研究課題/領域番号 |
23K22571
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補助金の研究課題番号 |
22H01300 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17020:大気水圏科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
千手 智晴 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (60335982)
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研究分担者 |
張 勁 富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (20301822)
磯田 豊 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (10193393)
堀川 恵司 富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (40467858)
筒井 英人 長崎大学, 水産学部, 特任研究員 (00774390)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
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キーワード | 深海長谷 / 物質輸送 / 富山湾 / 日本海 / 係留観測 |
研究開始時の研究の概要 |
深海谷は陸域と深海をダイレクトにつなぐ重要な物質輸送のルートであるが、深海谷内部の流動やその役割については不明な点が多い。これまでの研究から深海谷内部には谷軸に対して非対称な流れが存在すると考えられ、海谷内部の堆積物や底生生物の分布にも影響を与えていると推測される。本研究では富山深海長谷をモデル海域として、深海谷内部に非対称流が生じる原因とその変動要因、非対称流が海水特性や堆積物の分布にどのような影響を与えているのか、そこに生息する生物の分布や生態系はどのようなものかを現場観測と数値モデル解析から明らかにする。
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研究実績の概要 |
長崎大学の練習船長崎丸を用いて、2022年5月に富山湾内の深海長谷を横断する複数の断面において、CTDによる密度場の観測と採水、LADCPを用いた流動場の観測、マルチプルコアによる採泥等を実施した。LADCPによる流動場の観測では、谷軸を境に東側斜面上では湾から流出する方向の、西側斜面上では湾内に流入する方向の流れが海底から500m以上の厚みで分布していることが示され、海谷内部の流況の詳細を明らかにできた。また6ヶ月間に及ぶ海底谷内部での直接測流の結果からも、海谷軸を中心とする非対称流の存在が確認された。さらにこの非対称な流れには、海底に向かうにつれて振幅が増大する約20日周期の変動流が重なっていることがわかった。この周期変動は、海谷斜面に捕捉された長周期波動によるものと考えられ、この波動にともなう海谷を横断する方向の流れが非対称な一般流を励起していることが示唆された。
深海長谷の東西両斜面上の堆積物には差異が認められ、東側斜面上の堆積物は西側斜面のものと比べて陸起源物質の占める割合が高かった。これは、流れの状況から推測される物質分布と整合的である。また堆積物中のクロムの分布と流れの状況から、クロム含有量の多い姫川に起源をもつ堆積物の輸送経路を推定した。同様に堆積物中の鉛分布より鉛含有量の多い神通川起源の堆積物輸送についても検討したが、有意な地域差が認められなかったことから、観測海域への神通川起源の堆積物の寄与は小さいことがわかった。この他に、セジメントトラップによる深海長谷内部への沈降粒子の採取にも成功し、現在、その量や化学組成の時間変動について分析中である。
成層の弱い日本海深層水中を伝播する内部波(Gyroscopic波)のエネルギー伝播について数値シミュレーションを行った。その結果、条件によっては海底付近にエネルギーが集中し、強い混合が生じうることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
船舶を用いた現場観測では、予定していた観測をすべて行うことができ、特にLADCPを用いた断面観測では深海長谷内部の詳細な流動分布を調べることができた。一方、採泥(堆積物のサンプリング)では機器の不調もあり、十分なサンプルが得られなかったものの、堆積物中の重金属成分の分布から堆積物の輸送ルートをある程度特定できた。係留観測も期間が短縮されたものの、すべての流速計のデータの回収に成功し、海谷内の流動の詳細が明らかになりつつある。セジメントトラップによる沈降粒子のサンプルの回収にも成功し、現在、分析を進めている。モデル実験についても、観測データに基づく基礎的な条件設定を終え、近慣性周期の内部波の深海長谷内での挙動について実験を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度も5月に船舶を用いた現場観測を実施予定である。陸域の影響がより明確に現れることが期待される富山湾奥での調査を行い、陸域からの物質輸送過程についてより詳細な情報を得る予定である。前年度に回収したセジメントトラップ試料の解析を進め、沈降粒子の形態や成分の時間変動を調べる。また採泥試料中の底生生物についても解析を進めており、深海長谷内の生物多様性について検討する。流動観測については、谷軸に沿った方向の流動の変動から、海底地形に捕捉された波動と深海長谷内部の非対称流の関係について、観測データの解析とモデル実験の両面から研究を進める。
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