研究課題/領域番号 |
23K22431
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補助金の研究課題番号 |
22H01160 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小林 嵩 国立研究開発法人理化学研究所, 量子コンピュータ研究センター, 研究員 (50803003)
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研究分担者 |
牧瀬 圭正 国立天文台, 先端技術センター, 准教授 (60363321)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,200千円 (直接経費: 14,000千円、間接経費: 4,200千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 14,170千円 (直接経費: 10,900千円、間接経費: 3,270千円)
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キーワード | 量子情報 / 実験 / シリコンスピン量子ビット / ジョセフソンパラメトリック増幅器 / 高速測定 / 超伝導増幅器 / 半導体スピン量子ビット / シリコン / フィードバック / ジョセフソン接合 |
研究開始時の研究の概要 |
測定の速さは量子技術において大きな意味を持つ。例えば、大規模な量子コンピュータの実現に必要なフィードバックによる量子誤り訂正には、量子ビット(=量子コンピュータの基本構成要素)が壊れるよりも速い測定が要求される。近年、ジョセフソンパラメトリック増幅器(JPA)と呼ばれる増幅器により測定の高速化が実現されてきたが、大規模化に適した性質を持つシリコン中のスピンを用いた量子ビットへの利用が困難である。本研究ではSiスピン量子ビットの測定に適したJPAを開発し、その性能を明らかにする。またこのJPAを用いてSiスピン量子ビットの高速測定を実現し、それに基づいた量子技術の実現を目指す。
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研究実績の概要 |
シリコン(Si)スピン量子ビットは、量子情報保持時間を持つことと既存の生産向け製造技術を活用できることから、大規模な量子コンピュータの実現に有力な候補である。本研究課題では、量子誤り訂正符号の実現に求められる量子ビットの高速測定をSiスピン量子ビットで実現するために、極低ノイズのジョセフソン・パラメトリック増幅器(JPA)の応用を試みる。JPAはこれまで超伝導量子ビットの測定に用いられているが、測定周波数・電力の違いからSiスピン量子ビットの測定に用いるには、専用の設計が必要である。そこで、本年度は(1)JPAの設計と特性評価、(2)JPAの製作、(3)JPAの性能評価に取り組んだ。また、研究を進める中でSiスピン量子ビット側の測定技術向上も重要であることが明らかとなったため、(4)Siスピン量子ビットの測定を行い、高速QND測定の実装への知見を蓄積した。 (1)JPAの設計と特性評価においては、JPAの特性の解析モデルを構築し、Siスピン量子ビット測定で用いられる周波数500 MHz程度、電力-100 dBm程度の信号を増幅できるようなデバイスの設計を行う。またそれをもとに、JPAデバイスの設計を行う。 (2)JPAの製作においては、(1)で設計したJPAデバイスを作製する。このデバイスでは陽極酸化した臨界電流密度を低くした接合と自然酸化による接合を別工程で実装する必要がある。そのため専用のプロセスを構築する必要があり、その開発を行う。 (3)JPAの性能評価においては、希釈冷凍機温度で製作したデバイスの特性を調べる。また測定結果を元に、JPAの設計を見直し特性の向上を図る。 (4) Siスピン量子ビットの測定では、従来の測定方法でQND測定を行い、高速QND測定を行う上での問題の抽出を行う。またJPAとSiスピン量子ビットの間で動作条件の擦り合わせを検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)JPAの設計と特性評価では、JPAの特性に関する解析モデルを構築し、デバイスの構成を検討するための環境を整えた。これを用いて所望の特性を実現するために要求されるJPAを構成するジョセフソン接合の個数と臨界電流値、キャパシタンスや幾何的インダクタンスの値を求めた。それを元に、デバイスの設計を当初計画通りに完了した。 (2)JPAの製作では当初計画通りに、(1)の設計を元にフォトマスクを作製した。さらにそのフォトマスクを用い、Nb/Al/AlOx/Nbプロセスを用いてデバイスを当初計画通りに作製した。このプロセスは専用プロセスであるため、工程ごとの管理が重要である。そこでi線すステッパー用のレチクルにプロセスTEGも導入している。またi線ステッパーの更新と成膜装置の新規の導入があったため、その最適化も進めた。 (3)JPAの性能評価においては、当初計画通りに作製したデバイスの特性を評価した。希釈冷凍機温度での高周波反射測定によって、JPAの共鳴周波数と共鳴線幅、ポンプ信号への応答を調べた。その結果、所望の特性が得られないことが明らかになったことから、解析モデルとの比較により、原因についていくつかの仮説を立てた。仮説の妥当性を評価するために、検証用のデバイスの構造を検討・設計した。 (4) 当初計画に加えてSiスピン量子ビットの測定を行った。市販の高周波用コイルよりも特性が良好な超伝導コイルを作製し測定に利用することで、Siスピン量子ビットの測定に適した周波数の向上と電力の低減が実現できることを確かめた。また、従来の測定方法でQND測定を行い、増幅器の特性以外の律速過程(スピン選択性トンネル・レート)を特定し解決策(Pauliブロッケードを利用した測定)を提案した。また実験結果を論文にまとめて投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)JPAの設計と特性評価では、最初に検証用デバイスの特性を評価する。その結果と今年度の実験結果を踏まえ、解析モデルの見直しとデバイスの再設計を行う。 (2)JPAの製作では、新規設計を元にフォトマスクの作製と、JPAデバイスの製作を行う。 さらにi線ステッパーでの露光だけでなく、設計パラメータとプロセス最適化を迅速に進めるためにマスクレス露光機を用いたデバイス開発も進める。またプロセスTEGの評価にオートプローバーを導入し、歩留まりおよび再現性の向上をはかる。また導入した冷凍機で極低温でプロセスTEGを測定できる評価システムの構築を進める。 (3)JPAの性能評価においては、希釈冷凍機温度での高周波反射測定によってJPAの特性を調べる。また、JPAをSiスピン量子ビットの測定系に組み込み、測定感度の改善を検証する。
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