研究課題/領域番号 |
23K22482
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補助金の研究課題番号 |
22H01211 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分14030:プラズマ応用科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北野 勝久 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (20379118)
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研究分担者 |
座古 保 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 教授 (50399440)
白木 賢太郎 筑波大学, 数理物質系, 教授 (90334797)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2023年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2022年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
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キーワード | プラズマ誘起液中化学反応場 / プラズマ医療 / 殺菌 / 生体高分子反応 / プラズマバイオ / プラズマ殺菌 / 大気圧プラズマ / 過硝酸 |
研究開始時の研究の概要 |
プラズマが生体へ与える影響を評価するためには、多くのカスケード反応が関与する生物化学反応系への適用であるため一筋縄にいかないが、相関関係だけではなく因果関係を明らかにし、作用因子ならび機序を解明し、科学研究としてのステージへ進まなければならない。生体への影響を、プラズマ誘起液中化学反応場として捉え、液相中に供給される化学種そのものとそれらが生体分子に与える化学反応に関する網羅的な研究を進めることにより、特定のマクロな現象でトリガーとなるキー化学反応を同定し、それにより生成された化学種による生体への影響を検討する学術基盤を構築する事が本研究の目的である。
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研究実績の概要 |
これまで行ってきたプラズマ殺菌の研究において格段に高い殺菌力が得られる低pH法における殺菌作用では、細胞に形態的な変化が生じずに、代謝に係わる生理活性が残存したまま、増殖活性のみが失われてるという特徴があった。このような特異的な殺菌は、UV殺菌においてDNAダメージが生じるケースと類似しているが、プラズマ殺菌の場合はDNAのダメージが皆無であった。そのため、細胞内のタンパク質の化学修飾による生化学的な不活化が重要であると考え、ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)によるタンパク質の分析を試みた。染色方法にもよるのだがSDS-PAGEでは、多くの細菌からタンパク質を回収する必要があり、殺菌対象の菌液の高濃度化ならび大量化を行うこととした。過去に行ってきた殺菌条件と同じような反応速度で殺菌が可能な条件を見つけることから実験を進めた。 一般的な殺菌実験では生菌数を数桁低下させる場合が多いが、細胞へのダメージの評価はリニアでの評価になるために、生菌数の低下、つまり殺菌効果をたかだか1桁程度に押さえつつ、その時に生じる生体分子の化学修飾を評価する必要がある。スカベンジャーの設定など実験手技の難度が高くなるが、いくつかの工夫を行うことにより、実験が可能となった。 殺菌後の細菌のタンパク質を一次元電気泳動の分析により特定のバンド構造のシフトを示唆する結果が得られていたため、さらに二次元電気泳動により詳細な分離を行う事にした。その結果、一次元電気泳動では複数のタンパク質が含んだままのバンドがシフトしていただけの情報が得られていたのに対して、二次元電気泳動によりそのバンド中で真に化学修飾を受けているタンパク質のスポットを同定することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生菌数が数桁落ちるような殺菌力をもたらす条件下では、プラズマから生成される様々な化学種が細胞へ与える影響のうち、副次的な作用のものが目立つようになり、真に重要な化学修飾を評価することが出来ない。そのために、CFUアッセイにより殺菌効果がリニアで評価が出来る程度である、1桁以内の対数減少にする条件において、細胞に含まれる生体分子の化学修飾を評価しなければならない。 一次元電気泳動による分析から、二次元電気泳動による分析へ手法を進化させたことにより、複数のタンパク質を含んだままの化学修飾の変化の評価から、個別のタンパク質の分析へと発展させた。その結果、いくつかの特定のタンパク質のスポットが影響を受けている事が判明した。二次元電気泳動によるタンパク質の分離では、ほぼ1種類のタンパク質まで分離が行えているので、真に化学修飾が行われたタンパク質の同定が可能になった。 CFUアッセイにより生菌数が1桁程度しか減少していない実験条件下で、二次元電気泳動による評価を行ったが、複数のスポットがシフトならび消失が見られたため、これらのスポットに含まれるタンパク質の化学修飾が、殺菌に寄与する化学修飾であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
二次元電気泳動法により、殺菌処理後に化学修飾を受けたタンパク質が限定されてきた。これらのうち真に殺菌に寄与するタンパク質を同定するのが今後の方針である。それら化学修飾を受けたタンパク質の全てが殺菌に寄与しているわけではなく、単一もしくは複数の修飾が重要であるはずである。 本研究において、”殺菌”とは単純に菌が物理的に破壊されてる現象ではなく、菌が増殖しなくなる現象の事を指している。これまでの研究成果から、細胞内の代謝は残存したまま、増殖活性が失われているというマクロな現象は見られていたものの、二次元電気泳動の結果から、そのような結果をもたらすミクロな化学修飾が明らかになりつつある。 ただし、二次元電気泳動により明らかになった全ての化学修飾がそのような現象に寄与しているわけではなく、サイドエフェクトとなる化学修飾を排除して、”殺菌”に寄与している化学修飾を同定する必要がある。
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