研究課題/領域番号 |
23K22515
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補助金の研究課題番号 |
22H01244 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
宮地 義之 山形大学, 理学部, 教授 (50334511)
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研究分担者 |
後藤 雄二 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 先任研究員 (00360545)
澤田 真也 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (70311123)
柴田 利明 日本大学, 理工学部, 研究員 (80251601)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2025年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | 核子構造 / スピン / 反クォーク / 軌道角運動量 / 量子色力学 / 陽子スピン / ドレル・ヤン過程 / 偏極核子標的 / 軌道回転 |
研究開始時の研究の概要 |
米国フェルミ国立加速器研究所にて、120GeV陽子ビームと偏極陽子標的による散乱実験(SpinQuest実験)を実施する。ビーム陽子中のクォークと標的陽子中の反クォークの対消滅後にミュー粒子が対生成されるドレル・ヤン反応について、その陽子偏極依存性を測定する。ミュー粒子検出は先行研究(SeaQuest実験)で実績のある検出器を利用する。ドレル・ヤン反応スピン非対称度から、偏極陽子中の反クォーク軌道回転を明らかにし、陽子スピンの起源に迫る。本研究期間内に偏極標的・検出器の整備、2年に渡るビーム実験の実現、収集データから目的のスピン非対称度を決定する。その成果を学術雑誌や関連学会で発表する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、米国フェルミ国立加速器研究所(Fermilab)において、高強度陽子ビーム環境下での横偏極陽子標的によるドレル・ヤン反応測定(SpinQuest実験)を実現するものである。延べ二年にわたる測定期間を通じて偏極標的と検出器の定常的運転を行い、陽子内の反クォーク軌道回転に直接関係する反応断面積の標的スピン非対称度を測定精度±0.04で決定する。 新型コロナ感染症対策によりSpinQuest実験開始に大きな遅延が生じていたものの、2022年度には陽子ビーム供給がはじまり、本格的なデータ収集に取り組む予定であった。しかし、Fermilabでの新たな安全管理規定への適応等のため供給は2023年度開始へと延長された。SpinQuest実験として安全管理規定対応をすすめることと並行し、ビーム供給開始とともに速やかに物理データ収集を開始できるよう検出器・偏極標的の準備をすすめることとなった。 ドレル・ヤン反応は、陽子ビームと標的陽子との衝突により生成されるμ粒子対を検出器群により捉える。検出器は先行研究(課題番号18H03694)にて準備はほぼ完了しており、ビーム実験開始にむけ宇宙線等を利用した測定による検出器較正を継続した。 偏極標的システムは、超伝導磁石・冷却器・NMR測定器・マイクロ波機器等により構成される。長期間にわたる定常運転に必要な機器の調達をすすめ、Fermilabでの試験およびシステム構築をすすめた。電磁石本体および標的物質が設置される標的セルを1Kに冷却する事に成功した。 年度後半では山形大学から修士学生がFermilabに出張し(2人月)、標的システム試験をすすめた。真空度・ヘリウム液量等、定常運転に必要となる測定器に関する較正等をおこなった。出張後には、SpinQuest実験共同研究者との連携のもと山形大学にて監視ツールの開発を継続した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題提案時では、新型コロナ感染症対策による様々な影響もおさまり、2022年度中旬にはFermilabからの陽子ビーム供給が開始されていることが想定されていた。検出器群は先行実験ものを再利用するため大きな遅延なく準備がすすんでいた。偏極陽子標的システムは、ヘリウム液化装置を含め新たに構築するものであり技術的・手続的な理由による遅延が生じていたものの、2022年度には対応が完了し準備が整うと想定されていた。たしかに、本年度には液化システムを完成し、液化試験および超伝導電磁石・ヘリウム冷却器への液体ヘリウム供給に成功し、電磁石励磁や動的核偏極に必要となる極低温(1K)を達成している。 SpinQuest実験の実施許可以降に生じた新型コロナ感染症対策等による遅延の間に、Fermilabにおいて安全基準および安全管理に関する規則等が見直され、想定されていなかった様々な手続きへの対応が求められることになった。そのため、ビーム供給についてもあらたに見直され、およそ1年の遅延があらたに発生している。
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今後の研究の推進方策 |
ビーム供給は2023年度へと延期された反面、特に偏極標的システムの準備にかける時間を確保する事ができた。延べ二年にわたる測定期間にわたり、偏極標的システムを安定して維持するためには、実験開始前における十分な試験期間を必要とする。標的セルを1Kに冷却する事に成功した後、およそ3ヶ月に渡る試験運転を行うことができた。その間に得られた様々な測定データ、発生した課題、判明した問題等は定常運転を実現するために不可欠な情報・経験である。ビーム供給開始後、速やかにドレル・ヤン反応スピン非対称度測定を開始できるよう、この情報・経験を活かし対応をすすめる。
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