研究課題/領域番号 |
23K22552
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補助金の研究課題番号 |
22H01281 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17010:宇宙惑星科学関連
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
副島 浩一 新潟大学, 自然科学系, 教授 (50283007)
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研究分担者 |
足立 純一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 講師 (10322629)
中井 陽一 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 専任研究員 (30260194)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
14,430千円 (直接経費: 11,100千円、間接経費: 3,330千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 9,880千円 (直接経費: 7,600千円、間接経費: 2,280千円)
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キーワード | 光学異性体過剰 / 円二色性 / アイスダスト表面反応 / エナンチオ過剰度 / 超高感度光学純度測定 |
研究開始時の研究の概要 |
ホモキラリティーの起源に実験的に迫るためには、光学異性体過剰発生の初期段階で光学異性体過剰率を高感度、高精度で測定することが決定的に重要となる。そこで、擬似氷星間塵への円偏光入射により生成する微量のキラル分子から放出される光電子の角度分布に現れる円二色性から、その光学異性体過剰率を高感度・高精度で決定する従来にはなかった全く新しい原理に基づく分析法の開発を進める。この分析法は真空内で加熱蒸発なしに光学異性体過剰率をその場観測できるという優れた特徴も合わせ持っている。この分析法の実現により、これまで感度不足で手が出せなかった星間空間における初期の光学異性体過剰発生メカニズム解明への道が開く。
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研究実績の概要 |
角度分解実験をおこなうことを念頭に、地磁気の遮蔽に特に配慮して設計したメイン真空チェンバーの作成が完了し、付帯実験機器と共にKEK放射光実験施設(PF)に搬入した。PFへの装置一式の搬入前におこなう予定であった仮組み立てと真空性能評価実験は、資源不足、資源価格高騰の影響で実験装置の製作期間が長引いたため大学で実施することができなかった。予備的な照射実験で、分子吸着面をメッシュ形状とすることを決定したが、メッシュの透過率については、今年度も試行錯誤が続いた。現在は線径0.03mmの#30タングステン金メッキメッシュで実験を進めているが、焦点位置での放射光の径が100μ程度であるため、放射光をメッシュ線に当てるには工夫が必要となる。そこで、分子吸着面固定台座をサファイアガラスで絶縁しメッシュ面からのドレン電流を測定できるようにした。光学異性体分子のカンファ―を対象にした気相実験で、CDの強度によりエネンチオ過剰度が決定できることはすでに実験的に証明済みであるが、それが極低温表面吸着分子に対しても可能か否かの確認を完成した装置でおこなった。動作、性能評価確認と同時進行で実験を進めているため、予備実験の域を出ないが、吸着分子に対してもCDの測定に成功した。ただし、エネルギースペクトルの分解能が気相実験の際に得られた分解能よりかなり低く、明確な電子状態の分離ができなかった。種々の可能性を検討した結果、その一番の要因がアライメント不足であると結論づけられたので、アライメントを正確に決定するための穴径1mmΦのアパーチャー付き直線導入を装置の上下流に設置した。さらに、新たに立ち上げた装置でも、単バンチ部分の放射光を切り出すX線パルスセレクターなしでも電子飛行時間測定実験が可能であることが確かめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
真空装置製作の段階で、ステンレス鋼の流通不足の影響を受け装置の納品が大幅に遅れた。同時期に電気機器部品の流通不足も生じたため、実験準備状況がさらに悪化した。その遅れを取り戻すため努力しているものの、現時点では完全に遅れを取り戻す状態には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度確認された問題点の解決を図る。まず、時間スペクトルの取得効率が非常に悪い対策として、光電子信号スタート、放射光信号ストップのタイミングチャートに変更することを計画している。そのために、時間遅延モジュールやゲート生成モジュールなどの電気信号処理装置の調達を含めた信号処理系の構築を進める。また、記憶容量の無駄につながってしまう、時間ゼロ付近の桁違いに大きなスペクトルピークの除去も必要となる。これは試料由来でないゼロeV付近の低速電子によって発生することが確認できており、飛行管入口に設置されている銅メッシュに数ボルトの負電圧を印加することで低速電子を追返して解決を図る。まずは気相試料を対象に、円偏光ビームラインBL28Aにおいて、時間データ取得方法の改良の成果と精密アライメント決定法の成果を実験的に確認する予定である。我々の測定原理で肝要となるのは、分子の幾何学構造を強く反映した空間分布を持つ分子軌道の光電離過程を捉えることであるので、装置改良の成果の確認後、広範囲な電子エネルギースペクトルが容易に取得可能な電子飛行時間型(TOF)分析器の特徴を生かし、まず昨年度予備的に極低温表面吸着分子のCDAD測定をおこなったRカンファーを対象に、光電子スペクトルの再測定をおこなう。広い運動エネルギー領域で取得した光電子スペクトルを精査することで、CDAD測定に適した分子軌道(分子構造を反映している電子状態)を明らかにする。また、水由来の信号が光学異性体過剰度を決定する際におよぼす影響を実験的に確認する。すなわち、Rカンファー単体試料での測定と、Rカンファーと水の混合試料でのCDAD測定の結果の比較をおこない、そこから、水の影響が小さいエネルギー領域を実験的に明確にする。
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