研究課題/領域番号 |
23K22433
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補助金の研究課題番号 |
22H01162 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
土屋 聡 北海道大学, 工学研究院, 助教 (80597633)
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研究分担者 |
戸田 泰則 北海道大学, 工学研究院, 教授 (00313106)
谷口 弘三 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (50323374)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 11,960千円 (直接経費: 9,200千円、間接経費: 2,760千円)
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キーワード | 電荷ガラス / 有機導体 / ポンププローブ分光 / 超高速ダイナミクス / 時間分解分光 / 動的不均一性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目標は、現代物理学最大の未解決問題である「ガラス転移」の解明である。そのために近年基礎、応用の両面から注目を集めている有機伝導体で発現する電荷ガラスを研究対象とし、ガラス転移解明の鍵を握る「動的不均一性」に関する知見を得ることを目的とする。本研究では電子系のみを瞬時励起可能なフェムト秒光パルスを用いた電子の緩和ダイナミクス測定を基礎とした、3パルス型ポンププローブ分光による電荷ガラス形成の実時間観測に挑戦する。そのために2パルス型ポンププローブ分光により、電荷ガラスを光キャリアダイナミクスの観点から特徴づけ、ガラス形成に対するフラストレーション効果、電子相関効果に対する知見を得る。
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研究実績の概要 |
本研究の最終目標である「ガラス転移の解明」に向けて、近年基礎、応用の両面から注目を集めている有機分子結晶の電荷ガラス状態を研究対象とすし、ガラス転移解明の鍵を握る「動的不均一性」に関する知見を得ることを目的とする。本研究では電子系のみを瞬時励起可能なフェムト秒光パルスを用いた電子の緩和ダイナミクス測定を基礎とした、3パルス型ポンププローブ分光による電荷ガラス形成の実時間観測に挑戦し、ガラス転移に対する新たな知見を得る。 初年度は3パルス型ポンププローブ分光を実施するための基礎となる、q-(BEDT-TTF)2CsZn(SCN)4(以降q-Cs)における「電荷ガラス状態」の光誘起ダイナミクスの解析、及び10Kでのフルーエンス依存性測定を行った。特に50K以下の低温領域においては、偏光異方性が消失する振る舞いが観測されていたが、解析の結果、格子系がランダムな電荷分布を伴い変位することによる構造的な転移であることが示唆された。これは結晶中の電子のガラス状態に特有な物性であり、ガラス状態、転移の多様性を示す重要な結果と考えられる。これらの成果は論文として出版した。 また10Kでのフルーエンス依存性測定では格子系の変位に由来する長い緩和時間をもつダイナミクスがフルーエンスに対して、飽和的な振る舞いを示すことが分かった。これを利用すれば3パルス型ポンププローブ分光を実施できる可能性がある。一方で試料依存性場所依存性も多少あることも判明したため、これらの振る舞いが普遍的に観測されるのか否か調査する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3パルス型ポンププローブ分光を実施するため、「電荷秩序状態」と「電荷ガラス状態」のダイナミクスをさらに明確化する必要があった。今年度の低温におけるフルーエンス依存性の測定により、実施にはある程度目途が立った。また低温における電荷ガラス状態の物理的描像もある程度確立されつつあり、論文として発表できたので、初年度の目的はおおむね達成されたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
一方で試料依存性、普遍性を確かめるための測定が必要なこともわかった。今後はZnをCoに置換したq-(BEDT-TTF)2CsCo(SCN)4(以降q-CsCo)においても測定を行い、低温領域で観測される格子系のランダムな変位による構造転移の普遍性を確かめる。さらにこの構造転移のメカニズムを詳しく探るために、電流印加した条件でポンププローブ分光を実施できるよう、測定系を立ち上げる。q-Csでは2種類のCOがガラス形成に関与していることが指摘されており、また電流印加によりそのうちの1つを融解させることができる。よってこの測定により、構造転移メカニズムとCO形成の関係に対して新しい知見が得られると期待される。
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