研究課題/領域番号 |
23K22471
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補助金の研究課題番号 |
22H01200 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分14020:核融合学関連
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
波多野 雄治 富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (80218487)
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研究分担者 |
外山 健 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (50510129)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
14,040千円 (直接経費: 10,800千円、間接経費: 3,240千円)
2025年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
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キーワード | 核融合炉 / プラズマ対向材料 / タングステン / 水素同位体 / 照射損傷 |
研究開始時の研究の概要 |
核融合炉の炉心を構成する材料(タングステン)は、水素のプラズマにさらされると同時に、核融合反応で発生する高エネルギー中性子の照射を受けます。中性子の照射を受けると、結晶格子中の本来原子があるべき位置に原子が存在しない「空孔」やその集合体等の「格子欠陥」が導入され、徐々に性能が劣化していく恐れがあります。また、プラズマからタングステン中に溶け込んだ水素は、これら照射欠陥と結合することがわかっています。本研究では、世界で初めて水素が存在する環境下で中性子照射したタングステン中の格子欠陥の密度や大きさ、および水素蓄積量を詳細に調べ、核融合炉環境下での照射欠陥の蓄積に及ぼす水素の影響を明らかにします。
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研究実績の概要 |
本研究の核心をなす学術的「問い」は、「中性子照射下におけるタングステン(W)中の空孔型格子欠陥の動的挙動(消滅や集合体形成)に、共存する水素同位体が影響を与えるか?」である。核融合炉プラズマ対向材料であるWが重水素とトリチウム(T)の核融合反応で生じる高エネルギー中性子の照射を受けると、格子欠陥が形成され、それらが水素同位体をトラップすることで、炉内のT蓄積量が著しく増大する懸念がある。高温では拡散を通して格子欠陥の消滅やクラスタリングが起こり、このような動的挙動がT蓄積量に影響を与えるが、水素同位体と格子欠陥が結合した場合の欠陥の動的挙動については、ほとんど知見がない。そこで、本研究グループが発案した「水素同位体雰囲気下中性子照射キャプセル」を用いて中性子照射したW試料および電子線照射した試料を用いて、水素同位体共存下での欠陥の動的挙動を明らかにする。 「水素同位体雰囲気下中性子照射キャプセル」の照射は米国オークリッジ国立研究所の研究炉HFIRで行った。中性子照射による誘導放射能の減衰を評価した結果、ハンズオンでの取り扱いに問題ないと判断し、米国側研究者と協議の上、キャプセルの開封計画および試料輸送計画を立案した。現状では、2023年度中に東北大学金属材料研究所附属量子エネルギー材料科学国際研究センターへ輸送し、照射後試験を開始する予定である。 また、京都大学複合原子力科学研究所の電子線加速器を用いて、W試料に8 MeVの電子線を平均はじき出し回数が0.005となる程度まで照射した。比較のため測定した未照射試料中の陽電子寿命が130 psであったのに対し、照射試料では140 psの成分と360 psの成分が見られた。これらの成分は、それぞれ単空孔と空孔クラスタに対応している。今後、水素同位体を導入した状態で熱処理し、さらなるクラスタリングに及ぼす水素同位体の影響を調べる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中性子照射試料および電子線照射試料の準備が予定通り進んでいるため、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
水素ガス雰囲気下で中性子照射した試料は、WおよびW-5%Re合金のディスクである[1,2]。400℃において、平均原子はじき出し回数が0.02および0.1となるまで照射を行った。また比較のため、同様の試料を不活性ガス(ヘリウムガス)雰囲気でも中性子照射した。これらの試料を東北大学金属材料研究所附属量子エネルギー材料科学国際研究センターに輸送したうえで、陽電子寿命測定を行い、水素同位体のトラップサイトとして働く空孔クラスタの密度とサイズ分布に及ぼす共存水素の影響を明らかにする。さらに、これらの試料を200℃程度で重水素(D)プラズマに曝露したのち、昇温脱離法でD蓄積量を測定する。これにより、照射時共存水素が水素同位体蓄積容量に与える影響を評価する。 また、電子線を照射した試料の一部を200℃程度でDプラズマに曝露し、単空孔および空孔クラスタをDで飽和させる。Dを含む試料と、含まないものを真空中で300~500℃に加熱し、空孔クラスタのサイズ分布の経時変化を陽電子寿命法で評価する。この結果より、空孔の集合速度に及ぼす共存水素同位体の影響を明らかにする。
[1] 波多野雄治, 外山 健, 富山大学水素同位体科学研究センター研究報告, 39, 25-35 (2019). [2] N. 0. Cetiner, Y. Hatano,et al., Fusion Eng. Des., 178, 113089 (2022).
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