研究課題/領域番号 |
23K22437
|
補助金の研究課題番号 |
22H01166 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
寺崎 一郎 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (30227508)
|
研究分担者 |
中村 文彦 久留米工業大学, 工学部, 教授 (40231477)
岡崎 竜二 東京理科大学, 創域理工学部先端物理学科, 准教授 (50599602)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2025年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
|
キーワード | 非平衡定常状態 / モット絶縁体 / 電歪効果 / 電界効果 / 高周波計測 / 高調波計測 |
研究開始時の研究の概要 |
物質に電極を付けて電源に接続し、電流を通電すると電流に比例した電圧が発生する。これはオームの法則として知られるありふれた状態に見えるが、電流・熱・エネルギーの流れがあるために、厳密には熱力学や統計力学が適用できない状態である。それが顕著な場合が、伝導電子同士が強く相互作用するためにオームの法則に従わない物質である。本研究ではそうした物質を対象として、熱・統計力学を拡張できるような基礎実験結果を得ることに挑戦する。こうした物質では電流を流すと結晶のサイズも変わるので、それを応用した素子設計の提案も行う。
|
研究実績の概要 |
本研究では、モット絶縁体Ca2RuO4において、電流印加で生じる非平衡定常状態を特徴付ける特性時間を、巨大電歪効果、電界効果、3次高調波などの新規な実験手法によって明らかにする。 第1年次は研究体制の確立が主な目標であった。年度の成果を議論するために3月にZoomでミーティングを行い、今後の研究方針について意見交換を行った。 寺崎は、中村から提供された試料を用いて面直方向の電歪効果の電流依存性、温度依存性を精密に計測した。また、参照物質としてVO2の単結晶成長に挑戦し、良質な単結晶を得た。現状では、微量のアルミニウムがボートから混入しているものの、非線形伝導や電子相転移は文献結果を再現している。これまでCa2RuO4に適用してきた赤外温度計を用いた非線形伝導の電流密度依存性の計測、そこから見積もられるエネルギーギャップの電流依存性はCa2RuO4とよく似ていた。ところが予想外であったが、VO2では現状では電歪効果はほとんど見られなかった。Ca2RuO4との詳細な比較を次年度行う。 中村はCa2RuO4表面に電気二重層トランジスター構造を構築し、数ヶ月以上に渡る電界効果を計測し、5ヶ月程度でほとんど金属化することを見出した。また、金属インジウム、VO2、Ca2RuO4について示差熱分析や示差走査熱量分析を行い、掃引速度の相転移依存性を観測した。その結果、Ca2RuO4の相転移が極めて異常であることを見出した。 岡崎は非線形伝導を示す分子性導体において2端子法による3次高調波の周波数依存性を詳細に測定し、論文に出版した。Ca2RuO4にこの技術を適用するために測定系を4端子に拡張することを試みている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者と2人の研究分担者は順調に研究環境を整備し、各自が成果を出しつつある。中村は熱分析装置に温度変調システムを組み込み、多様な掃引速度における熱分析を可能とし、インジウムやVO2の一次相転移を計測できた。岡崎は高調波計測システムを用いた強相関電子系の非線形伝導現象を計測に成功した。研究代表者はCa2RuO4の電歪効果の計測に成功し、その再現性や様々な条件での計測を行った。得られた結果は予備的実験の結果を再現している。また3年次以降に展開するVO2の結晶成長に成功し、その化学的評価や基礎輸送現象の測定を終えた。その結果、3年次の研究を前倒しして開始できた。詳細な結晶構造解析を行った結果、得られた単結晶には微量のアルミニウムが混入していることがわかった。これは用いたアルミナるつぼからの混入と思われる。この混入により特徴的な単斜晶の結晶が得られている。これらの結果を考慮して、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
コロナ禍も概ね収束し、研究も日常が戻りつつある。今後は対面での意見効果を行うとともに、関連研究者を招待したミニ研究会を企画してゆきたい。実験については1年次の研究を進展させつつ、それぞれの物性の特性時間の抽出を行いたい。Ca2RuO4とVO2は、ともに同じような温度で、構造相転移を伴う金属絶縁体転移を示す系だが、相転移の振る舞いを非線形伝導で調べると違いが際立ってきた。今後、両者の比較から強相関系の非線形伝導の特徴を抽出したい。電歪効果としてはCa2RuO4は従来のピエゾ素子の10倍の応答を示すのに対し、VO2ではほとんど電歪が見られない試料があり、試料依存性が大きい印象を得た。まずは再現性、試料依存性を明らかにすることが必要である。本年度はアルミナるつぼを用いて作成したために微量なアルミニウムの混入があった。次年度は、まずはプラチナるつぼを用いて結晶成長を行い、より純良な試料の作成に挑戦する。
|