研究課題/領域番号 |
23K22461
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補助金の研究課題番号 |
22H01190 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13040:生物物理、化学物理およびソフトマターの物理関連
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
長屋 智之 大分大学, 理工学部, 教授 (00228058)
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研究分担者 |
折原 宏 北海道大学, 電子科学研究所, 客員研究員 (30177307)
氏家 誠司 大分大学, 理工学部, 教授 (40185004)
内藤 裕義 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 特任教授 (90172254)
及川 典子 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (40452817)
小林 史明 九州大学, 理学研究院, 助教 (30898101)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
14,690千円 (直接経費: 11,300千円、間接経費: 3,390千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2022年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
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キーワード | レオロジー / 液晶 / トポロジカル欠陥 / 液晶電気対流 / 散逸構造 |
研究開始時の研究の概要 |
粘性とは流れに対する抵抗なので一般に正の値である。しかし,我々はある種の液晶に交流電圧をかけると,液晶内に乱流が発生し,乱流の中に平均的な流れが起こり,粘性の測定値が負になる現象を発見した。負の粘性を示す液晶は増えており,液晶によって負の粘性の特徴も少しづつ異なる。本研究では,電場下における液晶の負の粘性の発現機構を解明することを目的とする。研究手法としては,粘度測定,顕微鏡観察,画像解析,数値シミュレーションを用いる。
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研究実績の概要 |
初年度作成した乱流中の平均流を求める画像解析ソフトを用いて,MBBA液晶を0.9mm×0.9mm,3mm×3mmの正方形の領域のみに電場を掛けられるセルに入れて交流電圧を印加したところ,0.9mm×0.9mm領域の場合に平均流が領域全体の回転流に発達することを確認した。この回転流の方位各方向の流れの速さは,電場周波数を増加させると,約300Hzの臨界周波数で0になった。この周波数依存性は,粘度計で測定した自発せん断速度と同様な振る舞いであるが,前者の臨界周波数は,後者の値の約430Hzよりも小さかった。これは,液晶セルでは流体を挟むガラスが固定されているために平均流がポアズイユ的な流れに対して,粘度計ではせん断流的な流れである違いがあるためと考えられる。なお,上記の現象は,MBBA試薬の別のロットでは観測されず,実験を繰り返して行うことが困難であることがわかった。 負の粘性を示す液晶は,シッフ塩基系のMBBA,EBBA,PBBA,BBBAで確認されているが,これらは化学的に不安定であり,導電率が変化する問題がある。そこで,LCC社のフェニルエステル系液晶のCE302,CE304,CE402,CE501で負の粘性の発現を調べたところ,これら全ての液晶でMBBAと同程度の大きさの負の粘性が確認できた。また,三環フッ素系のAF13液晶では,MBBAの約5倍の大きさの負の粘性が確認できた。これらの液晶の負の粘性の特性には,MBBAとは若干違った特性もあることがわかり,次年度に更なる実験が必要が生じた。さらに,AF13での平均流の解析は,MBBAに比べて容易であることがわかった。 シミュレーションによる負の粘性の再現に関しては,COMSOL Multiphysicsを用いたシミュレーションの基本的枠組みを構築することができ,液晶電気対流のロール状対流,乱流状態を再現することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
分担者の小林史明は,九州大学理学部に移籍したのちに本研究を継続することが難しくなり,予定していた実験の一部を行うことができなかった。今後も本研究の分担を継続するのは困難であるため,分担者から外れてもらった。 平均流の観測を行ったMBBA液晶は,購入する試薬のロットの違いにより液晶の導電率が異なり,実験データの再現性が良くないこと判明し,MBBAでの平均流の実験は困難となった。幸い,AF13は観測が比較的容易であることがわかったので,今後はAF13を平均流の解析の主たる試料とするが,ここに至るまでに時間がかなり掛かった。 MBBA以外で負の粘性を示す液晶が多く発見されたことは良いことであるが,測定すべき試料増えて時間がかかり,また,レスリー係数の測定も必要となり実験すべき内容が増えた。 上記の理由により進捗がやや遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
MBBAの場合は,化学的な不安定さに関連すると思われる薬品のロットによるバラツキが大きいため,画像解析による平均流の解析は,三環フッ素系のAF13を中心に実験を行う。 新たに負の粘性があることが確認されたフェニルエステル系と三環フッ素系の液晶では,シッフ塩基系液晶には無い特徴をもつ液晶があることがわかったので,それらの液晶の負の粘性の特徴を詳しく解析する。また,負の誘電異方性を持つ他の液晶についても,負の粘性の発現の有無を調べる。 シミュレーションを用いた研究では,液晶の物性値が既知であるMBBA液晶の値を用いて平均流の大きさと方向の分布を求める。その後,MBBA以外でのシミュレーションも行う必要があるので,シミュレーションに必要なレスリー係数を求める必要がある。新たにレスリー係数の実験が必要になったため,大阪公立大の内藤裕義特任教授と及川典子准教授を分担に加える。レスリー係数の実験では,垂直配向から僅かに液晶が傾くセルが必要となるため,長屋がこのセルの作成を担当する。 数値シミュレーションに関しては,これまでに定常せん断の場合しか計算できていないので,せん断が0の場合の自発的平均流が計算できる様にプログラムの改良を試みる。
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