研究課題/領域番号 |
23K22564
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補助金の研究課題番号 |
22H01293 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17020:大気水圏科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
東塚 知己 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (40376538)
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研究分担者 |
升本 順夫 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (60222436)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2023年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2022年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
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キーワード | 大気海洋相互作用 / 気候変動 / 気候変化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、このエルニーニョ現象の際に東太平洋の海面水温が平年よりも高くなるメカニズムを特に鉛直方向の乱流混合過程に着目して明らかにすることを目的とする。具体的には、鉛直乱流混合過程も含めて、太平洋熱帯域の変動を現実的に再現できる領域海洋モデルを構築した上で、シミュレーションを行い、完全に閉じる海洋上層の熱収支解析を実施することにより、メカニズムを調べる。
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研究実績の概要 |
エルニーニョ/南方振動は,日本を含む世界各地に異常気象を引き起こすだけでなく,海水温や湧昇に伴う栄養塩の供給の変動を通して広い海域の生態系にも大きな影響を与えることが知られているため,その理解と予測は,気候変動研究の中でも特に重要な課題である。今年度の研究では,エルニーニョ現象に伴う正の海面水温偏差の熱力学的なメカニズムを,特に,これまであまり注目されてこなかった鉛直乱流混合過程に焦点を当てて,明らかにした。具体的には,精緻な鉛直乱流混合のパラメタリゼーションが導入されていて,鉛直乱流混合過程も含めて,太平洋熱帯域の変動を現実的に再現できる領域海洋モデルを構築した上でシミュレーションを行い,混合層厚の時空間変動を考慮した完全に閉じる熱収支解析を行った。その結果,先行研究で重要性が指摘されていた鉛直移流よりも,鉛直混合過程の方が,エルニーニョ現象に伴う正の海面水温偏差の形成に関して支配的に寄与していることが初めて定量的に示された。一方,海面熱フラックス偏差がエルニーニョ現象の発達に対する負のフィードバックとして働くことも明らかになった。さらに,鉛直混合項の正偏差のメカニズムを詳しく調べた。その結果,正の温度躍層深偏差に伴い,混合層の底での鉛直水温勾配が弱まるため,鉛直混合による冷却効率が低下することが明らかになった。また,正の混合層厚偏差に伴い,鉛直混合による冷却に対する感度が低下することも,正の海面水温偏差の形成に大きく寄与していることが明らかになった。一方,貿易風の弱化に伴い,鉛直流速シアが弱化するが,混合層の底における鉛直密度成層も弱化しているため,鉛直拡散係数には有意な偏差が見られないことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定した通り、太平洋熱帯域を対象とした領域海洋モデルによる現実的な過去再現実験を行い、混合層熱収支解析を中心に、エルニーニョ現象に伴う正の海面水温偏差の熱力学的なメカニズムの詳細を鉛直混合過程に焦点を当てながら明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
エルニーニョ現象には、東太平洋赤道域に正の海面水温偏差が生じる古典的なエルニーニョ現象と中部太平洋赤道域に正の海面水温偏差が生じるエルニーニョもどき現象が存在する。この両者は、全球の気候への影響が大きく異なることが知られているため、両者の違いを理解することも重要な課題である。本年度の研究で、古典的なエルニーニョ現象に伴う正の海面水温偏差のメカニズムを明らかにすることに成功したので、次年度以降に、エルニーニョもどき現象に伴う正の海面水温偏差のメカニズムを明らかにするとともに、なぜ2種類のエルニーニョ現象が存在するのかを明らかにしていきたいと考えている。
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