研究課題/領域番号 |
23K22551
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補助金の研究課題番号 |
22H01280 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17010:宇宙惑星科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉岡 和夫 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 講師 (70637131)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
2022年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
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キーワード | 超小型探査機 / 共鳴散乱 / ライマンアルファ / ガスフィルタ / NEGポンプ / コールドトラップ / 水素ガス / 電子ビーム / フィルタ / レジスティブアノード / MCP / 紫外線撮像 |
研究開始時の研究の概要 |
Ly-α較正用光源と極端紫外分光器を組み合わせて超小型光学ガスフィルタの較正試験を行う.波長分解能約0.5nmの分光器であるが,回折格子を回転させて集光位置の変化を観測し,実際の輝線幅を導出する.なお,昨年度試作したガスフィルタでは水素ライマンアルファに約10%の吸収がみられており,本年度はガス温度などのパラメタ最適化をすすめる.また,今年度は水素および重水素ガスフィルタを量産する体制を構築し、吸光分離のための装置を完全に分離した重水素ガスフィルタを開発する.これらの成果を関連する国際学会で発表する.
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研究実績の概要 |
前年度の研究成果を受けて,ライマンアルファを用いた光学フィルタの較正試験装置を確立し,実際に吸収率測定実験を行った.具体的には,光源を安定して動作させるための電源装置を導入し,最適な電流値や磁気調整機構のパラメタを最適化した.また,共試体(ガス吸収セルフィルタ)を制作するために,水素および重水素ガスの供給ラインをそれぞれ確立し,水素ガスを封入したガラスセルフィルタを製造した.この時,ガラスセルに水素(もしくは重水素)以外のガスが混入することを防ぐために,長時間のベーキングに加えてコールドトラップとチタン・ジルコニウム合金を使ったゲッターポンプ(NEGポンプ)を増設した.コールドトラップに関しては,配管の一部を液体窒素に浸せる構造にし,真空引きの再に水を含む活性ガスの吸着剤として活用した.一方,希ガスなどを吸着できるNEGポンプを活性化するためには,金属を700℃程度に加熱する必要があるため,これらに必要なスライダックや電熱線を組み合わせた活性化システムを確立した.また,これらの実験は時間経過を丁寧に観察する必要があるため,データ取得の自動化のためのソフトウェアおよび監視システムを構築した.さらに制作したガスフィルタのフィラメントの耐久試験を実施し,100時間程度の運用には十分に耐性があることを確認した.なお,フィラメントの損耗はフィルタ内部に残存している酸素原子との反応によりタングステンが酸化することが主な原因である(酸化タングステンの昇華温度が1000K以下と低いため).すなわち,今回の結果はガス供給ラインにおけるベーキングやコールドトラップ,NEGポンプの実装が奏功したことを意味する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初の予定通り,電子ビーム励起原理を応用した水素ガス(ライマンアルファ)の発光システムの安定化と,ガスフィルタ制作のための重水素供給ラインの高純度化に成功した.また,複数のガスセルを実際に制作し,フィラメントの耐久試験およびライマンアルファ輝線の吸収特性の評価試験を実施し,想定された性能を持つことを確認できた.一方でガス封入作業の手順については最適化の余地を残している.具体的にはガラスの溶着時にフィラメント導入端子であるコバール線を誤って加熱してしまい,ガラスにクラックが入ってしまった事例があった.次年度はこのような事例を防ぐべき保護装置を試作し,より安定してガスフィルタを制作するシステムを構築する.
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今後の研究の推進方策 |
R05年度の研究成果を受けて,次年度はより安定した光学フィルタ制作システムを確立し,実際の探査機に搭載するフライト品に供せる品質のフィルタを製造する.また,これまでに構築してきたライマンアルファ光源を用いて,ガスフィルタの吸収特性を評価する.なお,昨年度までに,フィラメント単一温度(1600K)における吸収率を測定することはできているので,次年度以降は温度パラメタを変化させることでガスフィルタの吸収幅の定量評価に繋げる.さらに,数年におよぶミッション期間での経年劣化の有無を評価するために,複数製作するガスフィルタの一部を特定の温度環境下に保管し,半年に1回程度の頻度で吸収特性の変化を評価する(研究機関終了後も断続的に経年劣化を追う).なお,経年劣化としてはフィラメントの損耗に加えてガラス壁面からの水素(重水素)ガスの漏洩の可能性が考えられる.水素ガスがガラスを透過する時定数は環境温度に依存するため(高温ほど時定数が短い),経年変化観察用のフィルタは低温環境と高温(+50℃)環境に分けて保管する. 今年度は最終年度に当たるため,これまでの研究成果を理学観測装置の観点と宇宙探査ミッションへの搭載実現性の観点の両面から論文化し,それぞれ国際学会に発表する.
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