研究課題/領域番号 |
23K22458
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補助金の研究課題番号 |
22H01187 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13040:生物物理、化学物理およびソフトマターの物理関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
作道 直幸 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任准教授 (50635555)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,510千円 (直接経費: 12,700千円、間接経費: 3,810千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2022年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
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キーワード | 高分子ゲル / エントロピー弾性 / 負のエネルギー弾性 / ゴム弾性 / ゲル弾性 / 弾性率 / エネルギー弾性 / ネットワークトポロジー / ハイドロゲル / 粘弾性固体 / 亀裂進展 / イオンゲル |
研究開始時の研究の概要 |
最近、研究代表者らは、ゼリー・ソフトコンタクトレンズなどの高分子ゲルの弾性率(かたさ、やわらかさ)に、溶媒由来の「負のエネルギー弾性」が存在することを発見した。ゲルに外力を加えて変形すると高分子網目の部分鎖が引き延ばされ復元力(エントロピー弾性)が生じると同時に、溶媒と鎖の相互作用により復元力と反対向きの力(負のエネルギー弾性)も発生し、ゲルが大幅に柔らかくなるという発見である。本研究では、実験・理論・数値計算により、負のエネルギー弾性の普遍性と発現機構を解明する。また、網目のトポロジーの影響を調査することで、弾性率をミクロな高分子網目構造から決める物理法則を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、高分子ゲル(例えば、ゼリー、ソフトコンタクトレンズ)の弾性率をミクロな高分子網目構造から決める物理法則を明らかにすることである。今年度は、以下の研究を行った。(1) 均一な網目構造を持つハイドロゲルを用いて、高分子網目構造のトポロジーの影響を調査した。昨年度までに調査した、架橋点が三分岐のゲルと四分岐のゲルに加えて、架橋点が六分岐のゲルと八分岐のゲルを新たに調査し、分岐数によらない普遍的な物理法則を明らかにした。 (2) フリーラジカル重合によって合成した不均一な網目構造を持つゲルにおいても、高分子濃度と架橋剤濃度の変調による負のエネルギー弾性の変化が、均一なゲルの法則と一致することを発見した。 (3) 負のエネルギー弾性の弾性率全体に占める割合は、調整状態と膨潤状態(溶媒を吸った状態)の両者で不変であることを発見した。 (4) 昨年度までに、斥力相互作用する自己排除ウォークを用いて「負のエネルギー弾性」の分子論的な起源を説明することに成功していた。今年度は、斥力相互作用するランダムウォーク(Domb-Joyce模型)でも、同様に起源を説明できることを発見した。(1)から(4)の成果については、それぞれ来年度に原著論文を国際学術誌に投稿予定である。 (5) PEGハイドロゲルの全原子分子動力学シミュレーションにおいても、負のエネルギー弾性が見られることを実証し、国際学術誌から原著論文を出版した。 (6) ゲルやゴムなどの粘弾性ソフトマターにおいて、遅い亀裂進展では亀裂形状は放物線形状であるが、速い亀裂進展では先端が尖る。この現象の起源を、線形粘弾性モデルを用いた粘弾性体の亀裂進展の問題を適切な近似の元で数学的な解析解を得ることで、数学的に明らかにした。原著論文を著名な国際学術誌に投稿し、プレプリントを公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要に記載の通り、6つの方向性の研究を行い、それぞれで大きな新発見があった。 また、本年度は、原著論文4本が著名な国際学術誌に掲載された。この内、研究代表者が責任著者を務める2本の論文(Nature Materials, Physical Review Letters)についてプレスリリースを発行し、各種メディアから一般市民向けに報道された。また、原著論文2本(研究代表者が責任著者)を著名な国際誌に投稿し現在査読中である。加えて、3件の招待講演と3件の国際学会を含む15件の学会発表を行い、研究成果をコミュニティに広めた。さらに、中高生向けの宿泊型セミナーにも招待されて最新の研究成果について講演することで、一般市民に研究成果を還元した。 研究内容としては、弾性率に関する研究が当初の計画よりも進んでおり、弾性率が関連する研究としてゲルやゴムの破壊の理論研究も大きく進み、原著論文として出版可能な研究成果が次々と出ている。 このように、研究は当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に多数の研究結果が出たので、今後は論文執筆にも力を入れて、今年度以上に多数の論文が出版できるように努力する。具体的には、網目トポロジーに関する研究、不均一網目の負のエネルギー弾性の研究、斥力相互作用するランダムウォーク(Domb-Joyce模型)の研究をそれぞれ進め、論文化を行う。未曾有の円高で旅費が高騰しており、所属機関の規定額の範囲では海外の安全な宿の確保が難しいことから、海外の国際学会への参加はなるべく避けて、国内で行われる国際学会へ積極的に参加することで、研究成果を国際的にアピールする。
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