研究課題/領域番号 |
23K22504
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補助金の研究課題番号 |
22H01233 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
有賀 智子 (古川) 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (00802208)
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研究分担者 |
六條 宏紀 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 助教 (00725814)
中野 敏行 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (50345849)
音野 瑛俊 九州大学, 理学研究院, 准教授 (20648034)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2022年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | ニュートリノ / LHC / FASER / エマルション検出器 / 高エネルギーニュートリノ / ニュートリノ反応 / 電子ニュートリノ / ミューニュートリノ / FASERnu / タウニュートリノ / 飛跡検出器 |
研究開始時の研究の概要 |
CERNにてLHC陽子衝突点の超前方にニュートリノ検出器(FASERnu)を設置し、3世代のニュートリノの反応を検出する。2022-2025年の実験により10000事象を超えるニュートリノ反応を蓄積して解析し、未踏のエネルギー領域での3世代ニュートリノの荷電カレント反応断面積の測定、高エネルギーニュートリノ荷電カレント反応におけるレプトン普遍性の検証を目指す。また、特に高エネルギーの電子ニュートリノ反応頻度を測定することにより未知の超前方領域のチャーム生成について初めてのデータを提供する。それに向けた照射実験およびデータ解析を牽引する。
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研究実績の概要 |
CERNにある世界最大のハドロン衝突型加速器LHCを用いて、LHC陽子・陽子衝突に起因する高エネルギーニュートリノ測定を実施している。陽子・陽子衝突点からビーム軸上約480m離れた地下トンネル内のFASER実験地点にてエマルションフィルムを用いたニュートリノ検出器により数100GeVから数TeVのニュートリノ反応を各フレーバーについて測定することが可能である。
2022年3月に物理ランを開始し、2022年に3回・2023年に2回のエマルション検出器へのビーム照射を実施した。エマルションフィルムの製造を含む準備は日本で行なってCERNへ輸送し、CERNのファシリティにてエマルションモジュールを組み立ててインストールし、照射後に取り出して現像を実施した。その後に日本へ輸送し、高速読み出し装置を用いてフィルム全面の読み出しを行なって、共有したデータの解析を牽引してきた。
これまでの実験での反応断面積の測定は、電子ニュートリノで300GeVまで、ミューニュートリノでは400GeVまでと6TeVを超えるエネルギー領域に限られていた。本研究では、未測定の高エネルギー領域における最初の反応断面積測定に向けた解析範囲として2022年のエマルションモジュールの一部を設定し、電子ニュートリノおよびミューニュートリノの荷電カレント反応を探索した。背景事象となるハドロン反応とニュートリノの中性カレント反応を除くため、反応点から200 GeV以上の電子・ミューオン候補が出ていることや角度の条件を課した。加速器実験としては最高エネルギーの電子ニュートリノ荷電カレント反応候補4例およびミューニュートリノ荷電カレント反応候補8例の観測に成功した。これらの事象を用いて、500GeVから数TeVのエネルギー領域において世界初となる反応断面積測定を実施した。研究代表者は責任著者として論文を執筆し投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年3月から物理ランを開始し、2022年に3回・2023年に2回のエマルションモジュールの照射を実施した。それぞれのモジュールに対して以下のサイクルを遂行し、2022年に約39/fb、2023年に約32/fbのデータを蓄積した。エマルションフィルムの製造・性能の管理は研究分担者らとともに日本で行なった。フィルムを製造・カット後に高湿度環境に置くことにより長期的なフィルムの性能を向上できることを確認し(リセット処理と呼ぶ)、2022年は名古屋大学の恒温恒湿槽・2023年からは九州大学の恒温恒湿槽を用いてリセット処理を行なった。その後CERNへ輸送してCERNのエマルションファシリティにてエマルションモジュールを組み立て後、地下トンネルにインストールしてビーム照射を行なった。数か月後の入れ換えで取り出したエマルションフィルムは現像して日本へ輸送した。エマルションフィルム表面の銀取りや厚さ調整を行なってから、研究分担者らとともに高速読み出し装置を用いてフィルム全面の読み出しを行ない、九州大学をはじめとする共同研究機関で共有してデータの解析を進めてきた。
2023年後半に加速器の問題によりビームが止まって2023年3回目のエマルション照射がキャンセルになり、製造してあるエマルションフィルムを使用するまでの期間が延びたため、九州大学にて遮蔽ブロックを用いた保管場所を構築した。
500GeVから数TeVのエネルギー領域における初の反応断面積測定に向けた解析範囲として2022年に設置したエマルションモジュールの一部を設定し、電子ニュートリノおよびミューニュートリノの荷電カレント反応を探索した。加速器実験としては最高エネルギーの電子ニュートリノ反応、ミューニュートリノ反応の観測に成功し、未開拓のエネルギー領域における反応断面積の初測定を実施して研究代表者が責任著者として論文にまとめた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に、FASERnu検出器を用いて電子ニュートリノ反応およびミューニュートリノ反応の検出に成功し、TeVエネルギー領域におけるニュートリノ反応断面積の初測定を実現した。本年度は、その論文を発表し、2022-2023年データを用いた高エネルギーニュートリノ反応の探索・解析をさらに進めて10倍の統計での結果をまとめる予定である。ミューニュートリノ反応についてはFASERスペクトロメータへのインターフェース検出器を用いてミューオンの電荷測定を実施し、正/反ミューニュートリノを識別した測定も行う。
並行して、2025年のCERNでの照射実験の実施する。2025年は加速器部分の変更により2024年までと比べて背景事象となるミューオンの量が増えているため、各エマルションモジュールの照射期間をこれまでより短縮する。この問題は2026年には改善すると考えられているため、照射期間の短縮をカバーするためにモジュール数を増やすことはしないことにした。研究分担者らとエマルションフィルムを製造・カットした後に九州大学へ輸送し、暗室ファシリティでの恒温恒湿器を用いたリセット処理により性能の改善と調湿を行なってからCERNへ輸送する。CERNにてエマルションモジュールの組み立て・インストール・照射・取り出し・現像を実施する。これらを繰り返して、3回の照射を行なう。現像後のエマルションフィルムは日本へ輸送し、研究分担者らとともに読み出し・再構成を進めていく。
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