研究課題/領域番号 |
23K22462
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補助金の研究課題番号 |
22H01191 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13040:生物物理、化学物理およびソフトマターの物理関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
吉岡 潤 立命館大学, 理工学部, 助教 (50708542)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,200千円 (直接経費: 14,000千円、間接経費: 4,200千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 13,780千円 (直接経費: 10,600千円、間接経費: 3,180千円)
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キーワード | 液晶 / ソフトマター / 非平衡 / 流動 |
研究開始時の研究の概要 |
宇宙、生物、ソフトマターといった、多自由度を有する系における非平衡現象を解析する手法を構築し、現象の機構を理解することは、現代物理学が抱える大課題の1つである。本研究では、非平衡現象の中でも普遍的であり、かつ各分野において未解決問題を内包する差動回転および自励振動と呼ばれる現象に主眼を置く。これらをはじめとする非自明な回転、および構造変形現象が、ソフトマターの代表例である液晶が液体中に分散した系において温度勾配を印加すると発現する。本研究では、これらの現象の機構を流動場と分子配向場(液晶分子の配列方向の分布)の相互作用の観点から説明することを試みる。
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研究実績の概要 |
液晶によって形成される滴(液晶滴)の系において、温度勾配を与えたときに生じる差動回転、および自励振動現象といった非平衡現象を対象とした研究を行っている。これらの現象は、勾配印加時に滴内部に発生する対流によって駆動されていると考えられており、現象の機構解明のためには滴内部の流動場測定が必須である。そこで本研究では、最初に滴内部の流動場を測定できる実験系を構築する。これと既存の実験手法を用いて、上記非平衡現象が発生している際の滴内部の配向場、流動場を測定する。これらの実験結果に基づいて、近年提案されたオンサーガーの変分原理を用いて、配向場と流動場の相互作用の観点から現象の機構を解明することを目的としている。 2022年度の研究で、蛍光退色法と共焦点顕微鏡観察を組み合わせた手法を用いることによって、滴内部の流動場を3次元的に測定できる実験系の構築に成功した。2023年度は、これを用いて温度勾配下の液晶滴における構造形成・回転現象の機構を解析した。 温度勾配下、降温過程において液体からコレステリック(Ch)液晶相へと転移が進行するところを観察したところ、回転運動を伴いつつCh液晶の秩序が形成されることが判明した。この秩序形成は温度変化の過程に強く依存し、過程を制御することで最終的に実現されるCh液晶滴の構造を変化させることが出来る。また、上記の実験系を用いて滴内部の流動場を測定したところ、対流の発生が明確に観測され、流動がCh液晶の特徴的な秩序形成に強く影響していることが示唆された。以上の結果をもとに、現象を単純化したモデルを設計し、オンサーガーの変分原理を適用したところ、構造変化は配向場と流動場の相互作用によってよく説明されることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、2022年度に構築した流動場測定系を利用し、温度勾配下の液晶滴において発生する差動回転、自励振動といった非平衡現象の機構を解析・解明することが2023年度の目標であった。これらの現象は液体中に分散したCh液晶滴において観察されており、勾配印加によって発生するマランゴニ対流に起因して発生すると考えられている。ここで我々は、対流によって現象が発生するのであれば、上記の系において溶媒は必須ではなく、空気に直接晒された液晶滴に対して温度勾配を印加しても同様の非平衡現象を誘起出来るであろうと考えた。 上記の妥当性を検証すべく、側面が空気界面に晒された円柱状のCh液晶滴を作製した。温度勾配下、降温過程において液体からCh液晶相へと2相共存状態を経て徐々に転移を進行させたところ、滴内部の配向場が回転しつつ液晶秩序が形成される様子が観測された。ここで、得られた液晶滴を加熱し部分的に液体状態に転移させたのち冷却すると、滴内部の配向場が加熱冷却前とは異なった状態で安定化することが判明した。また、回転運動に着目すると、温度に依存して回転方向が反転することが見出された。ここで滴内部の流動場を測定すると、温度勾配印加時に対流の発生が観測された。加えて、回転方向の反転に対応して対流の方向も反転していることが判明し、回転運動は流動によって駆動されていることが強く示唆された。以上の結果に基づいて流動場と配向場に関して単純化したモデルを設計し、オンサーガーの変分原理を適用したところ、構造変形と回転運動の機構は流動場と配向場の相互作用によってよく説明されることが示された。以上の内容は論文誌Scientific Reportsに掲載済である。 以上のように、当初の想定とは異なる展開を示しているものの、温度勾配下の液晶滴における非平衡現象の機構解明という本研究の目的に沿った成果は着実に得られている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、本研究開始時点で課題であった液体溶媒中に分散したCh液晶滴における差動回転、および自励振動現象の機構解明に取り組む予定である。サンドイッチセル内のCh液晶滴において、セル深さ方向に温度勾配を与えると、配向場の回転のみならず、回転流が発生する。このとき、回転の角速度が場所によって異なる差動回転を示すことが過去の研究で判明している。また、セル面内方向に定常な温度勾配を与えると、特定の条件下において配向場が振動を始める自励振動現象が発生することが観測されている。 以上の系において、光学顕微鏡観察をはじめとする既存の実験手法と、2022年度の研究で得られた流動場測定手法を用いて、配向場と流動場を詳細に測定する。得られた実験事実をもとにモデルを作成し、オンサーガーの変分原理を用いて現象の機構、ならびに実験結果を定量的に説明することを試みる。これらを通じて、上記の流動場測定手法、およびオンサーガーの変分原理の有用性が実証されていくであろうと期待している。 加えて、上記以外にも温度勾配下の液晶滴において、配向場の大変形や蛍光色素の集積現象等、様々な非平衡現象が観測されている。状況に応じて、これらの現象の機構解明にも取り組み、結論が出たものから発表していく予定である。
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