研究課題/領域番号 |
23K22520
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補助金の研究課題番号 |
22H01249 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
宮本 祐樹 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 研究准教授 (00559586)
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研究分担者 |
榎本 勝成 富山大学, 学術研究部理学系, 准教授 (50452090)
久間 晋 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (50600045)
岩國 加奈 電気通信大学, レーザー新世代研究センター, 准教授 (80837047)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
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キーワード | 極低温分子 / パリティ対称性の破れ / カイラル分子 |
研究開始時の研究の概要 |
我々の究極的な目的は、冷却された気相カイラル分子の内部エネルギーを測定することによりパリティ対称性の破れを測定し、素粒子物理の標準模型を超えた新物理を探索することにあります。現在、極低温に冷却された気体分子は次世代の量子的実験ツールとして注目されている系であり、その多彩な自由度を用いて新物理探索に挑戦する多くの実験が提案されています。本研究では1 Kに冷却した分子を1 kHzを超える精度で分光する装置を開発することにより、その基盤を確立します。
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研究実績の概要 |
本研究の究極的な目的は、冷却された気相カイラル分子を用いてパリティの破れを測定し、素粒子物理の標準模型を超えた新物理を探索することである。現在、冷却分子系は次世代の実験ツールとして注目されており、分子の多彩な自由度を新物理探索に用いる様々な実験が提案されている。本研究ではその基盤となるバッファーガス冷却分子源と高精度・高感度分光システムを発展的に結合させる。 2022年度はバッファーガス冷却した分子の可視域におけるドップラーフリー分光を行い、1MHzレベルでの高精度分子分光を行うことを目標とした。実際にバッファーガス冷却された一水酸化カルシウム分子のドップラーフリー分光に成功し、遷移周波数の精度10MHz以下での分光を行うことができた。またさらなる高精度化に向けての光周波数コム開発も分担者とともに進めており、光周波数コム自体はすでにほぼ完成させることができた。本計画では最終的にカイラル分子の分光を目指すため、より大きな分子の冷却も重要である(カイラル分子は最低でも4原子分子である)。そこで、これまであまり研究されてこなかった大型分子のバッファーガス冷却を用いた高精度分光にも着手した。結果として世界でもあまり例のない質量数500を超えるフタロシアニン分子の高精度分光に成功し、冷却カイラル分子の高精度分光に向け大きく進展した。 その他にも、バッファーガス冷却法の理解を進めるために、セル内でのドップラー効果の時間変化を測定し、セル内に複雑な流れが存在しうること、それが時間的に変化することを見出した。これらのことから、セル内の分子を分光する場合、ドップラー効果がその精度を制限する大きな要因になりうることをがわかった。以上のようなこれまでの成果をまとめ、4報の論文を発表することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バッファーガス冷却された一酸化カルシウムの分光では10 MHz以下の精度が得られ、目標とした1 MHzには少々及ばないものの、満足のいく成果を得ることができた。またこれらの実験を通してどうすればさらなる高精度化が可能であるかも見えてきたので、大きな進展と言える。さらにこれまでに例の少ない大型分子の高精度分光に成功したことはたいへん重要であり、世界的に見ても稀有な装置になりつつある。以上のことからおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は2022年度の成果をさらに進め、小型分子においては1 MHzを切る精度での分光、また大型分子に関しては、今回分光に成功したフタロシアニン以外の大型分子の冷却および分光を行い、カイラル分子を含めたバッファーガス冷却された大型分子の高精度分光手法を確立したい。精度に関しては光周波数コムを取り入れた分光システムを構築し、世界の第一線に並びたい。さらに2022年度後半には冷却分子をバッファーガスセルから取り出し、高精度分光することに成功している。本研究が最終的に目指す精度領域においては分子間の衝突はなるべく減らす必要があるため、このようにセルの外に取り出して高真空条件下で分光することは必須である。しかしセルから分子を取り出したことで分子密度が下がってしまい、現状では充分な信号雑音比が得られていない。2023年度ではこの問題に対処するために分光システムおよび分子冷却法の両面から改善を行いたい。分光システムとしてはキャビティを使った増感法や電気光学変調器を用いた変調分光を行うことを検討している。分子冷却法としては生成した分子を電場などを用いて収束する手法や、分子生成条件の最適化などを行っていく。各分担者の研究拠点においても、引き続き冷却分子技術やその分光技術の開発を進め、本研究が目標とする冷却分子分光システムの実現に向け、多面的な研究を進める。
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