研究課題
基盤研究(B)
本研究では、研究対象を超伝導体とし、原子ネットワークの対称性の制御によって新奇な超伝導電子対を見つけることを目的とする。超伝導の研究において、新たな超伝導電子対を発見することには高い学術的意義がある。研究代表者らのグループによって発見された超伝導体が有する三角形、ハニカム、カゴメネットワークの対称性を利用し、右向きあるいは左向きに回転して自発磁場を発するカイラルd波超伝導電子対を探索する。
2023年度は、ハニカムネットワークを持つ超伝導体BaPtAs、BaPtSbにおいて合成条件を最適化することで、これまで以上に良質な試料を得ることができた。それらの試料を用いて新奇超伝導状態を探索した結果、BaPtSbにおいて、時間反転対称性が破れた超伝導状態を示唆する結果を得ることができた。その特徴は、SbサイトをわずかなAsで部分置換することによって消失した。Asをわずかに部分置換した試料は超伝導を発現するものの、その超伝導状態は時間反転対称性を破っていない。この結果は、少なくとも、BaPtSbの超伝導状態が非従来型であることを示唆している。さらに、理論計算の結果と併せて検討した結果、これらの実験的観測がカイラル超伝導の発現と矛盾しないことが分かった。今後、As置換量を変えた試料を合成し、さらに詳しく調べる予定である。さらに、単結晶育成条件を系統的に変えて実験することで、三角形ネットワークを持つ超伝導体Pt(Bi1-xSex)2の単結晶を大型化することができた。その単結晶試料を用いて、超伝導状態を明らかにするために、低温磁場下輸送現象、核磁気共鳴、光電子分光の測定を開始している。母物質のPtBi2 (空間群P31m)は、極性構造を持つ超伝導体である。私たちは、これまで、BiサイトにSeを部分置換すると、非極性構造 (空間群P-3m1)へと構造相転移し、超伝導転移温度が急激に上昇することを報告している。本研究で得られた単結晶試料は、極性非極性構造相転移と超伝導の関係を調べるためにも役に立つ。
2: おおむね順調に進展している
(1) 新奇超伝導状態を探索するための良質試料を得ることができており、それらにおいて、実際にカイラル超伝導の発現と矛盾しない結果を得ることができている。(2) さらに詳細な実験を行うための単結晶試料の大型化が進んでおり、それらを用いた実験も開始されている。
BaPtAsとBaPtSbの系において、カイラル超伝導状態を中心とした新奇超伝導発現の実証を進める。Pt(Bi1-xSex)2の大型単結晶試料を用いた実験を進める。他の研究対象物質についても、当初の予定通り、新奇超伝導状態の探索を進める。さらに、普遍的な知見を得るために、新たな候補物質の開発を進めて、物質の幅を広げる。
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すべて 国際共同研究 (7件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (22件) (うち国際学会 6件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
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