研究課題/領域番号 |
23K22487
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補助金の研究課題番号 |
22H01216 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
福嶋 健二 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (60456754)
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研究分担者 |
服部 恒一 大阪大学, 核物理研究センター, 協同研究員 (10730252)
岡 隆史 東京大学, 物性研究所, 教授 (50421847)
山本 直希 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (80735358)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
2023年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | カイラリティ / クォーク / 渦度 / 相対論的流体力学 / カイラル運動論 / 強磁場 / カイラル量子異常 / トポロジー / 回転 / 磁場 / グルーオン / 相転移 / 渦 |
研究開始時の研究の概要 |
質量を無視できるフェルミ粒子、たとえば質量より大きな運動量、エネルギーをもって運動する電子などは、スピンと運動量が平行か反平行にならなければならない。原子核衝突実験では衝突エネルギースケールより遥かに軽いクォーク自由度が含まれ、クォークのスピンと運動量が強く相関している。そのため強磁場や高速回転でスピンが偏極すると運動方向も制限される。本課題はこの特殊な相関の物理、特に不安定性について研究する。
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研究実績の概要 |
強い相互作用をするグルーオン・クォーク物質に、渦と回転と磁場の効果を取り入れた場合の相転移を、理論的に研究した。 特に回転は近年、相対論的重イオン衝突実験でグローバルなスピン偏極が見つかったことにより、広く興味を集めている。格子QCDシミュレーションでは、回転を入れると符号問題によって数値計算が遂行できないため、回転の角速度を純虚数にしたシミュレーションが行われている。このような系で非閉込め相転移温度の変化を調べたところ、虚数回転効果によって閉込めが抑制されるという結果が報告されている。これが本当ならば、実数の角速度へと解析接続をすると、実回転効果は閉込めを促進することにある。しかし、理論的には回転効果は有限密度効果と似た性質を持つため、直感的に自然な予想では、実数の角速度が大きくなれば閉込めは弱まり、系はより非閉込め相に近づくものと考えられる。 この混迷した結果に対して、クリアな理解へと繋がる道筋をつけるため、今年度は高温状態で摂動計算を実施することにより、閉込めポテンシャルの角速度依存性を導いた。これはモデルではなく、第一原理理論であるQCDに根差した結果であり、温度が十分に高ければ信頼できるものである。この計算により、驚くべきことに、どんなに高温であっても純虚数角速度がある閾値を超えると、閉込め相が実現していることを発見した。通常、閉込めは非摂動的な現象だと思われているが、理論的に取り扱いの容易な摂動計算で閉込め相の諸性質を研究できるのは画期的なことであり、カラー閉込め研究の新しい方向性を提示するものである。 この研究により、純虚数角速度を実数角速度へと解析接続する手続きの正当性も明らかにすることができた。すなわち、境界効果を取り入れないと無限個の特異点が現れるため、ナイーヴな解析接続は正当化されない。このような知見を解析的な表式から議論できるのは極めて有用である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ポスドク研究員を雇用して研究を遂行する機動力として活躍しつつ本人にもキャリアアップを促す予定であったが、内定のオファーを出した候補者がちょうど別職に就職してしまったため、急に辞退されてしまった。その後も、面接を行い、やはり内定のオファーを出した外国人研究者もプライベートな事情により、急に辞退することになった。さらに面接を行ってポスドク研究員候補を探したものの、研究遂行能力の観点からオファーを出すには至らず、公募等に時間をかけて研究員の候補者を探したにもかかわらず、不幸な偶然が重なって、研究員の雇用には至らなかった。そのため研究の進捗状況は当初予定よりもやや遅れていると言わざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
回転についてはかなり理解が進んだので、今後は流体方程式に渦度を入れた理論形式、すなわちスピン流体方程式の理論を整備することが急務である。また回転と磁場が共存する系に対する理論的な扱いについても研究中であり、かなり理解が進んでいる。 今後はスピン流体方程式の安定性を調べ、実用に耐える数値計算スキームに乗せるための研究を実施していく。それと同時に、カイラル運動学の方程式に対する数値計算の手法を工夫し、マクスウェル方程式と連立することによって、例えばカイラルプラズマ不安定性を正しくシミュレーションできるような枠組みを完成させる。 このような理論的なフレームワークが実用的に機能するようになったところで、物性実験可能な物質系に対して理論形式を適用し、観測量について理論予言を提案していく。
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