研究課題
基盤研究(B)
本研究は、『宇宙にどのような有機物がどこでどのように生まれ、我々の身近な有機物とどのように関連するか』という問いに答えるべく、終焉期の恒星が生み出す有機物の性質を理解し、太陽系の始原的有機物との関連を探ることを、解決すべき目標と設定する。本研究では、老朽化した模擬星間有機物の塵を合成する実験装置を新たに改良製作し、合成した有機物の分析実験を行うともに、赤外線時間軸天文学観測への展開を図る。
本研究は、有機物の塵の合成実験に基づき、宇宙空間に存在する有機物の塵の化学的性質を特定することを狙う研究である。特に赤外線天文観測によって様々な天体環境に観測される未同定赤外バンドの担い手である有機物の性質を調べ、化学的な組成や構造を特定することが本研究の主な目的である。そうした有機物の塵の研究は、赤外線天文観測と実験室宇宙物理学の枠組みで進展してきた。後者の研究は、実験室において、観測される赤外線スペクトルの特徴を再現する有機物を合成する手法で行われるが、そのために用いている1970年代に制作されたマイクロ波電源プラズマ発生装置が老朽化しているため、本研究費を用いて各種分析機能を追加した上で新たにマイクロ波電源プラズマ発生装置の製作を進めている。2022年度はマイクロ波電源装置の電源部および真空システムの構築を行った。2023年度は、1970年代に制作されたマイクロ波電源プラズマ発生装置の老朽化のため、本研究費を用いて新たに製作するマイクロ波電源プラズマ発生装置の製作を進め、特にプラズマ反応室部分の石英管フランジ接合部分の製作を進めた。また、マイクロ波電源プラズマ発生装置を用いて作成した有機物の塵を、核融合科学研究所のLHDプラズマの程エネルギー部分に晒し、物性変化を調べる実験をLHD Cycle 24(2022年度)およびCycle 25(2024年度)の枠組みで進め、特に楕円銀河や低輝度活動銀河核を有する銀河において観測される未同定赤外バンドの担い手である有機物の赤外スペクトルとの比較を行い、その成因を探る研究を実施した。
2: おおむね順調に進展している
申請者の所属先の異動に伴い、実験室の移動や整備に数ヶ月から半年程度の余分な時間と労力を要したが、装置の組み上げやそれを用いた実験についてはおおよそ計画通りに進められていると判断する。
2024年度については、本研究費を用いて新たに政策を進めている、各種分析機能を追加した上マイクロ波電源プラズマ発生装置を完成させ、まずはメタンガスを用いて従来とおおよそ同じ条件のもとでfilmy QCCの合成実験を進め、得られた物質が、旧装置を用いて作ったfilmy QCCと同じ物質であることを確認する。旧実験装置は、2023年度日本天文学会により天文遺産に認定されており、新規装置の正常な稼働が確認できたタイミングで、旧実験装置を電気通信大学コミュニケーションミュージアムの展示室に戻すことを計画している。新規装置の正常な稼働を確認した上で、本研究費で導入した可視高分散分光によるプラズマプロセスモニターを用いたプラズマの構成核種の分析や赤外線その場観察に向けたマルチバンド赤外線分析装置の光学設計等を進める。また、合成された有機物の塵の分析について、昇温脱離法分析などの方法により、内在する化学結合の特定を図る分析研究を実施し、さらにそれらと隕石物質などから抽出される有機物の性質との比較を行う。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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