研究課題/領域番号 |
23K22432
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補助金の研究課題番号 |
22H01161 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
川崎 瑛生 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (40896635)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2022年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
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キーワード | 精密分光 / 同位体シフト / 未知の相互作用 / 原子核の荷電半径 / 他電子原子の電子構造 / 暗黒物質 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では原子の出す微弱な光の周波数を精密に決定することで、通常の物質の5倍程度の量が宇宙に存在すると確実視されているがその正体が未知である暗黒物質の探索を行う。原子としてはイッテルビウムを用い、431 nmの光の吸収、放出を世界初観測することから始めて各同位体(原子の種類は同じだが中性子数が異なる原子)について周波数を精密に決定する。もう一つ別の波長の光の吸収、放出の周波数測定、電子構造の理論計算と合わせることで原子の中で未知の力を媒介する粒子としての暗黒物質の候補が存在するかを探索する。
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研究実績の概要 |
昨年度に観測、絶対周波数の測定を行ったイッテルビウム(Yb)の431 nm遷移を他の同位体についても探索、絶対周波数の測定を行った。その結果、170,172,173,174,176Ybの各同位体について当該遷移を観測し、絶対周波数を10 kHz程度の精度で測定することに成功した。また、173Ybに関してはg factorの測定も行った。 このデータを用いて、まず173Ybのhyperfine constantsに関する考察を行った。このデータを用いて原子核の荷電半径や電子と中性子の間に働く未知の力の探索を行うべく、Ybの電子構造について理論計算を行った。この結果と同位体シフトのデータを用いて荷電半径の差を計算した。また、さらにキングプロットの非線形性を利用することによって未知の力を媒介するボソンの存在領域に対して制限をつけた。奇数質量数の同位体に関してなぜキングプロットにおいて偶数同位体の大まかな線形性から大きく外れたところにデータが現れるのかについて、一定の考察も行なった。 さらに絶対周波数測定の精度を高めるために、光格子に原子をトラップする準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
イッテルビウムの精密分光を用いた新物理の探索の基盤を築くために、本研究課題の開始時点では理論的な予測は存在したものの実験的には観測されていなかった431 nmの狭線幅遷移の探索を行った。その結果、まず171Ybにおいて431 nmの狭線幅遷移の観測に成功した。そして、絶対周波数を10 kHz未満の不確かさで測定した。この探索を他の同位体についても行い、170,172,173,174,176Ybの各同位体について当該遷移を観測し、絶対周波数を10 kHz程度の精度で測定した。また、171,173Ybに関してはg factorや超微細構造といった磁気的性質についても測定した。 このデータを用いて種々の理論的な解析を行なった。本測定によるデータのみを用いたものとしてはhyperfine constantsを計算した。さらなる解析のためにYbの電子構造について理論計算を行い、これと本測定のデータ、他の報告のデータを合わせることによって原子核の荷電半径の差を計算した。さらに、キングプロットの非線形性を利用することによって未知の力を媒介するボソンの存在領域に対して制限をつけた。 さらに絶対周波数測定の精度を高めるために、光格子に原子をトラップする準備を進めた。 理論計算は当初の想定よりも早い段階で一つの結論に到達した。また、絶対周波数の測定は一度1つの同位体での測定が終わるとそれ以外の同位体に関しては予想の値をうまく計算することによって極めて迅速に探索を行うことができ、想定よりも早いペースで実験が進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
今後は原子を光格子にトラップし、魔法波長の精密測定と絶対周波数測定の精度の向上を行う。本研究課題の残り研究期間は1年なので、この間に大幅な精度向上が果たせるかどうかは精度を上げて行った時に出てくる種々の周波数シフト並びにその不確かさの大きさ、環境の影響などに対する装置の安定性によるのでそのような要素を測定しつつ精度を向上させていくことになる。最終的にはUTC(NMIJ)やセシウムないしYbの原子時計との周波数を基準にして絶対周波数測定を行う。
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