しい実験手法で研究を進めている。①強い閉じ込め力を使った新しい極低温分子生成法の開発、②分子の超放射による高精度分光法の開発、③巨大なRydberg分子の生成実験、の3つを目標としている。

研究実績の概要

本研究では、高フィネスの光共振器を活用した極低温分子研究を進めており、以下の①強い閉じ込め力を使った新しい極低温分子生成法の開発、②分子の超放射による高精度分光法の開発、③巨大なRydberg分子の生成実験、の3つの研究を目標としている。
令和5年度の研究実績として、まず高フィネス光共振器を用いた非衝突型の冷却法の開発を行い位相空間密度を0.2まで上昇させることに成功した。これは今後の極低温分子生成に欠かせない重要な成果である。この成果は日本物理学会第78回年次大会で報告している。
また上記の手法で冷却された原子から2光子光会合によって分子を生成する計画である。2光子光会合の中間準位となる分子準位の観測にも成功している。さらに2光子光会合に必要となる2本のコヒーレントな光源の作成も行っており、それらの相対周波数揺らぎを1Hz以下に抑えることに成功している。
さらに原子のRydberg状態への励起実験も行った。励起に必要となる波長420nmと波長1013nmの2つのレーザーを作成し、これらのレーザー波長を波長計を用いた周波数の安定化を行い、さらに磁気光学トラップで冷却された原子集団をRydberg状態へと励起することに成功した。MCPを用いたイオン検出と電場によるRydberg状態のイオン化実験も行うことによって、Rydberg原子雲の自発的なプラズマ化のダイナミクスを観測することにも成功した。この現象はRydberg状態の特異な性質(特に、相互作用が非常に大きいこととイオン化されやすいこと)が顕著に表れた現象である。本研究では高感度なイオン検出を実現することで、このプラズマ化の初期イオン化過程に相互作用の影響が強く現れていることを、明確に示すことにも成功した。この成果は日本物理学会2024年春季大会で報告している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

研究実績の概要に示した通り、3つの研究目標に向けて順調に研究が進行している。特に、Rydberg状態への励起実験は、令和6年度から光源作成との実験準備を始める計画としていたが、すでにそれらの光源作成は終了しており、さらにそれらによる冷却原子の励起実験にも成功していることから、当初の計画以上の進展があると言える。
特にRydberg励起実験は、今後以下の3つの方向性で発展させていく予定である。1つは生成した分子のRydberg状態を経由したイオン化観測によって高感度に観測する実験であり、これは研究目標①のための研究である。2つ目はRydberg原子が波長1um領域に光学遷移を持っており、これが高フィネス光共振器の共鳴波長領域にあるために、光共振器によって自然放出が増幅されて起きる超放射実験が可能となる。これはさらに分子へと発展させることで研究目標②へつながる。3つ目は研究目標③の巨大なRydberg分子への発展であり、大きな分子サイズならではの研究を進めて行く計画である。
このように特に、Rydberg励起実験は研究計画の進展に非常に重要であり、その進展が当初の予定以上に順調であることから、全体としても計画以上に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

これまでは、研究実績の概要に示したように研究を進めてきた。今後の研究では、これらの研究をさらに進展させる計画である。
まずこれまでの研究で、光共振器増幅された3次元光格子中での原子の冷却実験を行い、Ramanサイドバンド冷却と解放・再捕獲による圧縮によって、原子間の衝突を用いずに原子を冷却する新しい冷却方法の開発に成功した。この結果、高速に位相空間密度を0.2程度まで上昇させることに成功している。さらに2光子光会合によって原子を会合させて分子を生成するための光源開発も行った。今後はこれらを組み合わせることで、高速・高効率に分子を光格子中に生成する研究を行う。この研究は特に分子の精密分光実験のために非常に重要な研究である。
さらにこれまでの研究で、原子のRydberg状態への励起実験にも成功している。今後はこの研究を拡張して、3つの方向のRydberg状態を用いた研究を進めて行く計画である。1つは生成した分子のRydberg状態を経由したイオン化観測によって高感度に観測する実験である。そのために、すでに励起分子準位の分光実験を始めている。これによって、高感度な分子分光実験が可能となる。
2つ目はRydberg原子の超放射実験である。これは、Rydberg原子が長寿命でかつ波長1um領域に光学遷移を持っており、光共振器の共鳴波長域に一致するために実現されるものである。この実験ではRydberg状態の原子を観測するのではなく、超放射で得られる光を観測することによって、分光実験が実現される。さらにこれを分子実験へと拡張していく計画である。3つ目は巨大なRydberg分子への発展である。特に、光共振器の増幅機構を用いて高い光強度を得ることによって、高効率なRydberg分子状態への励起を行う。巨大な分子サイズならではの新奇な研究を進めて行く計画である。

報告書

(2件)
  • 2023 実績報告書
  • 2022 実績報告書
  • 研究成果

    (9件)

すべて 2024 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] 極低温分子の精密分光による電子陽子質量比の不変性検証2023

    • 著者名/発表者名
      小林 淳, 井上 慎
    • 雑誌名

      レーザー研究

      巻: 51 ページ: 517-521

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] Rydberg原子の極低温プラズマへの自発的な発展の観測2024

    • 著者名/発表者名
      小泉晶太郎,立邊義人,奥田泰崇,小林淳
    • 学会等名
      日本物理学会2024年春季大会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] ラマンサイドバンド冷却と解放再捕獲圧縮による高位相空間密度への非衝突冷却2023

    • 著者名/発表者名
      奥田泰崇, 五十嵐梨玖, 小林淳
    • 学会等名
      日本物理学会第78回年次大会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] ラマンサイドバンド冷却と解放再捕獲圧縮による高位相空間密度への非衝突冷却2023

    • 著者名/発表者名
      奥田泰崇, 五十嵐梨玖, 小林淳
    • 学会等名
      第5回冷却原子研究会「アトムの会」
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 極低温分子の精密分光による物理定数の不変性検証実験とその改善に向けて2022

    • 著者名/発表者名
      小林 淳
    • 学会等名
      第2回新方式精密計測による物理・工学的変革を目指す回路技術調査専門委員会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 光共振器増幅された3次元光格子中での極低温原子実験2022

    • 著者名/発表者名
      奥田泰崇, 五十嵐梨玖, 岡田瑛理, 小林淳
    • 学会等名
      日本物理学会2022年秋季大会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] Test for the stability of electron-to-proton mass ratio using ultracold molecules2022

    • 著者名/発表者名
      Jun Kobayashi
    • 学会等名
      第18回AMO討論会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [備考] Laboratory of Photonics Engineering

    • URL

      https://www.eng.hokudai.ac.jp/labo/photonic/index-j.html

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [備考] レーザー冷却技術を用いた極低温原子・分子実験

    • URL

      https://www.eng.hokudai.ac.jp/labo/photonic/research/ultracold-j.html

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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