研究課題
基盤研究(B)
宇宙での元素合成過程において速い中性子捕獲過程(r過程)は、鉄より重い重元素の約半分を生成したと考えられていが、その起源天体と全貌は未だ未解明である。金や白金などの重元素を含むr過程第3ピークは、中性子魔法数N = 126をもつ中性子過剰核の閉殻構造に起因して生成されたと考えられているが、その周辺核の原子核特性値は依然として未測定であり、N = 126の中性子過剰核が閉殻構造を持つか否かさえ定かではない。本研究は、新たに開発したHeガスセルと多重反射型飛行時間測定装置を用いて高精度質量直接測定を行い、その系統性からr過程第3ピーク滞留核近傍まで閉殻構造が保持されているのかどうかを検証する。
宇宙での元素合成過程において速い中性子捕獲過程(r過程)は、鉄より重い重元素の約半分を生成したと考えられている。しかしながら、r過程の起源天体とその全貌は未だ未解明であり、物理学で解くべき1つの大きな課題である。金や白金などの重元素を含むr過程第3ピークは、中性子魔法数N = 126をもつ中性子過剰核の閉殻構造に起因して生成されたと考えられているが、その周辺核の原子核特性値(質量、半減期等)は依然として未測定のままであり、そもそもN = 126の中性子過剰核が閉殻構造を持つか否かさえ定かではない。本申請課題は、N = 126中性子過剰核において、新たに開発したRFカーペット型Heガスセルと多重反射型飛行時間測定装置(MRTOF)を用いて高精度質量直接測定を行い二中性子分離エネルギーを決定、その系統性からr過程第3ピーク滞留核近傍まで閉殻構造が保持されているのかどうかを検証することを目的としている。本年度は、Heガスセル内に新たに238-Cm核分裂線源を導入し、オフラインで短寿命核(RI)の引き出し効率を測定可能なように改良を行った。また、差動排気系の真空系を増強し冷却可能温度を180Kから73Kまで引き下げると共にガス導入系にあらたにクライオ冷却型トラップを設置しRIの汚染分子との化学反応の低減に努め、結果として平均して約14%程度の良好な引き出し効率を得ることができた。さらに第1回目の該当領域の質量測定実験を理研RIBFで行った。ウラニウムビームとBe標的により目的とするRI生成を試みたが、その収量が想定より2桁程度平均して低いことが判明した。来年度は1次ビームを鉛ビームに変更して実験を行うことと、並行して理研RIBF内のKEK同位体分離器(KISS)にHeガスセルを新たに導入し生成反応を多核子移行反応に変更して該当領域の質量測定実験を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、Heガスセルの健全性を新たに導入した核分裂線源でオンライン実験前に確認できるようになった。また施した改良がうまくいき良好な引き出し効率が得られつつある。第1回目の理研RIBFでのN=126領域の実験を行うことができ、ウランビームBe標的系では生成収量が少ないことが判明した。今後の実験を指針をえることができたので本年はおおむね順調に推移している。
本実験に向けて、理化学研究所仁科加速器科学研究センターRIビームファクトリー(RIBF)の超伝導RIビーム生成装置下流に設置してあるRFカーペット型ヘリウムガスキャッチャー(RFGC)と多重反射型飛行時間測定装置(MRTOF)のシステム効率をさらに向上させる。ヘリウムガス圧力を増強し停止効率を増加させるため、RFカーペットやDC電圧の最適化を行う。また、ガスセル温度のさらなる引き下げ、ガス流量の最適化を行い、汚染分子によるRIの分子形成を抑制し引き出し効率のさらなる改善を行う。また、昨年度に行ったN = 126質量測定試験の結果を受けて、N = 126周辺核の生成のための1次ビームをUビームから鉛ビームに変更し実験を行うための評価や最適化をシミュレーションし仁科センタープログラム委員会に実験提案を行うと共に本実験に向けての準備を行う予定である。同時並行でN = 126周辺核の生成反応としてXe + Pt多重核子移行反応にも挑戦する。多重核子移行反応から生成されるN = 126周辺核RIの引き出しのため、RIBFで稼働しているKEK 同位体分離器(KISS)に新しいRFカーペット型ヘリウムガスセルを設置して、N = 126周辺核の質量測定を試みる。こちらは本年度中にオンライン試験を行う予定である。
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Physical Review Letters
巻: 130 号: 1 ページ: 1-6
10.1103/physrevlett.130.012501
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A: Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment
巻: 1047 ページ: 167824-167824
10.1016/j.nima.2022.167824