研究課題/領域番号 |
23K22589
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補助金の研究課題番号 |
22H01318 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
西村 太志 東北大学, 理学研究科, 教授 (40222187)
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研究分担者 |
中道 治久 京都大学, 防災研究所, 教授 (00420373)
村田 健史 国立研究開発法人情報通信研究機構, 総合テストベッド研究開発推進センター, 研究統括 (20274342)
中原 恒 東北大学, 理学研究科, 准教授 (20302078)
長妻 努 国立研究開発法人情報通信研究機構, 量子ICT協創センター, 上席研究員 (50359014)
江本 賢太郎 九州大学, 理学研究院, 准教授 (80707597)
田口 貴美子 東北大学, 理学研究科, 助教 (80965335)
小園 誠史 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 火山防災研究部門, 主任研究員 (40506747)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2022年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
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キーワード | 噴火ダイナミクス / 地震観測 / 映像観測 / DAS / 地震観測地震観測 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、桜島の爆発的噴火の発生機構を調べるために、最新の震動計測技術である光ファイバーケーブルとDAS(分散型音響計測システム)と地震計アレイの観測・データ解析を実施する。地震動の解析から爆発的噴火時の火道内震動源の時空間分布を求め、また映像観測データの分析から火口直上の噴煙運動を定量化する。両者の比較から、火道内マグマの上昇速度や噴出率の時間変動を推定し、噴火規模や強度、継続時間等との関係を調べ、火道流モデルなどの理論的な研究と比較することにより、爆発的噴火のダイナミクスを解明する。また、島内に稠密に設置したDAS地震観測データをもとに、マグマ溜まりや火道の探査を試みる。
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研究実績の概要 |
爆発的噴火は、地下のマグマが液相から気相そして固相へと変化し、それらが複雑に相互作用しながら超高速で大気中へ放出される現象である。本研究は、超高密度多点地震観測と高時間分解能の映像観測を行い、爆発的噴火の発生過程を明らかにする。最新の震動計測技術である光ファイバーケーブルとDASと地震計アレーのデータ解析を行い、マグマ溜まり・火道の位置や、爆発的噴火時の火道内震動源の時空間分布を調べる。映像データ分析から噴煙運動を定量化する。両者の比較から、火道内マグマの上昇速度や噴出率の時間変動を推定し、噴火規模や強度、継続時間等との関係を調べ、火道流モデルと比較し爆発的噴火のダイナミクスを解明することを目指す。 2023年度は、2022年から実施している京都大学火山活動研究センターの桜島ハルタ山観測点周辺の上下動地震計アレーのデータ解析、2022年に約1ヶ月間実施したDAS観測のデータ解析を行った。桜島の爆発的噴火に伴う地震動の到来方向の解析を行い、主要動以降も数十秒間、火口方向から地震波が到来していることを明らかにした。また、桜島南方の垂水市に設置した映像IoTシステムによる24時間火口観測データを用いてフレーム差分によるエッジ側の噴煙検出、Optical flowによるサーバでの高精度検出、それぞれのアルゴリズムの性能検証を行った。2022年11月29日に野尻川で発生した土石流に伴い励起された地震動を解析した。 また、DAS観測を再度行った。2023年11月20日から12月21日の約1ヶ月間、2022年と同じく、大隅河川国道事務所桜島砂防出張所においてDAS観測を実施し、野尻川沿いの道路および桜島一周道路沿いの地震動を約1ヶ月間、連続記録した。桜島一周道路沿いについては、昨年S/N比が十分でなかった桜島北川や西側の測定点でも良好な信号を記録することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年に取得したDASデータおよび地震計アレーの地震波記録の解析を行った。爆発的噴火に伴う地震動は、周期数秒から10Hz程度まで記録されているが、噴火発生後の数十秒間は火口方向から地震波が到来していることを明らかにした。2Hz以下は20秒程度、約2 Hz以上の高周波の方は60秒ほど継続する。爆発的噴火現象に伴う火口浅部での力源に時間変化しており、火山弾や火山灰を噴出するプロセスが噴火発生から20秒ほどで変化している可能性があることがわかった。スローネス値は、この間、表面波の伝播速度にほぼ相当する値を示し、火口浅部で地震動が励起されていることがわかった。時間変化をする噴火現象もあるが、事例が少ないためデ、その現象の理解にはさらなるデータが必要である。爆発的噴火に伴う地震の震源決定、空振波の解析に加え、火道流モデルに基づく理論計算を行い、浅部マグマ供給系を議論した。 垂水市に設置した映像IoTシステムによる24時間火口監視に加え、姶良市なぎさ公園あいらに新たに兼用型の映像IoT装置を設置して桜島の火山活動監視に着手すると共に、垂水市のデータを用いてフレーム差分によるエッジ側の噴煙検出、Optical flowによるサーバでの高精度検出の検証を行い、気象庁噴火観測報との整合性を確認すると共に、観測報未掲載の噴煙の検出や、雲の影響を除去した噴煙運動の抽出に成功した。 そのほか、2022年11月29日に野尻川で発生した土石流について、地震波振幅にもとづく震動源位置の推定を行った。また、到達時間差を用いて地震波の到来方向を推定した。その結果、土石流が上流から下流へ伝播する様子を捉えることに成功し、土石流流下の時空間分布を求めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年および2023年のDAS観測および地震計アレー観測により、超高密度多点で爆発的噴火に伴う地震動を記録することができた。また、映像を用いた噴火検知アルゴリズムも開発した。 今後は、鹿児島地方気象台の2022-2023年の爆発・噴火リストに基づき、噴火時の震動源の位置決定を行う。また、地震波の連続記録を系統的に開発することにより、リストにない時刻での火口浅部からの地震波励起現象を検出する。現地収録している高精細高時間分解能の映像データに、開発した噴火検出・噴煙運動分析アルゴリズムを適用し、噴火発生を検知するだけでなく、噴火強度の定量化や噴気活動などの検出を試みる。地震動の結果と比較検討することにより、爆発的噴火現象や噴気現象にともなう地震動の特性を調べるとともに、その力源の位置を推定する。また、気象庁等の定常観測点の地震波データとDASデータをもとに、爆発的噴火の地震波の輻射過程を調べ、その発震機構の解析を進める。以上の結果から、爆発的噴火過程の理解を深める。 2022年のデータに加え、2023年にDASに記録された自然地震を用いて、火口直下を伝播する地震波とそれ以外の地震波の特徴を調べ、火口下に想定されるマグマ溜まりや火道に関する地震学的構造推定を試みる。また、コーダ波を利用して地盤増幅特性を推定し、溶岩流等の火山体浅部構造との比較を行う。
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