研究課題/領域番号 |
23K22588
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補助金の研究課題番号 |
22H01317 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
坂巻 竜也 東北大学, 理学研究科, 助教 (30630769)
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研究分担者 |
中島 陽一 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (50700209)
大村 訓史 広島工業大学, 工学部, 准教授 (90729352)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 10,270千円 (直接経費: 7,900千円、間接経費: 2,370千円)
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キーワード | マグマ / 溶融 / 弾性特性 / 高圧 / 高温 |
研究開始時の研究の概要 |
46億年前の形成初期の地球はマグマオーシャンで覆われていた。現在の成層構造の基礎の形成に繋がる劇的な物質進化過程の解明にはマグマの挙動を支配するマグマ物性の理解が不可欠である。現在においても、島弧火山やホットスポットの起源となるマントル浅部、更には核-マントル境界付近に至るまで、地球内部に広くマグマの分布が示唆されており、多様性のある地球内部構造をもたらしている。そこで本研究では「高温高圧発生技術と放射光X線を組み合わせた実験的物性測定」と「第一原理分子動力学法に基づく計算機シミュレーション」の2つのアプローチから、地球の全マントル条件を再現した高圧下でのマグマの密度・音速の決定に挑戦する。
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研究実績の概要 |
地球内部構造は、初期地球でのマグマオーシャンの固化に伴う分化過程を経て、現在の成層構造へと発展した。このような大規模な物質分化イベントは、地球史を通じて他にない。したがって、地球内部の化学進化および内部構造の形成過程を理解する上で、全マントルの圧力・温度条件を再現し、溶融状態の地球内部物質の挙動を明らかにすることは極めて重要である。また、地震波低速度異常域の観測から現在の地球内部にもマグマが広く分布していることが示唆されている。観測事実を読み解き、モデル化し、より正確な内部構造の描像を目指すためにもマグマの弾性特性を理解することが重要である。 本研究の目的は、地球内部環境下におけるマグマの挙動を真に理解することであり、そのために高温高圧下でのマグマの弾性特性の決定や溶融現象の解明に注力する。 マグマの弾性特性を理解するために、単純系であるナトリウムアルミノケイ酸塩メルト・ガラス(Na3AlSi3O9組成)に対し、SPring-8のBL04B1において放射光X線イメージングと超音波法を組み合わせることで音速測定に成功した。研究成果は国際学会で発表するとともに、Physics of the Earth and Planetary Interiorsにおいて論文として発表した(Takahashi, Sakamaki et al., 2024)。 地球内部の溶融現象には水の役割が重要であるため、含水鉱物であるFeOOHの高圧下での電子状態をSPring-8のBL11XUでメスバウアー分光測定を行うことで解明した。得られた研究成果は国際学会で発表するとともに、Journal of the Physical Society of Japan において論文として発表した(Ikeda, Sakamaki et al., 2023)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在の地球内部構造の描像や初期地球における化学進化を解明するためには、地球内部構成物質の挙動を定量的に理解する必要がある。本研究では地球深部環境を再現した高温高圧実験に基づいた様々な研究を遂行した。特に、1)ナトリウムアルミノケイ酸塩メルト・ガラスの弾性波速度測定、2)含水鉱物FeOOHの高圧下での挙動に対して積極的に実験に取り組み、研究成果を挙げており、順調に進展している。 1)ナトリウムアルミノケイ酸塩メルト・ガラスの弾性波速度測定: Na3AlSi3O9組成メルトとガラスに対し、SPring-8のBL04B1において放射光X線イメージングと超音波法を組み合わせることで音速測定を試みた。ケイ酸塩ガラスの重合度に応じて、異なる圧力依存性を示すことを解明した。加えて、Na3AlSi3O9組成メルトの音速は圧力2 GPaの条件下で極小値を示すことがわかった。地球内部におけるマグマの挙動は、マグマの組成(重合度)に支配されていることを実験的に明らかにすることができた。研究成果は国際学会で発表するとともに、Physics of the Earth and Planetary Interiorsにおいて論文として発表した(Takahashi, Sakamaki et al., 2024)。 2)含水鉱物FeOOHの高圧下での挙動: 高圧下でのFeOOHのメスバウアー分光測定をSPring-8のBL11XUで行い、電子状態の圧力依存性を調べた。圧力8 GPa付近において先行研究では報告されたことがなかった磁気スピンの回転に対応する転移を発見した。得られた研究成果は国際学会で発表するとともに、Journal of the Physical Society of Japan において論文として発表した(Ikeda, Sakamaki et al., 2023)。
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今後の研究の推進方策 |
マルチアンビルプレスを用いた高温高圧実験と超音波法を組み合わせることで、マグマの弾性波速度測定を行い、圧力依存性・組成依存性を解明する。加えて、X線回折法を用いた構造解析を行い、マグマの構造物性に関する新たな知見獲得を目指す。 ダイヤモンドアンビルセルとX線非弾性散乱を用いることで、最下部マントルまでの圧力条件下におけるケイ酸塩ガラスの音速測定を行う。加えて、メスバウアー分光測定を行い、高圧下におけるケイ酸塩ガラス中の鉄の挙動の解明を目指す。 マントル最下部に相当する圧力130万気圧までマグマの弾性特性の圧力変化と局所構造および電子構造との相関を解明する。高圧実験結果を参照することで、計算方法、特にポテンシャルエネルギーに補正を加え、実験ではカバーできない細やかな圧力・温度ステップ、組成範囲で計算を行う。本研究におけるシミュレーションは、東京大学物性研のスーパーコンピュータおよび九州大学情報基盤研究開発センターの研究用計算機システムを使用して行う。
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