研究課題/領域番号 |
23K22518
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補助金の研究課題番号 |
22H01247 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
川村 静児 名古屋大学, 理学研究科, 名誉教授 (40301725)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2024年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2022年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
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キーワード | 原始重力波 / DECIGO / 量子ロッキング / 標準量子限界 / 光バネ |
研究開始時の研究の概要 |
宇宙重力波望遠鏡DECIGOは、宇宙誕生直後のインフレーションの期間に生成された原始重力波を検出し、宇宙誕生の謎を解き明かすことが主目的の日本の将来計画である。このため、我々は、光バネを利用した量子ロッキング技術により、量子雑音を低減し、不確定性原理で規定される標準量子限界を打破する手法を新たに考案した。本研究では、この手法の原理実証実験を行い、その有効性を確認し、DECIGOに適用する際の問題点を洗い出す。具体的には、連結された光共振器に模擬量子雑音を注入し、ホモダイン検波を行い平方完成を利用したデータ解析を行うことにより、模擬輻射圧雑音を低減し、模擬標準量子限界を打破する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、光バネ量子ロッキングをDECIGOに組み込む際の理論的な解析を行い、どのような手法で量子雑音が最適化できるかを検討し、そして、本手法の原理実証実験を行い、その有効性を確認し、問題点を洗い出し、輻射圧雑音除去の現実的な限界を見極めることである。 本年度は、理論面においては、光バネ量子ロッキングにおけるホモダイン検波システムに伴う真空場の混入の効果について詳しい検討を行った。その結果、若干の感度の悪化は認められるものの、依然として光バネ量子ロッキングが高い有効性をもつことが確認された。この結果を論文として発表した。また、DECIGOにおける光共振器の意義について改めて詳しい検討を行い、マイケルソン型と比べて感度の点で有意に上回ることが確認された。この結果も論文として発表した。 実験面においては、模擬量子雑音を用いて、量子ロッキングの原理実証実験(ステップ1b)を行い、これを成功させた。具体的には、光の振幅の量子雑音は古典雑音を電気光学素子を用いてレーザー光に印加し、また、輻射圧雑音は固定鏡を古典的に振動させることにより模擬した。そしてホモダイン検波によりある特定の周波数で、光の振幅の模擬量子雑音と模擬輻射圧雑音がキャンセルし、雑音低減が実現できることを実証した。 また、次のステップである原理実証実験(ステップ2)の準備を行った。ステップ2は、懸架鏡を用いたホモダイン検波の実験である。具体的には、電気光学素子により古典的に振幅の模擬量子雑音を光に加え、それによって揺さぶられる懸架鏡の反射光に生じる模擬輻射圧雑音を、ホモダイン検波により振幅の模擬量子雑音とある周波数でキャンセルさせ、ホモダイン検波の有用性を確認する実験である。これの準備として、各種雑音を評価し、鏡懸架システムや制御システムを設計し、一部の製作を行った。また、真空槽の準備も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論面においては、光バネ量子ロッキングにおけるホモダイン検波システムに伴う真空場の混入がある場合においても、光バネ量子ロッキングが高い有効性をもつことを確認し、論文として発表することができた。また、DECIGOにおいて光共振器を用いることで、マイケルソン型干渉計と比べて高感度が達成できることを改めて確認し、論文として発表することができた。 実験面においては、模擬量子雑音を用いて、ホモダイン検波によりある特定の周波数で、光の振幅の模擬量子雑音と模擬輻射圧雑音がキャンセルし、雑音低減が実現できることを実証することに成功した。また、次のステップの準備として、干渉計の出力信号に存在する各種雑音の大きさを評価し、また、実験で用いられる超小型鏡懸架システムやデジタル制御システムを設計し、一部のハードウェアの製作を行った。また、実験で使用する真空槽の調達と準備も行った。 したがって、全体としておおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、ステップ1bの実験を完了させ、ホモダイン検波の有用性を示すことができた。また、ステップ2の準備についても順調に進めることができた。 そこで、次年度は、これらの成果と準備を受けて、原理実証実験(ステップ2)を行う。この実験においては、光の振幅の量子雑音に関しては古典雑音を電気光学素子を用いてレーザー光に印加する。これはステップ1bと同様である。しかし、輻射圧雑音に関しては、ステップ1bと違って、懸架された鏡を上記の光の振幅揺らぎが輻射圧の変化を通して直接鏡を揺さぶることを利用して行う。また、ステップ1bでは考慮しなかったショットノイズに関しても、古典雑音を電気光学素子を用いてレーザー光の位相に印加することにより模擬する。そして、ホモダイン検波により、ある特定の周波数で、光の振幅の模擬量子雑音と模擬輻射圧雑音がキャンセルし、模擬標準量子限界を打破できることを実証する。これにより、実際の量子雑音の低減のメカニズムと同じ形での原理実証実験が可能となる。 具体的には、まず鏡懸架システムのプロトタイプを製作し、ローカルダンピングや雑音加算などの機能を、前年度に製作したデジタル制御システムを用いて行い、その振る舞いを評価する。その結果、必要ならば設計を改善し、3台の鏡懸架システムを製作する。次に、真空槽を設置し、その中に鏡懸架システム2台を含む光学系を設置し、まずは1台の光共振器を組み、アラインメントを取り、真空に引いた後、共振状態へのロックを行う。これがうまくいけば、次に鏡懸架システムをもう1台追加し、連結した光共振器を組み、アラインメントを取る。真空に引いた後、2台の共振器を同時に共振させる。各雑音源から各エラー信号までの伝達関数を測定し、それらのデータを用いて、平方完成を利用して模擬量子雑音の最適化を行い、最終的に、模擬標準量子限界を打破できることを実証する。
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