研究課題/領域番号 |
23K22480
|
補助金の研究課題番号 |
22H01209 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分14020:核融合学関連
|
研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
田中 照也 核融合科学研究所, 研究部, 准教授 (30353444)
|
研究分担者 |
近田 拓未 静岡大学, 理学部, 准教授 (20614366)
佐藤 文信 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (40332746)
八木 重郎 京都大学, エネルギー理工学研究所, 准教授 (70629021)
菱沼 良光 核融合科学研究所, 研究部, 准教授 (00322529)
吉野 正人 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (10397466)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
13,780千円 (直接経費: 10,600千円、間接経費: 3,180千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
|
キーワード | セラミック / 電気絶縁 / 照射効果 / 反跳金属原子 / 反跳原子 / 金属原子 / イオンビーム / セラミック材料 / 中性子環境 / セラミック被覆 |
研究開始時の研究の概要 |
冷却材として液体金属を用いる先進核融合発電炉では、強磁場によるMHD圧力損失 (電磁ブレーキ効果) を抑制するために、金属配管の内壁に厚み1μm程度のセラミック電気絶縁被覆が施される計画であるが、高エネルギー中性子が大量に照射される炉内では、隣接する金属壁や冷却材中の金属原子が中性子によりはじき飛ばされて被覆層に入射し続けることになる。このはじき飛ばされた反跳金属原子は被覆材料中で0.3~6μmの深さまで到達し、濃度も5年間の運転中に原子数比で数%のオーダーに達する。本研究では、反跳金属原子がセラミック電気絶縁被覆の絶縁性能に及ぼす影響とそのメカニズムを調べるための実験研究を展開する。
|
研究実績の概要 |
先進ブランケット用セラミック被覆の電気絶縁性能に対する中性子照射損傷効果を模擬するためのイオンビーム照射実験を大阪大学、オクタビアン施設の250keV、D+ビームラインにおいて立ち上げた。特に過去の研究において絶縁性能劣化の可能性が指摘されている、高温・電圧印加条件において照射下電気伝導度のその場測定を可能とするための測定系をビームラインに構築した。本課題で構築した電子ビーム蒸着装置を用いて成膜したY2O3被覆試料に対して、400-500℃、電界強度0.1V/1μmの条件で照射実験を開始し、約0.1dpaまでの照射では、初期の電気伝導度(~10-6S/m)から大きな変化が生じないことを確認した。今後、照射量を増加させながら照射データの蓄積を図る。 核融合研のタンデム加速器では、Er2O3被覆候補材に対するHe2+イオンビーム照射を行い、照射損傷に伴う結晶性の変化を発光スペクトル中に現れる赤色と緑色の発光ピーク強度比から評価することを試みた。Er2O3の照射欠陥は300℃付近から回復が始まり、700℃でほぼ照射前の状態まで回復することを示唆する結果を得た。今後、金属原子含有試料に対しても同様の発光測定を行うことで、照射欠陥の回復等に対する金属原子含有の影響を調べる強力な手段になると期待できる。 また、静岡大学では、イオンビーム装置を用いたZrO2被覆へのFe原子の打ち込みが最大0.5原子%まで実施された。低温領域において、電気伝導度は打ち込み前よりも約3桁の上昇するものの、500℃以上では非照射試料と同程度の電気伝導度を示し、要求される絶縁性能の保持を妨げないこと等が示された。 その他、セラミック電気絶縁被覆への反跳金属原子の入射を模擬するために、電子ビームによるセラミック被覆蒸着と抵抗加熱による金属蒸着を同時に行うことを可能とする成膜装置構築を引き続き進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
セラミック被覆試料、及び、イオンビーム打ち込みにより製作された金属原子含有セラミック被覆試料に対するイオンビーム照射実験の実施と電気絶縁特性変化に関するデータ取得は概ね順調に立ち上がっている。 一方、本課題では、イオンビーム打ち込みを用いる手法と比較して、より迅速に各種金属原子を含有させたセラミック被覆試料を製作する手法として、電子ビームによるセラミック被覆蒸着と抵抗加熱による金属蒸着を同時に行うことを可能とする成膜装置の開発・構築を行い、照射用試料を製作する計画である。セラミック蒸着と金属蒸着は個別には実施できる状態であり、照射実験用試料の供給を行えているが、同時蒸着時にセラミック被覆中の金属原子濃度を均一に制御するために必要となる成膜速度の安定性向上のために技術的な改良が必要であり、より正確な入力電力の制御などの改善を加えて、令和6年度前半での照射実験用の同時蒸着試料供給を目指している。
|
今後の研究の推進方策 |
電子ビームによるセラミック被覆蒸着と抵抗加熱による金属蒸発を同時に行うための被覆成膜装置の構築の完了を急ぎ、令和6・7年度は金属原子(Fe, Cr, Li等)含有セラミック被覆試料(Er2O3、Y2O3、MgO、ZrO2等)の製作と核融合炉環境を模擬した条件でのイオンビーム照射による電気伝導度変化の測定データ取得に注力する。また、今年度に有用性が明らかになった、発光スペクトルの変化からイオンビーム照射に伴う結晶状態の変化を観測する手法は、非破壊で迅速に結晶状態を把握できることから、本課題遂行における効率的な照射下絶縁特性データの蓄積とメカニズムの議論に大きく寄与できると考えられる。 イオンビーム照射により電気伝導度が増加した被覆試料については、原子間力顕微鏡(AFM)に取り付けたConductive-AFMアタッチメントを使用し、微視的電流経路の直接観察を試みる。被覆試料の初期材料状態、及び、イオンビーム照射に伴う材料状態の変化については、走査型電子顕微鏡(SEM)、X線回折装置(XRD)、X線光電子分光分析装置(XPS)、軟X線分光分析装置(SXES)等を用いて分析し、電気伝導度変化との相関を調べる。 以上の被覆試料製作、核融合炉模擬環境下における電気伝導度の評価、材料状態の分析に加え、高エネルギー粒子が衝突した際の材料原子の挙動計算等を実施し、過酷な核融合炉環境における金属原子含有電気絶縁被覆の絶縁特性変化のメカニズム研究を進展させるとともに、より長寿命化が望める材料の選択につなげる。
|